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【29】冒険の世界



――――夏休みが終わり、秋が来た。夏に過ごしたクォーティアでは大穴での記憶やグローリアラントとの衝突などさまざまなことがあった。それ以外でもクォーティア公国に身を預けながらさまざまな冒険やクエストをこなしたっけ。


「しかし……シギも大人の姿になったけどまた戻っちゃったな」

成竜の姿になれたのはあの時一回きりだった。

「きゃ!」

まあまだまだかわいい姿を見られて俺は嬉しいんだけど。


「前前世だと成竜になったあとはそのままだった気が……」

「きゃ?おっきい、シギ!きゃーんっ!」

ほんにんはあのカッコいい姿にまたなりたいらしい。

「でも前前世を考えるとまだまだ先だな」

「きゃー……」

「そんながっかりすんなって。俺にとってはどんなシギもかわいがりたいんだ」

特にちびっ子なシギを愛でられるのも今だけ。


「きゃきゃー?ソラ!」

「ああそう言えば」

最近はゾンネの元でいいこにしてるからか、名を与えて正真正銘ロジー・シエルナイトの我が子となったからか。シギもそこまで威嚇はしない。


「成竜、12歳くらいの姿があるなぁ。ソラも成竜の姿になるのはエネルギーが必要みたいだけど……」

気にかかるのは。


「最近、ロジーと同じくらいの姿を取ることが多いな」

それが本来の姿なのか、甘えたがりなのか。


「きゃー、きゃーん!シギ、いちばん!」

「ははっ、もう」

まあ俺に甘えるのは自分が一番ってのは譲れないようただが。


「でも仲良く並んでるとかわいいんだよなぁ」

おやつを待つ時はいいこで待つから。

「きゃ?」

「やっぱり我が子はかわいいってこと」

「きゃーん、ろじー、しゅき!」

「ん、俺も」

シギをなでなでしていれば、不意に脳裏に響く声がする。


【落ち着いたか?ならリビングスペースに来てくれ】

「ルオさんったら」

見てたのか!?まぁタイミングを見計らってくれたのは嬉しいが。


【俺にとってもかわいいんだぞ?】

「いやその……」

そう言われる歳でもないのに~~っ。


【まぁいいから。後期の授業の話だ】

「そっか、うん、今行くよ!」

急いでリビングに向かえば兄たちとレベッカ、そしてフリージアも来ていた。


「ようやっと来たの?シギと戯れてたんでしょ」

フリージアがニッと笑むが、フリージアのお膝の上にはシルフィがいる。


「ひとのこと言えないんじゃないのか?」

苦笑しながら隣に腰を下ろせば早速ちびっ子たちが遊びはじめる。


「バレちゃ仕方がないわね」

「もう、似た者同士なんだから」

レベッカが苦笑する。


「仲が良くて何よりだ」

そう言いつつもルオさんがテーブルに地図を広げている。


「これは?」

「後期の授業さ。1年の後期からは学園で座学や実技を習うも良し、外で冒険者や魔法使いに弟子入りして鍛えるも良し。条件を満たせば単位ももらえる」


「外で冒険者って……」

夏休みなどの長期休暇だけではなく……?


「私も取りたかった授業だわ!」


「そうそ。レベッカもこう言ってることだし、俺らはその保護者も務めるつもり。ロジーも行くだろう?」

「そりゃぁもちろん!」


「そしてせっかくだからフリージアもと呼んだわけだ」

「もちろん私も行く気まんまんよ!最初はお父さまとお母さまも心配してたんだけど、アルとロジーがいるからってOKも出たしね!」

何たってクォーティアの伝説の騎士である。


「きゃ!」

「そうそう、シギもいるもの!」

そう言えば三騎士が揃ってるもんなあ。


「けどそれならレベッカは?魔帝さまは……」

「夏のことがあるもの。クォーティアの三騎士が一緒なんだからってお許しが出たわよ」

やっぱり三騎士の影響力が半端ないな。


「そうそ。だから保護者の許可は全部出てる」

俺の保護者はルオさんだから反対するはずがない。


「あとは監督責任者。一応お前らは学生だからな。冒険者ならばギルド推薦の冒険者がつく」

「それがルオさんたちだね」

「そう言うこと。まあアルはちょっと物議を醸したんだけど」

例の慈善奉仕活動の原因のせいか……。


「けどま、面倒見る生徒がクォーティアの王女さまだから問題ないってことになった」

「クォーティアの騎士だから?」

「そ。クォーティアの公王家も納得してるからな」

そりゃぁ納得するよな。


「一応生徒ひとりにつき先輩冒険者と言う形で登録しますが、まぁ3人のうち誰と特訓するかはその時伸ばしたいものによりけりですね」

とルシルさん。


「剣はアルさん。魔法はルシルさんだね。でもルオさんは?」

申請書類を見れば便宜上はルシルさんとレベッカ、アルさんとフリージア。俺はルオさんとになっている。


「お前はロジー・シエルナイトからの教えがあるからなぁ。まぁ好きにやれや」

何かひとりだけだらだらしてそうな保護者が目蓋の上に浮かぶのだが。


いや確かにあるけど。


「実践てなると難しいんだよ」

何せ800年前の知識である。


「変わったのは……そうだね。昔の魔法が今は禁忌とか古代魔法とか呼ばれて危険視されるくらいかな」

言ってることだいぶ物騒だけど。アルさん。


「ま、もしもの時のために俺がいるんだからなぁ」

朗らかに笑う魔神に何だかこちらまで緊張がほぐれてしまう。あ……そうか。初めての授業に俺も緊張していたのか。


「楽しみね、ロジー。フリージア」

「ああ、レベッカ」

「ええっ!今からでもアルの剣術が楽しみだわ!」


「……早速稽古する気?」

「まあまあ、積極的でいい生徒たちじゃないですか」

講師たちの和やかな笑みも聞こえてくる。


――――冒険、楽しみだなぁ。



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