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【19】実地研修



――――今日は学園の森で実地研修だ。班に分かれて協力しながら森にある素材を集める。


「将来冒険者になろうと、魔法研究員になろうと騎士になろうと。素材集めは重要な生きる知恵よ!」

「だな、フリージア」

たとえ自分で採集しないとしても、必要なものを集めるために冒険者に依頼したりもする。そんな時に知らないのと知っているのでは雲泥の差だ。


「きゃ……きゃーんっ!」

「シギも森の探索が楽しみか?」

「きゃきゃん!」

プラス新しいコスチュームをみんなに見せびらかしてほこらげにしている。

「ふーん、似合ってるじゃないの」

「はは。最近ちょっと成長したから休みの日にルシルさんと買いに行ったんだ」


「確か他にも色々と買ってきてたわね」

「ああ、レベッカ。普段着や寝巻きのほかにも外で動きやすそうな服も買ったよ」


「ええと、ジャージだったかしら」

「そうそう。アルさんがいつも着てるやつ。俺も欲しくって」

持ちかえったらアルさんが驚いていたが、俺としては前世のジャージほどありがたいものはない。


「動きやすそうだし私も買おうかしら」

「レベッカも!?」

いや、レベッカなら何でも似合うと思うが。魔帝さまや魔帝妃さまに怒られたりしないだろうか。


「そうねぇ。着るなら普段着や寝巻きね」

「うん。でも探索や武術の授業では防具なども身に付けるから外出用には向かないってアルさんに言われちゃった」

「いやいや、何で探索や授業で着ようってなるのよ」

「あはは……思えばそうだよね?」

生粋の異世界民からするとそうなるらしい。これぞカルチャーショック。


「探索の時はこう言う装備が必要だもんな」

今日の俺たちは冒険者用の衣装である。鎧はお決まりの部分鎧は付与魔法がかかっている。


「フリージアたちもバッチリだな」

「もちろんよ!」

フリージアもビアンカも軽々と身に付けているので、魔人チートにかかわらず身に付けても動きやすいものなのだろう。


「もちろん武器もよ」

今回は俺もフリージアも実践用の剣を佩いている。こちらは多少重さはある。あとは愛用の短剣。それからレベッカは魔法の媒体に便利な杖を携えている。


「シギもシルフィと手、繋いでてな」

「きゃ!」

2人で手を繋いでとてとてとついてくる姿はかわいらしい。


「あ、シルフィと見比べると確かにシギの身長が高いかも」

「だろ?フリージア」


「ますますナイトに近付いたわね」

「きゃ!」

フリージアがシギをなでなでしていれば、俺たちのもとに探索をサポートしてくれる先輩がやって来た。


「みんな揃ってるね。じゃ、行こうか」

レインさんである。今回は俺たち3人と2匹、レインさんで一班となって探索する。


「ちょっと待ちなさいレイン」

「え?どうしたの?フリージア」

「アンタ方向音痴だから、先頭は私よ」

あ……そう言えば入学式の時も迷ったって言ってたな。


「あ、いや、先頭は俺が行くよ」

これでも魔人だもの。この中で一番丈夫である。


「ならサポートするわ。私がマップを見るから」

マップと言ってもステータス画面に紐付くらしくそれを見ながら辿るのだ。

前世でマップが表示される親切なゲームみたいだ。尤もこの世界はゲームではなく現実で魔物でも現れたら命の危機だ。


「学園の森は出たとしても獣、魔物が迷い込んでも先輩がついてるから安心してね」

「はい、レインさん」


「あと講師も巡回してるので何かあればすぐに呼ぶことになる。マップには事前に生徒や講師の位置が表示されるようになってる」

「ええ、確認できてるわ。レイン」

フリージアが後ろで確認してくれているようだ。


「でも魔物が出る割合ってどのくらいなんだろう」

「普通魔物の周回回路を学生の探索用にはしないはずだから、本当に迷い込む魔物が稀に……よね」

「ああ、獣100匹につき一体くらいの割合だ」

フリージアの言葉にレインさんが頷く。


「でも実際に獣100匹探してたら日が暮れると思うし、あくまでも確率だから全く会わないこともある」

そうなるよなぁ。


「俺も1年の時に何十回か来て鍛練を積んでるけど、弱い魔物と指を数えるくらいしか遭遇してない。先輩や講師がいれば充分対処できる」

やはり現実は現実。確率を出せたところでどう動くかは自然の成り行き次第だ。


「でも……時折魔族ですら知らない周回をする魔物もいるわ」

とレベッカ。


「突然変異、周回のスパンが長く把握しきれていない。周回の途中で討伐されているものがされておらず来てしまう……などだね」

レインさんが頷く。


「だからどんな時も油断せずに行かないと」

『はい!』

俺たち後輩たちも気合いが入る。それも魔物と隣り合わせのこの世界の住民の大切な本能だ。


しかしそんな俺たちの不安をよそに。

「きゃーきゃきゃー」

「シギは森の探索で楽しそうだな」


「黒魔竜は威嚇してるのか?」

レインさんがふと呟く。

「え……威嚇?ずいぶんとかわいらしい威嚇だな」


「すごいな。普通はある程度の小物の獣が出現するのに……」

「そうなんですか!?レインさん」

この威嚇……本当に効いてるんだ!


「さて、ポイントに来たよ。採集しよう」

『はい、レインさん!』

俺たちは順調に素材採集を進める。そんな時だった。


「ギャーッシャーッ」

「シギ?」

明らかに今までと違う鳴き声を上げる。それも明確に威嚇だと分かるように。


「何か来る!君たちは下がって」

レインさんが剣を構えれば、森の奥から何かが這って出てくる。


「あれは……明らかに大型の魔物!?」

巨大な牛のような、獅子のような何かがレインさんめがけて飛び込んでくる。


「何で学園の森にこんなのが……っ!」

レインさんが剣をふるい魔物の爪を弾く。


「普段は出ない大型の魔物ってことかっ」


「レイン!」

「フリージアは後ろに!」

レインさんが弾かれて体勢を崩した魔物に勢いよく斬りかかれば、魔物が絶叫しながら倒れる。


【……、……、……】

何だ……?どこかで覚えがある。それはどこでだ……?


「ギャーッシャァッ」

シギが威嚇をやめてない!?その事態にレインさんも素早く反応する。


森の木々の中から空に何かが飛び出してくる。それも……複数だ!



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