【18】意外な発見
――――学園の授業は様々だ。前世からお馴染みの座学、魔法の実技、それから体育に相当するのは……模擬剣を使った講義である。
「それじゃぁ私は観戦してるわね」
「うん、シギをよろしくね」
「任せて」
「きゃーん!」
レベッカに抱っこされているシギがぶんぶんと手を振ってくれる。……と、その時。レベッカの隣にちょこんとシルフィが座る。
「あれ?フリージアは……」
「こっちよ」
声にくるりと振り返れれば運動着に剣を持ったフリージアがいた。
「フリージアも授業に参加するのか?」
「そうよ。クォーティアは女性王族だって剣を持ち槍を持ち戦うのよ。そしてそれが私たちの誇りなの」
「誇り……」
「そうよ。かつてクォーティアはグローリアラントとの大戦を経験してる。その際に命を落とした父や兄に代わり、時の王女が剣を取って戦ったの」
「王女が……!」
「そう。その後グローリアラントに勝利したクォーティアの女王になった。そこから女児が剣を持つことも問題ないとされているの」
「それでフリージアも?」
「ええ。だから私も時の女王みたいに強い王女でありたいの」
フリージアが誇らしげに頷く。
「まぁ元々勇者や聖女が生まれやすい国で女勇者も受け入れられているってのもあるのよ」
「へぇ……でもどうしてクォーティアには勇者や聖女が生まれやすいんだ?」
「うーん……どうしてかしら。グローリアラントはそこに難癖をつけるけど、グローリアラントに生まれた元勇者と聖女があれでしょ?」
「……確かにな」
驚くほどまでに残念な結果である。
「それからクォーティアの初代勇者さまのお陰でもあるのかな」
「初代勇者……?」
そのことを聞こうとした時、授業の開始が告げられ、俺とフリージアは集合することになった。しかしクォーティアの初代勇者か……どうしてかそれが気になった。
授業に必死になっていれば、いつの間にか寮である。
「……聞きそびれたな。クォーティアの初代勇者のこと」
「きゃきゃー……きゃんっ!」
「ん……?そうだな、まずは風呂に行こうか」
学生用のシャワールームがあるので……そちらにと、思って向かえば。
「……大浴場?」
「きゃんっ!」
「ウチのお兄さまがねぇ。作った」
その時現れたのはジャージみたいな姿のアルさんだ。
「え、何故!?」
「多分ロジーの記憶を見て嵌まったんじゃないのかな?」
またいつの間に~~っ!?でも俺としても嬉しくはある。
「大浴場作るのには魔帝もお嬢が喜ぶならとリフォームを快諾、俺はシャルのご機嫌とりのための小間使い。本当に酷い長兄だ」
そう語りつつもアルさんは少し嬉しそうだ。
「アルさんも入るの?」
「生徒たちの後にゆっくりとねぇ。今騒がしいし」
職員だからってのもあるのだろうな。
「楽しんでおいでよ。竜も入って大丈夫だから。クォーティアにも温泉はあるからねぇ」
「きゃっ」
「そうなんだ」
「きゃっきゃっ!」
そしてシギも楽しそうだ。
「シギもクォーティアの温泉に入ったことがあるのかな?」
「かもねぇ」
アルさんが含んだように微笑む。どう言うことだろう?何だか聞いても答えてもらえないような気がする。
「その、クォーティアにもあるってことはアルさんも入ったことあるの?」
なら他のことはどうかな。
「……まぁね」
そう答えたアルさんは一瞬寂しそうな表情を浮かべた後、再びにこっと笑んだ。
「行っておいで」
「……うん、分かった。シギ、中ではいいこにするんだぞ?」
「……きゃ?」
「泳いじゃダメ。昔……そう言われただろう?」
「きゃ……」
やっぱり入ったことがあるのは知っているのか。そしてその言葉にシギがアルさんを見る。あるとしたら前の生。誰に言われたのだろうか?
「きゃーん……」
シギはどうしてか寂しそうに鳴いた。
「今はまた……一緒だろう?」
「……きゃんっ!」
その言葉にシギが再び元気を取り戻す。ひょっとしてそれって前前世の……俺?
前前世の……この世界で生きた俺はクォーティアの出身だったんだろうか。
大浴場で身体を洗う。
「ほら、シギも洗うぞ」
「きゃーんっ!」
かわいいなぁ。しっかりと洗ってやれば次は……っと。
「きゃ?」
ざぶん。
「かけゆだよ。ほら、シギも」
ざぶん。
軽くかけてやれば。
「きゃきゃん」
ぷるぷると水滴を飛ばしてくる。
「わっ、シギったら」
「きゃーん」
「でもかけゆは大事だぞ?」
「きゃっ!」
ざぶんともう一度かけゆをして準備万端だ。
「ほーら、熱いからゆっくりな」
「きゃーん」
お湯に抵抗はない。やはり入ったことがあるからか。まぁ俺もなんだけど。
広々とした浴槽に浸かればまるで前世のようだ。
シギをお膝に乗っけてゆったりまったり。
「ふぅ……気持ちいいな」
「きゃーん」
こんな大浴場に入れるなんて修学旅行とかそう言う機会しかなかったがな。
「温度はどうだ?熱すぎないか?」
「きゃん」
良かったぁ。そう安心した時、シギが俺の腕からするりと抜ける。
「きゃきゃきゃきゃきゃっ♪」
ぎゃあぁぁぁぁっ!!?華麗に泳いでるううぅっ!!?
「こら、やめなさーいっ!!」
それともいたずらっ子なお年頃なのだろうか。シギを捕まえ周りの生徒に謝れば、穏やかな笑い声が響く。
大浴場では慌てたが、寝室に戻れば身体がぽかぽかになったシギはまったりごろごろ。
「きゃー、きゃーん」
「本当にかわいいな」
シギをなでなでしていれば気が付いた。
「ちょっと服がキツキツでは……?」
「きゃ?」
「もしかして……少し大きくなった?」
魔人の腕だから重さを感じにくいのか気付かなかった。
「しかし確かに……ちょっと成長してる?」
「きゃーっ!?」
シギはふと身体を起こして俺をじっと見上げる。
「服なら明日ルシルさんにでも頼みに行こうか?」
「きゃぁ」
「服は学生用なら学園の購買に、それ以外なら学園都市の店に売っているんだったな」
「きゃん?」
「子ども用の服も職員や教員の家族向けに売っているんだよ」
「きゃきゃーん」
こくんと頷いたシギ。そして……。
「きゃ……きゅー」
「シギ?どうした?」
何か言いたげだ。
「ろ……じー!」
「しゃべった!?今……シギが俺の名前を……!嬉しいなぁ」
言葉を覚えたのか。その最初の言葉が俺だなんて……これは嬉しすぎる。
「きゃぁ~~、ろ、じー!」
「シギったら楽しそうだなぁ」
何だか前にも同じことがあった気もするのだが……シギの成長をこの目で見られることがどうしようもなく幸せで。
「嬉しいよ、シギ」
涙が出そうなのを必死にこらえてシギを抱き締める。
「きゃ……!ろ、じー!ろじー」
「うん、シギ。シギ……俺の……」
大切な……ずっとずっと昔から大切な子。




