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【8】安住の地



魔帝城内に入れば、レベッカは城のみんなにも顔を見せると言いご両親と共に魔王城の中心部へと向かった。

俺たちはと言うと。


「俺は魔帝からここに離宮をもらってるからなぁ。眷属たちもそこで共同生活をしているからおいで」

さらっとルオさんがそう告げたのだがそれって結構すごいことでは……!?しかも離宮言うのが。

「何だかこれって……外観は神話に出てきそうな神殿みたい」


「そりゃぁそうだ。ここは魔王城内の神殿。神殿の敷地の中に俺の離宮がある」

本当に神殿だった!?

ルオさんは魔族の中でも特別な存在……いやむしろ神さまだもんな?

「……神殿に住んでいるのは当たり前か」

「そうそう」

神官とおぼしき魔族たちが出迎える中、ルオさんはひらひらと手を振り相変わらずへらへらと笑っている。神さまではあれど何だかフレンドリーで優しくて、温かい。


「……そうかねぇ。俺はそれほど人類の感情は理解していない気がするんだが」

それはどういう……?

「神であるがゆえ……かな」

「でもルオさんは……ルオさんは俺の」

父のようで兄のようでもある。大切な存在だ。


「……ふぅん」

ルオさんはそう言い視線を背けつつも少しだけ嬉しそうに見えた。

たとえルオさんが人類の感情をそれほど理解していないと言ったとしてもルオさんが優しいことには変わらないと思うんだ。

そう思えば頭に優しい手がぽふりとおりてきた。


「おや……ロジーったら。主が照れていらっしゃる」

「照れてねーよ、ルシル」

ルオさんはそう言いつつも照れたような表情を見せる。俺……やっぱりルオさんたちと一緒にいるのが楽しくて、嬉しくて……温かいんだ。


「きゃん」

どうしてかシギが賛同するように鳴いてくれる。

異世界に転生した時は地獄のようだとも思ったが……俺はやっと安住の地を見付けた気がする。


「ふむ……そうだな。そんな眷属のためにも模様替えをしようか」

「へぁっ!?」

離宮の扉の前に立ったルオさんがふとそう告げる。も……模様替え?そのそれって今俺が考えたからってこと?


「おや……いいですねぇ。あ、でも厨房はそのままでお願いします」

「それはもちろん。厨房はお前の領域だかんなぁ」

さすがはパーティーのお料理番。自分の厨房も持ってるんだ。


「あ、でもロジーはいつでも使っていいですよ。料理だけではなくお菓子も作れます」

お菓子はあまり得意ではないのだが。

「あ、ありがとう。ルシルさん」

ルシルさんの気遣いが嬉しい。またルシルさんと料理をして懐かしい前世の味を再現できるだろうか……?


「ふむ、それも楽しみだな」

ルオさんが微笑む。

「まぁリフォームするのは居間、ロジーとシギの部屋だよ」

「きゃん」

シギも楽しみなようだ。一体どんな部屋が出きるのだろうか?

もしや和室とか?


「それがいいのか?俺は前世のお前の部屋をイメージしたのだが」

「……っ!そ、そっちですか!?そ、そうですね。いきなり和室だったらその……驚いてしまいます」

あと布団じゃなくてベッドだったしなぁ。


「ふむ。お前の前世の……しかし魔竜には少し小さいな。ベッドは魔竜と黒魔竜でも過ごしやすいものにしようか」

魔竜と黒魔竜にも過ごしやすい?

「きゃ……?」

シギも興味津々なようである。


「あぁ、あと言い忘れてた。離宮の屋内は土禁にしたから」

手をパンッと叩いたルオさんがふと目を開ける。

「リフォーム完了っと」

え……土禁?もうリフォームが完了したことも驚きなのだがこちらの世界では土足が一般的なのだが。


「ほう……?それは面白そうですが厨房でもですか?」

「スリッパを履けばいい。中に用意しておいた」

「おや……スリッパですか」

やはり土足が一般的なこちらではスリッパはそれほど知られていないのだろうか?


