表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

17/21

【15】魔法学園寮



――――入学式の後、俺たちはフリージアと共に魔法学園寮にやって来た。魔法学園寮の前にはどうしてか人だかりができている。


「……どうしたんだ?」

「こっちよ」

フリージアがそれが見える位置に案内してくれると、相手もそれに気が付いたようだ。


「来たぞ」

「裏切り者の王女だ」

またフリージアをそう呼ぶ連中か。恐らくグローリアラントの生徒たちだ。さらに彼らのせいで多数の生徒が寮に入れずにいるようだ。


「姫さま」

そう漏らしたのは寮に入れない生徒のようだが先輩か……?


「今度は何があったの?」

フリージアが問えば、寮に入れずにいる生徒たちがポツリポツリと漏らす。


「クォーティアの生徒はこの学園寮を使う資格がないと……」

「ここはグローリアラントの寮じゃないのに……」

「グローリアラントは大国のくせに寮も用意しないくせに」

だからこそ魔法学園寮にグローリアラントの生徒たちも入っている。ならエリオットもいるのかもと少し警戒するが、ここに姿はない。

周囲には入学式を終えて帰ってきても寮の目の前でこんなことになっており中に入れない新入生たちがいる。


「うるさいっ!グローリアラントが一番偉いんだ!俺たちに従え!」

そうグローリアラントの生徒が怒鳴ってくる。一体どこをどう捉え違えばそんな思考になるんだよ。


「寮長がいてくれたら……」

生徒の1人が漏らす。

「寮長……?」

「つまりこいつらグローリアラントの生徒たちは寮長に無断でこんなことをしているってことよ」

と、フリージア。むしろ不在だからこその凶行と言うことか。


「関係ない!ここはグローリアラントの寮に他ならない!」

その時再び耳ざわりな声が響く。


「当然よ。王女であり聖女でもある私が利用する寮よ。裏切り者どもがいたら安心して休めないわ」

エリオットと聖女がやって来たのだ。え……?コイツら学園寮使ってるの……?


「どうやらグローリアラントは想像以上のドケチらしいわね」

フリージアが小声で告げてくる。グローリアラントは自国の王女が入学しても専用寮すら用意しない。そればかりか学園寮を占有するだなんて。


「またクォーティアを……」

フリージアがふるふると震えている。


「あぁ何だ、卑しい魔族どももいるようね。とっとと私の視界から消えてちょうだい!」

聖女が俺とレベッカを見て言い放つ。


「魔族だから卑しいだなんて」

この聖女は一体どんな教育を受けてきたんだ。

レベッカを卑しいだなんて言えるほどこの聖女は洗練されてない。むしろ比べることすら嫌悪する。


「そう言う言い方ないんじゃないかしら」

その時声を上げたのはレベッカである。


「あなた王女なのでしょう?それなのに学園寮を私物化し、さらには種族や国を理由に王族や皇族を貶めるだなんて……グローリアラントの格が知れるわね」

か……カッコよすぎる……レベッカ!いや……だからこそみんなに愛される皇女さまなのだ。


「何ですって!?魔族のくせに!」

聖女がこちらに迫って来ようとして、俺が慌ててレベッカの前に出る。

「ギャッシャーッ!!」

シギも聖女たちに精一杯威嚇する。姫さまのために頑張るとはやっぱりナイトだな、シギは。


「ひぃっ!暗黒竜っ!」

いや黒魔竜だってば。


「こ……この魔族がっ!」

エリオットが聖女の後ろから吠える。勇者のくせに前に出てこないとは情けない。


「一体何の騒ぎだ」

その時響いた青年の声に周囲がざわめく。いや……みな歓喜しているように思える。


「……フリージア?ここで何を……」

金髪にモスグリーンの瞳をした年上の青年だった。さらにはフリージアの知り合い……?


「レインのバカ!アンタが入学式の日になっても帰って来ないからでしょ!」

フリージアが元気を取り戻して叫べば、レインと呼ばれた彼は申し訳なさそうに頭を掻く。


「いやぁ……クエストに出てたら帰り道迷っちゃって」

「あんた寮長でしょうがっ!みんなが大変な時に!」

このひとが寮長……!


