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【23】クォーティアの三騎士



まるで中世ヨーロッパの古城。そこで出迎えてくれたのはクォーティアの近衛騎士たちと何だか身分が高そうな男女である。


「お父さまとお母さまよ」

やはりフリージアのご両親。レベッカの言った通り公王夫妻か!

しかしこんな偉い方々に挨拶する礼節なんてどうすればいい?


「お帰りなさい、フリージア」

「ただいま、お母さま。お父さま。それからレベッカ姫と学友たちです」

「ようこそお越しくださいました、レベッカ姫とご学友さまがた」

「こちらこそ滞在を快く受け入れて下さり感謝いたします」

しかしながらさすがはお姫さま。すごい、スムーズに進んでる!


「2人に任せておけば大丈夫だよ。あちらもロジーや俺たちのことは聞いているだろうし」

とルオさん。うう……確かにフリージアの紹介でさくさくことが進んでいく。


「それからロジーとシギ。保護者のルオさん、ルシルさん、アルさん」

ほ……保護者。まぁ間違ってはいないんだけども。


「まぁ……またこちらにお越しくださるとは」

「歓迎いたします」

ん……?また?公王妃さまはアルさんの方を見ながら言っていなかったろうか。


アルさんはアルさんでしれっとしてるけど、公王夫妻の前ですごいし、公王夫妻は特に気にしてなさそうだ。


「ちょっと、やっぱアンタの保護者何者よ」

公王夫妻にどうぞと通され、城の中に分け入りつつフリージアが耳打ちしてくる。


「やっぱりフリージアも公王妃さまの視線に気が付いた?」

「そうね。どう言うこと?」

「いや、そこら辺は俺も詳しくは……聞いてもはぐらかされそうだし」

やはりアルさんとクォーティアはどんな関係なのだろうか?ちょっと気になるな。


「ではフリージア」

「はい!お母さま」


「あちらが来賓用の部屋になるわ。好きに使っていいわよ」

「あの、私も……?」

フリージアは城に私室があるはずだもんな。


「せっかくの学生生活ですもの。フリージアが楽しめる方がきっといいわ」

「あ、ありがとうございます!お母さま!レベッカ、その……2人部屋もあるはずだけど」

「私もフリージアと一緒がいいわ。もちろんシルフィも」

「うん!私も!」

「ん」

女子2人とシルフィは2人部屋を使うらしい。


「ロジーはシギと2人部屋でいいかしら?」

「うん、いいけど……」

ルオさんたちは?


「従者用で」

とアルさん。いや、俺もそっちでいいんだけど。


「せっかくのクォーティアの歓迎なんだから。フリージアの学友が従者用の部屋では公王夫妻が悲しむだろう?」

う……ルオさんの言わんとすることも分かる……のだが。


「アルはいいんですか?」

とルシルさん。

「何のこと?」

やっぱりアルさん……何か隠してない?


※※※


部屋に入ればやはり城。だだっ広いんだが。シギも最近大きくなってきたとはいえベッドはそれ以上に大きい。

そして部屋をキョロキョロと見渡していたシギが指差したのは絵画だ。

「きゃきゃん?」

2本の交差した大剣と黒魔竜とおぼしき竜の旗だった。

「黒魔竜っぽいね」

「きゃーんっ!」

シギも自分のようだと分かったのだろうか、嬉しそう。


「でもあの大剣は……?」

「きゃん」

どうしてかシギガ少し寂しそうな表情を浮かべる。


「きゃっ」

ぎゅっ。

「シギったら。元気にはなったみたい?」

俺にぎゅーっと抱き付けば元気を取り戻したようだ。


部屋に荷物を置いて再び回廊に繰り出せば、フリージアたちもやってきたところだった。早速部屋の絵画のことを聞いてみたところ……。


「あれは公国の英雄である三騎士の剣よ。このクォーティアをいつまでも守ってくれるようにってね」

「まさにクォーティア公国の守護神ってことか」


「けど……三騎士のうちの2人が大剣使いなのね」

言われてみればレベッカの言う通りだ。


「騎士と言えばのイメージ通りの剣ではないし2人とも大剣なんだな」


「確かにそうなのよ」

そうみなで話していれば。

「……そんなところまで踏襲しなくたっていいのに」

アルさんがボソッと呟く声がして振り向けばアルさんたちもやって来たようだ。


「そう言えばアルも大剣使いね」

「……っ」

フリージアの言葉にアルさんがばつの悪そうな表情をしたのは気のせいだろうか。

「ふふふっ、そうですねぇ」

「だなぁ?」

意味深な笑みを浮かべるルシルさんとルオさんをアルさんが何か言いたげに睨むが……ぐっとこらえたようだ。


「城の中には三騎士の像もあるのよ」

「きゃきゃんっ!」

シギが顔を輝かせる。ひょっとして城の中に竜の像が!?