「土禁ねぇ……まぁいいや。俺の部屋はもともとだし」

「え……アルさんの部屋って元々土禁だったの?」

ちょっと意外である。

「まぁね。そっちの方が楽だし」

それには俺も賛成だけど。


そしてルオさんが招くままに離宮に足を踏み入れればそこはまるで旅館のエントランスのようで広々としており靴を着脱するスペースがある。

そしてしっかりとスリッパも用意してあった。


「エントランスは魔竜的に広い方がよくってな、こうした」

とルオさん。確かに竜のしっぽなんかは場所をとるからな……?


スリッパに履き替えればルシルさんも同じように履き替えていた。アルさんとルオさんもだ。


「きゃ?」

「シギはもう少し大きくなったらね」

「きゃん」

こくんと頷くシギ。さすがに子ども用のスリッパは。


「むしろスリッパがあったら危ないかもな」

とルオさん。

「確かに走り回ったら危ない。そう言う面では土禁も良かったかも」


「そうだろう?あと驚くのはここからだ」

そう言ってルオさんが居間の扉を開く。まるで前世の日本にあるような襖だ。そしてその扉の奥にあったのは……。


「こ……こたつ!?」

そう、それはまごうことなく前世のこたつであった。しかも俺たちが全員こたつに入っても余裕が出きるくらいに大きなこたつ。


「レベッカが遊びに来るかもしれないし、シギがおっきくなった時のためにもなぁ」

「あ、ありがとうございます!ルオさん……!」

「何の何の」

そうルオさんが笑う。

しかもこたつのほかにも驚いたものが。

「テレビまである……?」

この世界にもテレビがあったのか?


「あるぞ。この世界に転生や召喚された異世界人たちの叡知の結晶だな。電気や電波ではなく魔法仕様だが」

そっか……異世界人たちがいたからこそ、テレビも作られたんだ。


「あと異世界人はこの土足が当たり前の国でも土禁の屋敷や家を建てることが多いな。土禁の国に住むものもいるが、あくまでもお前の言う『ファンタジー』な世界を好むものも多く、土禁の国に住むのは少数派だ」

土禁の国……たいていどこの異世界にもありそうな和風の国ってことか。

でも敢えてファンタジー風世界を選ぶのは分かるかな。だってせっかくの異世界ファンタジーなんだもの。


「ふぅん……?そう言うもんか。あぁあとこのテレビ、俺がちょちょいと少し改良してな……お前の記憶も映せる」

「ええええぇっ!?」

「お前の潜在記憶の中にある『番組』も映せるぞ」

そうルオさんが告げればテレビ画面に前世で見た懐かしいバラエティー番組が映る。

「俺ですらおぼろけだったのに脳はしっかりと記憶していたのか……」

バラエティー番組は当時の色のまま蘇っていた。


「おや、面白そうですね」

「へぇ……」

興味津々なルシルさんに対し、アルさんも少し興味を持ったようで意外である。


「せっかくだからこたつに入るか」

ルオさんの提案でみんなでこたつに入れば温かい。やはり魔法で温めているのだろうな。


「……きゃんっ!」

そしてシギも俺の膝の上で初こたつに喜んでいる。


それからこの世界の番組も見せてもらった。グルメ番組だ。

そしてルシルさんがお菓子を用意してくれる。何だかおかきのようなスナック菓子である。


「あとこちらも」

ルシルさんがいれてくれたのは……ほうじ茶?