「……大変」

レインさんが状況を調べるために周囲を見る。


「グローリアラントの連中か。見たことのないやつもいるが……新入生か」

上級生のことは知っているようだ。同じ寮生と言うよりもこうして度々問題を起こしているからだろうか。


「私はグローリアラントの聖女で王女。つまりこの学園寮て一番偉いのです。私の指示に従うのは当然よ」

聖女の言葉にグローリアラントの生徒たちがうんうんと頷く。

「ぼくは勇者で王女の婚約者エリオットだ!だからメリッサのために実力行使することも辞さない!」

メリッサと言うのが聖女の名前か。そしてエリオットはメリッサの威光を借りふんと胸を張る。


「勇者……?だから何。学園寮は学園のものだしグローリアラントのものじゃない。この学園寮で一番偉いのは寮長だろ?俺が不在なら副寮長」

レインさんがしごくまともなことを言う。レインさんはメリッサにもエリオットにも怯まない。


「う、うるさいっ!ぼくは勇者……世界の救世主だ!勇者に逆らうなら貴様を魔族の手下として処刑してやる!」

な、何を言ってるんだコイツは!


「勇者にそんな権利ないだろ。しかも弱そうだ」

レインさんが吐き捨てる。

「アンタ素直すぎるわよ。そこがいいとこだけど」

フリージアが溜め息をつく。しかしながら俺の目から見てもレインさんの方が堂々としており実力も精神も上そうだ。


「この……っ!」

エリオットがレインさんにつかみかかろうとする。


「大丈夫よ」

フリージアのその言葉が聞こえた瞬間。


「うわあぁぁっ!!!」

エリオットが地面に転がっていた。

「エリオットおおぉっ!」

メリッサが慌てて駆け寄る。そしてキッとレインさんを睨む。


「グローリアラントの勇者にこんなことをして……これはグローリアラントへの挑戦ですわ!」

「はぁ?お前たちこそ魔法学園でこんなことをして学園長が許すと思ってんの?それに勇者……それにしては貧弱すぎないか」

レインさんってずけずけ言うなー。だからこそメリッサやエリオットにも屈しないのだろうが。


「それにそれを言うのなら、俺も勇者だし。勇者の俺に楯突くのならお前たちもクォーティアへの反逆とならないか?」

え……レインさんが勇者!?思えばその腰には剣がある。それもただの剣ではない。そんな勘が働いたのも魔人である証拠だろうか。


「まぁクォーティアはそんな挑発には乗りたくないし……そうなったらとっとと魔帝国に泣き付こう」

「もう、レインったら!まぁ確かに……グローリアラントを相手取るには魔帝国の協力がいるし……今も魔帝国のお陰で安全なんだけど……」

フリージアが溜め息をつく。

「ならこれからもそれで行こう。平和が何よりだ。俺もクォーティアの三騎士に恥じぬよう、勇者しないとねぇ」

レインさんがにへらっと笑う。


「ゆ……勇者はぼくだぁっ!」

そんな中それでもエリオットは吠える。


しかし結果は同じである。


「ぐうぅっ」

あんなに威張っていたやつが……いや、勇者だからと威張るだけで、何も努力しなかったからだろう。


「もう充分見させてもらった。ご苦労、寮長」

その時姿を現したのは……学園長。そしてアルさんもいる。


「なるほど、グローリアラントの生徒諸君は随分と無茶苦茶やっていたようだ。アルを小間使いにして寮長を呼び戻して正解だったな」

学園長がそう言うとアルさんがふいと顔を背ける。てか小間使いって……学園長がある意味すごい。


「しかし寮長がいないからと言って好き勝手していい訳ではない。副寮長も脅していたようだしな」

「も、申し訳ありません」

その時こちらに来たのは女子生徒だ。


「いや、君のせいではなかろう。この放蕩寮長の代わりを勤めようとしたのだろう?しかしながらそこの新入生の登場で再び強く出たようだ」

学園長の視線の先にはメリッサとエリオットがいる。あの2人が煽動したと言うことか。しかしそれに乗るやつらもやつら……逆らえなかったにしてはノリノリだったじゃないか。


「ぼ、ぼくは勇者だぞ!」

しかしエリオットは未だ引き下がらない。


「ほう?なら試して見るといい」

その時降ってきた声に振り向けば、相変わらず神出鬼没なルオさんがいた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