『其の一』 始まりの場所
「わ……べ……よ」
誰かの声が聞こえる。
「わら……よ」
美しい透き通るような女性の声。
「童よ、そろそろ起きるのだ」
目を覚ますと、そこには一人の女性が俺を覗いていた。
「ようやく起きたか……まったく、そなたはよく眠るなぁ」
「だ……誰だ……それにここは?」
寝起きのような、力が抜けている声で問いかけると、女性は答えた。
「掃除をしていたら鳥居の近くで倒れていたのじゃよ?」
「鳥居……?」
何とか上半身に力をいれ、体を起こすと周りは自然に囲まれている神社だった。
そこは神秘的で空気も澄んでいたが、どこか不気味さもあった。
俺は見覚えも無い場所で目を覚まし、混乱していた。
すると女性は可哀想な目でこちらを見て話した。
「何も覚えてないのか……可哀想な子じゃのぉ……」
「あ……えっと……ここは……!」
質問しようと女性に視線を向けると、頭には狐のような耳が生えており、尻尾もふりふりとしていた。
「ん……?ああ、この耳と尻尾か」
女性は自分の尻尾を自慢するかのように見せつけ、説明した。
「妾はここで祀られている神様じゃ」
「神様……?」
「そうじゃ、まあ人間達から『お狐様』と言われているの」
耳をピクピクさせながら説明する姿は何処か神様らしくなかった。
「それはそうと立てるかの?」
俺は頷き、今度は下半身に力をいれ何とか立てた。
その姿をみて、お狐様と言われている女性は満足していた。
「よし、ここで長話もあれだからな……茶を出してやるから付いてこい」
こうしてお狐様は尻尾をフリフリしながら本殿の方へと向かっていった。
俺は何が起きているか分からなかったが、言われた通りお狐様についていった。




