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【17】学園生活



異世界転生の主人公と言えば。学園の入学式とか最初の魔法の授業の小手調べで魔法を強くぶっぱなし過ぎて騒ぎになるのがセオリーだろう。しかし現実はそうはいかない。


「う……上手くできなかった」

緊張した俺は初の魔法の授業で前世のテスト前のような失敗をしていた。


「せっかく無詠唱でできたのに……」

うう……主人公として恥ずかしい。


「ロジーは頑張ったわ!こう言うのはね、やらないよりはやろうとすることこそが大切なのよ!」

「レベッカ……。レベッカが優しすぎて俺……涙が出てくる」


「きゃ!きゃきゃーんっ!」

その時シギも声を上げる。


「励ましてくれているのか?ありがとな~~、シギ」

俺を励ましてくれてるんだなぁ。かわいいなぁ。そう頭を撫でてやっていれば、フリージアがシルフィを抱っこしてやって来た。


「いや、ロジー。シギは代わりに自分が魔法をぶっぱなすって言ってるのよ」

とフリージア。

「はい!?」

思ってもみなかった言葉に驚愕する。そして何故フリージアがそれを分かったと言えば……。


「……ん」

フリージアに抱っこされたシルフィがこくんと頷く。シルフィは無口な子ではあるがシギの言っていることは理解している様子なのだ。


だからこそ分かる……いや魔法をぶっぱなす……?


「こらシギ~~、それルシルさんに禁止されてるだろ」

「……きゃっ!!」

ハッとするシギ。いや、天然か。


「俺はいいから。レベッカやフリージアたちの魔法を見るのも勉強になるしさ」

「きゃきゃーん」

レベッカやフリージアには好感を持っているからかシギも納得したようである。


「……きゃきゃ?」

しかしボソリと俺に問うてくる。


「うーん、これは何となく分かる。『ほんとにだめ?』だろ?」

「きゃっ!」

アタリか。でも……。


「その気持ちだけで充分だよ」

ひとなつこくて、そして甘えっ子で……俺のために自分が魔法を披露すると言ってくれる。


「お前は俺の大切な相棒だよ」

「きゅーんっ!」

嬉しい様子をしっぽと羽根で最大限に表現し、俺の胸元にすりすりと顔をうずめてくれる。


「シギちゃん、かわいいっ!」

レベッカが歓喜しシギの頭をなでなですれば、シギが嬉しそうにまどろむ。


最近ではレベッカからあーんとかもされてるんだ。羨まし……いやいや何思ってんだ俺。レベッカは……お姫さまなんだから。


「まぁ分からなくもないわ」

そうフリージアが頷き、しれっとシルフィをなでなでしており、シルフィも嬉しそうだ。シギとシルフィを3人でかわいがっていれば、不意にそんな和やかな雰囲気を壊すような嘲笑が聞こえてくる。


「アイツ、魔族の癖に魔法もまともに使えないんだぜ?」

「マジかよ、魔族の皇女のお付きだって言うけど……魔族もたいしたことねーな」


「人間の国の生徒たちね」

フリージアがどこか悲しそうに呟く。

「グローリアラントの生徒たちがほぼいなくなってすっかり平和な学園生活が戻ってきた……とはいかないか」

世の中聖人ばかりではないのだ。


「自分たちよりも強い魔族たちに囲われて、とたんに弱者を見付けて貶してくるなんて恥ずかしくないのかしら」

「あんまり気にしないで、フリージア」

正確には魔人なんだけどね。


「そうはいかないわ!」

「フリージア!?」

「ちょっと……あんたたち!そう言うことを言うのはどうなの?」

フリージアの勢いに陰口を叩いていた生徒たちが怯む。


「フリージアの言う通りだわ。誰だってうまくできないこともある。むしろそのために学園に通うんじゃない」

レベッカまで……!


「それに私はロジーだからこそいいのよ。魔法がいつでも完璧に使えるから一緒にいるわけじゃない」

「私だって……っ!そもそも人間とか魔族とか種族にこだわって貶す方がどうかしてるわよ!」

レベッカとフリージアが軽く魔法を顕現させる。ちょ……その、レベッカだけじゃなくてフリージアも無詠唱で魔法出せるの!?


2人の覇気に文句を言ってきた人間の生徒たちの顔がひきつる。あんなものを食らったら一溜りもないと言いたいほどに。


「姫さま!」

「おい!俺たちも加わるぞ!」

「俺たちの姫さまだもんな!」

その時何故か魔族の生徒たちが集まってくる。みんな恐ろしげな魔法を顕現させ文句を言ってきた生徒たちが震え上がっている。


「あれ……これ、止めた方がいい?」

「きゃ?」

いや……絶対止めた方がいいよな!?


「や、やめなさ――――いっ!!!」

このままじゃ大惨事になる!俺は思いっきり叫んだ。

「きゃ?きゃーっす」

あ、シギが大地の口をパカッと開いたことで一同が止まる。


「シギも……参戦……」

シルフィがボソッと呟く。だ、ダメダメ!むしろ加わろうとしてた!


「もう充分痛い目は見たはずだ。だからシギも……今日のおやつ抜きにするよ」

「きゃーん……っ!!」

ショッキングな表情を浮かべ、そっと大地の口を閉じるシギ。


「きゃうん……」

シギのしょぼん顔のお陰かみなどこか戦意喪失したようである。


「ごめんね、シギちゃん。私たちが熱くなりすぎちゃったから」

レベッカがシギの頭をなでなでする。


「ちょっとやり過ぎちまって……」

「悪かったな」

そう言って周りからお菓子をお裾分けしてもらったシギは……。

「きゃーんっ♪」

ご満悦である。


「お腹いっぱいになっちゃうから……お菓子は明日かな」

「きゃきゃん」

え?まだ食べられると言わんばかり……そう言えばそう言う竜だった。


その後はレベッカやフリージアとほかの授業を受けに行く。痛い目を見た生徒たちは俺たちのことを恨めしげに見ていたが、気が付けば同じ人間生徒たちからも遠巻きにされている。


「気にすることないわ。魔族と仲良くしたいってまともな人間の方が多いのよ」

「……うん、フリージアやレインさんみたいにね」

「そう言うこと」


俺はもう人間ではなくなったけど……フリージアたちがいてくれるからまだ俺は……人間だった頃を忘れないで済むのかもな……。


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