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【番外編④】太陽竜の隠れ家



――――クォーティア王国山岳地帯には太陽竜ゾンネの隠れ家がある。


アルさんの転移で連れてきてもらったのはファンシーでこじんまりとした家であった。

普段は少女の姿で過ごすゾンネはこのくらいの家だと過ごしやすいのだとか。


「ようこそ、ロジー、アル、そして我が弟よ。友人その他保護者も気兼ねなく入ってくれ。中は割りと広いぞ」

俺とシギ、アルさん、ルシルさん、ルオさん、シルフィとフリージア、レベッカ。みんなで訪れてしまってちょっと心配していたのだが。

ゾンネの言う通り中は広々としたリビングとなっており台所もあるようだ。


「さて、皇天竜は大人しくしている。調教が効いたようだな。今日は私にお菓子を作っておくれ」

そう、ここを訪れた目的のひとつだ。

しかし調教……その言葉がやはり気になるが、深くツッコんではならない気がした。


俺はルシルさん、レベッカとフリージアと共に早速お菓子作りである。アルさんとルオさんはリビングで待っているそうで、ゾンネがちびっ子たちを連れて覗きに来た。

シギが仲良しのシルフィについてゾンネはシギのコレだからとニヤニヤしていた。てかコレって。シルフィにはまだ早い気もするんだがな?うちのシギにも。


「しかしクォーティアの王女か。あの女公王の子孫とだけあってよく似ておるな」

「えと……そうなの?なら嬉しいなあ」

オーブンの前で焼き上がりを見ながらフリージアが微笑む。そして一緒に焼き上がりをチェックしていたレベッカも微笑む。


「ふふっ。しかしそなたはなかなかかわいらしい」

「え?」

ゾンネはフリージアの顎をくいっと掬い上げ妖艶に微笑む。あの……気に入るとは聞いたけど本当に!?


「しかし皇天竜も違う意味でかわいらしい。調教が楽しくて楽しくてな」

「それは何よりだが……」

「ところでロジーよ。皇天竜には名はないのか?」

「そう言えばそうだな。エリオットがまともに名前をつけるわけはないしずっと皇天竜と呼んでいたしなぁ」

それにエリオットの魂は二度と皇天竜の主になることはない。不正に簒奪された主の座。親から子を奪っておいて親にすらなることがなかった。


「俺はつけたことはない」

そんなタイミングもなく皇天竜はエリオットに渡ってしまった。


もしかしたら皇天竜が洗礼の場に現れたのは俺がいたからだとしたら。単にエリオットの魂に縛られてるだけじゃなかったとしたら。そう思うと煮え切らないものがある。


「でもそれを言えば……ゾンネはいつの間に名前を?」

前前世では太陽竜と呼んでいた。名はなく将来主となるものが現れればねだると言っていたのだが。


「我が名はアルがつけたのだ。お揃いだと」

そうか……ソルもゾンネも太陽だから。アルさんがクォーティアの勇者の相棒としてつけたんだ。


「じゃぁ主はアルさん?」

「そうなるな」

アルさんったらいつの間に竜と……いや、俺もシギと契約しているが。


「でもどうして?」

「そうさな……我が知らぬ間に、そなたがいなくなった。我は弟の悲痛な叫びで全てを悟ったのだ」

ゾンネにまで心配をかけてしまったんだな。


「だが我に手を出させなかったのはアルだ。アルが自分自身で全てを終わらせた。多分……ロジーとシギを待つために。自分がどうなろうとも、我をシギのために残したかったのだ」

シギにとっては姉のような存在だったから。


「しかしアルは女神に赦され魔神に拾われた。だから共に待つために名をもらったのだ」

「そうだったんだ」

ふたりで大切な存在を待つために。アルさんがひとりにならずに済んだのはゾンネのお陰でもあるのだ。


「さて、そろそろ焼き上がる頃ですよ」

ルシルさんの言葉にレベッカとフリージアがオーブンから焼き菓子やパイを取り出す。

飾りつけや盛り付けをすれば、リビングでみんなで食べることになった。


「うむ……相変わらずうまいと言うか進化した」

「ルシルさんのお陰かな」

こちらには料理とお菓子作りのプロがいる。クスクスとルシルさんが微笑む。


「さて、ポチにもやるかな」

ゾンネはそう言い首輪とリード装備の皇天竜を連れてきた。本当に……調教されてる。


「そう言えば名は決めたか?」

「……そう、ですね」

アルさんの名付け話を聞いて考えたものがある。


「皇天竜、お前は空……ソラにしよう」

空の騎士(シエルナイト)の子だから、ソラ。800年、ずっとつけてやれなかった名だ。


「……ぼくの、なまえ……」

「親から子へ、生まれた時に一番最初に贈るプレゼントだ。なのに遅くなってごめんな」

我が儘で悪さを繰り返す。しかしもしかしたら皇天竜は……ソラはただ、親を求めていただけだったのかもしれない。


ソラは目に涙をためながらわんわん泣けば、ゾンネがよしよしと慰めていた。

姉のゾンネのお陰か、シギもきゃーんと泣きつつもそこまで威嚇はしない。


――――800年もの間止まっていた時が、ゆっくりと動き出しているのを感じるのだ。




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