「それは楽しみだな」

「ならせっかくだし案内するわ」

フリージアに続いて歩けば、シギはシルフィと2人で手を繋いでとたとたと歩いてくる。


「きゃきゃーん」

「ん、りゅう!」

「きゃんきゃきゃきゃーん」

時折シギが公国城の竜のモチーフを見付けてシルフィと一緒におしゃべりしている。ちびっ子たちのお散歩って何でこんなにかわいいんだろうか。


「かわいいわね」

「俺も同じことを思ってたよ、フリージア」

さらにところどころでフリージアにお帰りと告げる臣下や城の使用人たちに、フリージアも笑顔でただいまと言う。こんな温かい城だからこそ、2人も安心して楽しめるのかもな。


「魔帝城じゃなかなかこうはならないから、とても新鮮だわ」

そうレベッカも感心していた。魔帝城もみな親切だがキリッとした緊張感などもあるからな。


「ちょっと羨ましいかも」

「ならまた来るといいわ!次も温かく歓迎するわよ!」

そうフリージアが声をかけてくれる。


「 えぇ、喜んで」

レベッカも嬉しそうだし、俺もフリージアの祖国はどこか落ち着くんだよなぁ。


「……何だかこの国の空気がとても懐かしくて、落ち着くかも」

初めて訪れたはずなのに、不思議だな。


「早速クォーティアの魅力に囚われたのね。仕方ないんだから」

そう言いつつもフリージアは嬉しそうである。


「あ……見えて来たわよ!じゃーん!三騎士の像す!」

城の広間にあったのは想像通りの大きな竜の像!


「きゃーんっ!」

シギはシルフィと仲良くカッコいい黒魔竜の像を見上げている。


「きゃん?きゃきゃんっ」

「そうだな。ほかの2人の騎士は……」

黒魔竜のサイドで大剣を構えている。兜で顔は見えないが、まるで異世界ファンタジーの騎士そのもののイメージだ。


「こちらがロジー・シエルナイト」

あ……俺と同じ名前の……!


「きゃ?」

しかしどうしてかシギが虚無っぽい目を向けながらロジー・シエルナイトの像を指差しているんだが。


「いやさすがに当時の姿のままは無理でしょ。脚色は入ってると思うよ?」

「きゃーんっ!」

アルさんの言葉にシギが驚愕する。黒魔竜はシギのご満悦の行く姿だったのに、人の像となると色々と脚色されちゃうのかな?


「てかシギもヒト型の竜じゃないの?」

「きゃきゃんっ!」

アルさんの言うこともまぁ分かるのだが、シギはどっちもカッコいいオレだと言いたげなご様子だ。


「おさらいだけど騎士としての名はアーシア・ドラゴナイトよ。シギちゃんではないんだけどね」


「でも大地の竜には変わりない」

ルオさんの言うことも確かだなぁ。


「あとシギってのは……主がつけた名だからこそ、当時の公王もそうしたのだろう」

ふうむ……主が付けた名だからか。勝手に使うわけにはいかないとしたのかもなぁ。


「あれ……主?そういやロジー・シエルナイトは俺と同じ名で……」

シギの前の主は前の俺。


「気付くの遅いぞ」

「……っ」

「る……ルオさん!?てかそれじゃぁこの騎士像は……」

ハッとして見上げる。


「俺ぇっ!?」

絶叫した俺にフリージアも驚く。


「ちょ……どう言うことよ!?」


「ロジー・シエルナイトは黒魔竜の主。黒魔竜は生まれ直しても一度決めた主を選ぶ。なら……今生の黒魔竜の主こそが……」

「きゃっ!ろ、じー!きゃんっ!」

ルオさんの言葉にシギが嬉しそうに鳴く。


「うそおおおぉっ!!?」

フリージアが絶叫したのも無理はない。何せフリージアがキラキラした目で見上げていた三騎士のひとりが……俺の前前世だったのだから。


「く……黒魔竜はまぁシギちゃんだったしかわいいし……ちびっ子だったし……うぅ、でもまさかロジーがロジー・シエルナイトだったなんて!」

「いや……その、前前世だから」

「そ、それでも~~っ」

フリージアは興奮と混乱で頭がいっぱいだったようだが。


「落ち着いてっ!フリージア!ロジーは私たちの友だちのロジーには代わりないんだから!」

レベッカの言葉にようやく落ち着きを取り戻したようだ。レベッカも俺の前世のことは知っていたが、前前世のことは知らなかったはずだ。けれど……。


「レベッカはあまり驚いてない?」

「驚いたわ。でも、ルオたちが一緒なら、そんな伝説の騎士さまでもあり得なくはないわ」

レベッカは魔帝さまの息女と言うこともありルオさんのことも知っている。魔帝国にとってどんな立場であるかも。


「それに……ロジーは私の大好きなロジーよ!」

「……っ」

だ……大好きって、友だちとしてだよな!?その、何でドキドキしてるんだ、俺っ!


「確かにレベッカの言う通りだわ。ちょっと取り乱しちゃったわね。けど……前前世ってことは前世もあるってこと……?」

「フリージアにはまだ言ってなかったけど、俺は前世地球って言う異世界で生まれ育ったんだ。多分クォーティアに召喚される勇者や聖女の出身と同じ世界の記憶かな」

「ロジーのお菓子や料理が美味しいのもそのお陰よ!」

とレベッカ。

「いや、ルシルさんの協力あってのことだし……」


「それでも……アンタのチートなわけがちょっと分かった気がするわ」

チート……そうかな?魔人である以上丈夫ではあるんだけどね。



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