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【25】クォーティアの夜



――――夜。

部屋の扉を叩く音がする。

「ルオさんたちかな……?」

「きゃ?」

しかし扉を開ければそこにはシルフィを抱っこしたフリージアとレベッカがいた。


「何かあったのか?」

「何も」

「へ?」

「だから、庭に出ましょ!」

いやいやフリージア!?よく分からないのだが、フリージアに案内された場所にはベンチと広場がある。そこには木剣が2対用意されていた。


「剣の稽古よ」

「へ!?」

いきなりで驚いたのだが、レベッカはシルフィとシギとごく普通にベンチに腰掛けてるし。俺は木剣を持たされていた。


「きれいな星空でしょ」

フリージアが指差した夜空には満天の星空が広がっている。見事だなぁ。


「満天の星空の下での剣の稽古もさまになるじゃない」

「確かに雰囲気はあるね」

まるで星星に見守られているかのような感覚。俺は星空と言うものには詳しくはないがやはり懐かしい。前前世の記憶はないが、感覚……のようなものなのだろうか。


「ロジーはロジー・シエルナイトの転生者なのよね」

「うん。でも剣の腕までは踏襲してないよ。アルさんには習っているけど、多分フリージアの方が上手いよ」

「なら、早速やってみましょ」

ええぇっ!?講義では相手をしてもらったこともあるが……。


「うう……勉強させていただきます」

「そんなに固くならないの。単なる軽い手合わせよ」

「うん、フリージア」

フリージアだからこそ、何と言うか安心して剣を預けられるのかもな。


カンッカンッと音が弾ける。フリージアの剣はまっすぐで優しいけど、その内に揺るがぬ心の強さを持っている。それは公女として、フリージアと言う少女として。何となく伝わってくる。


「こーら、ロジー!私との手合わせの最中に考え事してる!?」

あ、やば……っ。フリージアの剣を受け止めつつもハッとする。


「隙あり!」

フリージアが間合いを詰めてくる。


カンッ


夜空に甲高い音を立てながら、カランと地面に転がったのは……フリージアの木剣だった。


「え……っ」

今、どうなって……?


フリージアも驚いている。


「今完全にもらったと思ったのに……アンタいつの間にそんな技を覚えたのよ」

「ええと……」

どうしてだ?身体がひとりでに動いたような気がしてしまう。俺に何が起きた……?


「身体が覚えていたのか、脳が覚えていたのか」

そう言ってフリージアの木剣を拾い上げたのはアルさんだった。


「アルさん、どうして?」

「どうしてって、末弟たちが夜遊びをしているなら、様子を見に来るのも保護者の役目だろう?」

「よ……夜遊びってほどじゃ……」

「そうよ!剣の稽古よ!」

とフリージア。


「ま、そう言うことにしておこう。星もきれいだからね」

これ、バレてない……?


「まあいいや。あまり遅くまで起きていると城のものたちが心配する。そろそろ戻らないとね」


「うー……でもあと一戦!物足りないのよ。身体動かさないと……そう、寝られないわ!」

1本取られたのが悔しかったのだろうか。


「仕方がない」

アルさんはレベッカたちとベンチに腰掛け、大剣をベンチに立て掛ける。


「じゃぁもう一戦……リベンジよ!」

「う、うんつ!」

そして気合いを入れ直した再戦は……フリージアの勝利で幕を引く。


「これで引き分けね!今度はロジーのさっきのにも勝つんだから!」

「ははは……どうやったのか自分でも分からないんだけどね」

約束通り再戦を終えてアルさんたちの元へと戻れば、レベッカたちがパチパチと拍手をくれる。


「カッコ良かったわよ!ロジーもフリージアも!」

「ありがとう、レベッカ」

「うんうん、最後にいいとこ見せられたし、完璧っ!」


「ん」

「きゃーんっ!」

そして上機嫌なフリージアがシルフィとシギになでなでしてあげていた。フリージアはかわいい上に剣も上手だもんな。


「俺ももっと上手くなりたいな」

「……」

その呟きにアルさんがじっと俺を見ていることに気が付いた。


「その……」

「いや、何だか微笑ましくてね。何でもない」

アルさんは俺の剣の師匠でもある。俺の成長を微笑ましいと思ってくれるのは嬉しいな。


「えっと……俺の前前世のロジー・シエルナイトも大剣使いだったんだよね」

「そうだねぇ」

アルさんはまるで懐かしむように自らの大剣を見る。ベンチの背に立て掛けた大剣は今の俺ではとうてい持ち上げられなさそうだ。


「持ってみる?」

「え、でも重いんじゃぁ……」


「魔人なんだから平気だよ」

そう言うもん?


「ねぇ、魔人って……ロジーって元人間!?」

「えと……うん」

そういやフリージアには言ったことなかったな。


「もう、また私だけおいてけぼりなんだから」

「ごめんって。でも俺もフリージアには色んなことを知ってほしい」

フリージアだからこそ、気兼ねなく話せる気もするのだ。


「うん……分かってるわよ。アンタはそう言う優しいやつだって。魔人でも何でもね」

それはフリージアもなんだが。


「因みに俺もルシルもだね」

とアルさんが補足する。

「えっ、そうだったの!?じゃぁルオは……」


「魔人の強化体みたいなもんだなぁ……ま、簡単に言えば神さま」

「……はい?」

「信じるか信じないかは自由だけど」


「そのっ、それは……」

フリージアはあたふたしながらもレベッカを見る。


「お父さまも頭が上がらないのよ」

「うう……魔帝陛下まで?それに……あの大穴を閉じたって……明らかに人智を超えてるじゃない。けど……」

「フリージア?」

「アンタの伝説だって人智を超えてるんだから今さらよ」

え……?そうなのか?前前世の俺はどんな伝説を残したのだろうか。しかしながらフリージアはルオさんの言った通り適応力がずば抜けている。それは彼女自身の性格や素質も影響しているんだろう。


フリージアはアルさんの大剣を間近で見て目を輝かせている。何だか微笑ましいな。


しかしあまり夜遅くなりすぎてもいけない。俺たちはそれぞれの部屋に戻り、明日に備えてぐっすりと鋭気を養った。



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