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とあるシリーズ

とある男の子の話<バレンタイン>

作者: 桜月空

季節外れのバレンタイン話


ある日の暴走慎吾をお楽しみください

冬の寒さも本格的になった2月、男女共に大切なイベントが来週に控えていた。



先月半ばにクラス最後の席替えが行われた。

見事に斎藤 慎吾は藤原葵の隣にはなれなかったが、彼はある意味強運の持ち主だったかもしれない。


彼らのクラスは男子が一人多いので必然的に1人席が出てきてしまう。

なんと慎吾はその席になったのだ、前の席は悪友の稔でその隣が”藤原 葵”だ。

初詣に賽銭を奮発して願った甲斐があったということだ。

しかも振袖姿の藤原さんとすれ違うことも出来た。


若い男とは一緒ではないことは観察したし、休み明けにも本人に確認済みだ

藤原さんは俺には一切気づいていなかったが・・・、虚しい


まぁ、隣の時は出来なかったが斜め後ろからだと眺め放題 見放題だからな

その分じっっっくり観察が出来たのは言うまでもない

髪の毛を耳にかける仕草やその時に見える小さくて可愛い形の耳たぶは、ぷにぷにしていて親指と人差し指でつまんでみたいと悶える程だった

考え事をしている時は首を傾げて右手を口元に持っていくし、問題を解いている際中は右肘をつき手首をクイッと曲げて何とも可愛い仕草をする

他にも読書する時の姿勢が良かったり、机の中が綺麗だったり、意外と教科書にパラパラ漫画を書いていたりと様々なことがわかった

隣というのもいいが後ろから観察をするのも堪らなくいい

ちょっとだけストーカーの気持ちがわかったような気がする、ほんと気がするだけであって決してストーカーではない




「慎吾・・・、昼休みだぞ。戻って来い」

「はっ」


いつの間にか4時限目が終わっていた、最後の15分で解く問題集はとっくに終わらせていたのでずっと惚けていたようだ。


「ほんと最近多いな、そんなに気になんなら告れよ、うぜーから」

「ば、ばっか、言えるわけねぇだろ。断られたらどうすんだよ!気まずいだろ!」

「俺は一切関係ない、今の状態の方が迷惑だ。この際当たって砕け散ろよ、骨は拾わねぇから」

「せめて拾えよ!後、砕け散ったら意味ねぇだろ!」


この掛け合いも定番化してきていた、葵は友達の席でお弁当を食べているため聞こえていない。

学食へ向かうため慎吾と稔は席を立ったが教室を出る時に重大な会話が聞こえてきた。



「葵、今年のバレンタインは何作るの〜??去年シフォンケーキだったよね〜」

「ん〜、どうしようかなぁ〜。夕凪は何か食べたいものある??」



ガタッッ

慎吾は出入り口に激突した。


「お、おい、慎吾。大丈夫かよ!?」


かなりの勢いでぶつかった為大きい音が響いたが、ぶつかった本人は別の考え事をしていたので外野の声は届いていなかった。

稔はまたかと諦め仕方がないと思い、意識の飛んでいる慎吾を引きずりながら学食へと向かった。



ば、ばれんたいん

バレンタインだと!?すっかり忘れていたが 乙女の祭典、バレンタインが来週に控えているじゃないか!?

ど、どうしようか、海外じゃ男からプレゼントするのが一般的だがここは日本だ

ただのクラスメイトの俺から贈り物をしても引かれるだけだ

かといってもらえる確率はかなり低い、ほぼ貰えないことが確実だがイベントを素通りするのはもったいない

さりげなく言ってみるか、独り者は寂しいからと言えば優しい藤原さんはくれると思う

さっきの会話だと完全に手作りみたいだから一生に一度のチャンスだ

言うか、言えるか、言ってみせる!?どんなに恥ずかしくてももらえる可能性があるのなら言って損はない、・・・はず、だ





「俺はやってみせる!?」

「はいはい、どうぞ。ご勝手に」


かなり大きな声だったので稔は少し距離を置いて他人のように振舞った。

慎吾が覚醒したタイミングが良く食券を買うところだった。


「なんだよ、冷たくねぇ」

「いやいや、他人だよな。俺、変人とは知り合いいねぇから」

「ちぇ、ちょっと大きい声出しただけじゃんかよ」

「ここまで連れてきてもらっといて恩を仇で返すな」

「へいへい」


学食で飯を食っている時も慎吾は稔へ話し続けた。

余りにもウザくて稔は適当に相槌を打っている。


「そういえば、さっきの話だが」

「ん?何の話だ?」

「バレンタインだよ、バレンタイン!!教室出る時、藤原さん達が話していただろ」

「いや、知らねぇし。お前、盗み聞きしてたのかよ」


さすがの稔も冷めた目で慎吾をみた。

最後の一口を食べ終えた慎吾は稔からの視線に気付かず続ける。


「藤原さんってバレンタインは手作りすんだろ。くれるようにお願いしてみようかと思って」

「いやいやいやいや。おま、なに考えてんの?自ら義理チョコくれって言うのかよ」

「そうでもしねぇと、手作り食えねぇだろ!」

「マジ必死すぎて引くわー・・・・」


稔は本気で友達の定義を考えていた。

これからもダチとしてやっていけるか?

否、今の状態が続くのであれば無理だ、負担が多すぎる

こうなった以上粉々になって貰うしかない

藤原にも負担が出てきちまいそうだしな


「とりあえず、この話は終わりだ。もうすぐ予鈴もなるしな」

「もうそんな時間かよ!全然いい作戦を考えられなかった・・・」


慎吾は落ち込み、稔はいい気味だと笑った。

これくらい許されるであろう


「俺からもさりげなく話し振ってやるから元気だせよ、どうなっても知らねぇがな。」

「大丈夫だ、玉砕覚悟で挑んでやる!待ってろよ、藤原さん!!」


慎吾は復活したなのか走って行ってしまった。



とりあえず、今日はもう静かだろう

藤原にも言っておくか、今年も頼むと

ついでに慎吾の分も・・・



慎吾は真実を知らない。

テストの時、稔の世話になっていた葵は友チョコを友人達に渡すついでに稔にも配っていたのだ。

その事実を知った時の慎吾のウザさは考えたくないが、面白いことには変わりない。

可笑し楽しいバレンタインまで後、1週間。


慎吾が暴走しませんように。


ありがとうございました

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― 新着の感想 ―
[良い点] 主人公の、藤原さんに対する恋心がひしひしと伝わってきました。 [一言] これからも、頑張ってください。
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