「こたつに合うのではとアルが」

「アルさんが……?」


「……東国の商人からたまに買える。転生者はよく喜ぶだろう?」

「確かに嬉しいです!ありがとうございます!アルさん」

ふたりとも俺が転生者だからと気遣ってくれたんだなぁ。おかきも東国の商人から仕入れたのだろうか?ぽりぽり。うん、美味しい。

「きゃーんっ!」

シギも満足げである。


そしてこたつに入りながらテレビを見、みんなで和気あいあいとした時間。俺の前世のお菓子の知識をルシルさんが興味深そうに聞いてくれる。

ルオさんはこたつに入りながらのんびり。

アルさんはいつの間にか武器の手入れを始めていた。


暫くすると帰還の挨拶を終えてきたレベッカが遊びに来て、初めての土禁空間やこたつに興味津々である。


「すごいわね!それにお茶とお菓子も美味しいわ!」

「おや、お気に召していただけて何よりですよ。今度は……そうですね、カリントウとやらを用意しましょう。昔アルが勧めてくれたのですよ。アル、今度また仕入れを」

「……分かったよ。久々に俺も食べたいし」

アルさんがくすりと笑う。花林糖かぁ……前世では当たり前のようにあったけど、こちらではやはり珍しいのだろうな。

ルシルさんの花林糖の話を興味津々で聞くレベッカとシギ。和やかな時間。優しい空間。

導かれて見付けた居場所は、とても温かい場所だった。この世界はこんなにも……優しい世界だったんだ。その言葉にルオさんが頷いてくれる。


「ここがお前の暮らす場所、帰る場所だよ」

そっか……ここが。


俺の居場所か。


「そうだ!あのね、お父さまが外交官からもらった珍しい食材だからってくれたのよ」

レベッカが魔帝さまからもらってきてくれた珍しい食材とは……。


「これ……何?」

「コンニャクって言ってたわ」

こ……コンニャク……?しかしその見た目は前世のぷるぷるなコンニャクとはかけ離れている。


「それは加工が必要なんだよ」

ふとアルさんが玉のようなコンニャクを手に取る。

「加工しておくから、夕食の準備を進めておいて」

「分かりました、アル。それでロジー、何を作りましょうか?」

えぇと……アルさんが前世でお馴染みのコンニャクに加工してくれるのなら……そうだな。せっかくお味噌があるのだし。


その晩は味噌おでんを作った。そしてレベッカはセレーナさまの勧めでこちらで一緒におでんを食べることができた。魔帝さまは子煩悩で娘離れができていないようだが、セレーナさまはレベッカの友だちとしての経験も大事にするのも大切と説得してくれたようで、味噌おでんに舌鼓をうつかわいいレベッカを見ることができた。


――――しかし、アルさんがコンニャクの加工方法を知っていたなんて。やはり長生きだし冒険者だし……経験の差ってすごい。でも同時に兄のような彼らを頼れるのがとても嬉しいんだよな。


※※※


楽しい晩餐の時を過ごした後、レベッカのことはアルさんが送り届けてくれた。

俺はシギとともに自室を訪れる。


「勉強机や衣装ダンス。タンスの中には着替えとおぼしき服やパジャマが俺とシギの分用意されているみたいだな。本当にありがたいな」

それからベッドは……前世の部屋のものとは比べ物にならないキングサイズなベッド。


「確かにこれなら魔竜のしっぽも邪魔にならないか」

けど……。

「大きい」

「きゃん?」

「……そ、そうだったね」

寝る準備をしなければ。ベッドに上がり寝そべれば。ふかふかで、身体が沈み込むようだ。


「きゃーんきゃーん」

そんなベッドの上で何だかふわふわしながらもシギは楽しそうで……愛おしい。


シギを優しく抱き寄せれば、シギも俺にぴとっとくっついてくる。


ふかふかなベッドの上で、シギを抱き締めながら静かな夜を迎えられるなんて。シギが一緒だからか、ルオさんたちと一緒の家だからか。とても安心するなぁ。ゆっくりと目を閉じれば。


「ゆっくりおやすみ……我が眷属よ」

優しく髪を撫でてくれるルオさんの声を聴きながら、いつの間にかシギとともにすよすよと寝落ちていた。


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