【31】街クエスト
俺たちの旅は順調だ。訪れたのはキッカの街。
「何だか街並みがアートみたいでかわいい街ね」
「うん、レベッカ!」
女の子たちにとっては心をくすぐるものがあるらしく、終始見入っているようだ。
「きゃ、きゃーん?」
「シギ、あれは妖精をモチーフにした像なんだって。シルフィと同じだよ」
「しるふぃ……きゃ!」
理解したようで、物珍しそうに周囲を見てる様子はかわいいなぁ。
「さて、街並み見学もいいけどまずはギルド!それから宿探しだよ」
『はーい!』
すっかり引率の先生のようになったアルさんに元気に返事をする俺たち。
そして早速ギルドでクエスト探しを行うことになった。すると聞こえてくる会話に『ん?』と耳を傾ける。
「これ初級か?しかも低報酬!こんなのやつてられっかよ」
「しかし学生なのですから、初級のクエストをまずは……」
講師の先輩冒険者と揉めているのか?
「中級のクエストを受けさせろよ」
「それはその……っ」
講師も困っているようだ。
「低報酬だからって困っている人がいるなら受けるべきだわ」
「フリージアの言う通りよ!」
「ならあの依頼は俺たちが請け負うとして……」
アルさんが揉めている学生と講師の元へと向かう。
「そんなに中級依頼を受けたいのなら、実力検査をするといい」
アルさんはそう言うと受付カウンターを示す。
「学生相手だ。相手を務めてくれる有志の冒険者も多いはずだ。低報酬でもね」
実力検査って低報酬なのか。それでも学生が怪我をしないように、危険な目に遭わないようにと引き受けてくれるんだろうな。
アルさんの言葉通り何事かと他の冒険者たちも集まってきた。
「あと、先輩冒険者にナメた口効いたらどうなるか、学園長に申請だしてものすっごい厳しい講師つけてやってもいいけど?」
「な、何なんだアンタ!」
「何って……先輩冒険者でしょ」
アルさんはニコッと笑むが迫力がヤバい。下手な態度取ったらどうなるかと言う凄みがあるのだもの。
そして意気がってた学生はと言えば有志の先輩冒険者たちにコテンパンにされて素直に初級のクエストを受ける気になったらしい。
まぁ、低報酬のクエストは俺たちが無事にもらい受けたけど。
「しかし宿がなかなか見付からないね」
「ギルド併設のものは土地の冒険者や学生で既に埋まっていて、宿屋自体少ないようです」
その一方でアルさんとルシルさんが気になる会話をしていた。
「何なら野宿でもいいのよ!慣れたもの!」
フリージアはお姫さまなのに逞しい。夏休みにも野宿したりはあったもんなぁ。
「あら、私もよ!」
そう言えばレベッカもだった。
話していれば早速クエスト先に到着したようだ。
「すまないねぇ。最近どうも腰の調子が」
「いえいえ、お任せを!」
フリージアが元気に答える。
低報酬の訳は年金暮らしのおばあさんのおうちの庭の手入れだった。
最近腰を痛めてしまい庭の手入れが出来ていなかったらしい。
「へぇ、学生向けにねぇ」
いつの間にかルオさんはおばあさんと仲良くお茶してたが。
「そうそう。この時期は新米の学生冒険者さんたちもくるからねぇ。年金暮らしの報酬じゃぁたかが知れてるとは思うけど、少しでも経験になればと思ってねぇ」
そっか……庭の手入れを頼んだのはそう言う心遣いもあったのか。お小遣いとしては僅かかもしれないがこのクエストには実に多くの意味がある。
「街でクエストを請け負えば街の人とも仲良くなれるし、取って置きの情報をもらえたりといいことも多いよ」
「そうね、アル!街の人に感謝されるのって何だか嬉しいもの!」
フリージアが頷く。
「クエストひとつひとつが単位にもなるから私たちとしてもありがたいわ」
「そうだね。冒険者としてもちゃんと活動してるって言う実績が出来るわけか」
レベッカの言葉に同意だ。
だからこそ下積みの時代にこう言うことはきっちり行うべきなのだ。
低報酬でも困ってる人のためにクエストを請け合う冒険者と高報酬のクエストしか受けない冒険者じゃ当然評価も違うもの。
そしてクエストを終えればおばあさんからたくさん感謝されてしまった。こう言うのもなんだかいいよなぁ。ギルドに達成報告をし報酬をもらう。
「金額が大事になるシビアな時もあるけど、こう言うのって金額じゃないわよね」
「ああ、フリージア」
この報酬には報酬額以上のものがつまっている。
「あ、それと宿を見付だぞ~~」
「ルオさん、いつの間に!?」
「さっきの老婦人だよ。宿の宛がないことを相談したら紹介してもらえたんだ」
「わぁ……まさに地元の人しか知らないマル秘情報?」
「そーゆーこと!」
その晩お世話になったのは宿看板は出していないが冒険者の常連客に宿泊所を出している酒場だ。
「ここの2階だね」
「へぇ、まさに穴場だわ!」
夕方になり賑わう飯処の一郭。フリージアも感心している。
老婦人はなかなかに街で顔が利くらしく、酒場の主人は初見の俺たちにも快く宿泊所を提供してくれたのだった。
「ついでに夕飯も食べていっていいって」
アルさんが席に招いてくれる。
「未成年は酒はまだ早いけどね」
「ちゃんとジュースにするよ」
苦笑しつつも、卓には地元の郷土料理と見られる皿が並ぶ。
「地元でしか食べられない料理も大衆酒場のいいところですよね」
料理好きのルシルさんは特に嬉しそうで。俺たちも地元の異世界郷土飯を堪能し無事に床にありつけたのだった。
こう言う人と人との繋がりがふとしたところに繋がっていく。旅って言うのは不思議なものだ。




