第8話 砂漠の街ザラ・メル
砂漠の街ザラ・メルの小さな食事処に、ヴァルドとミリュアは腰を下ろした。
店内は木の梁がむき出しになり、砂漠の日差しが細い窓から差し込んでいる。
香ばしい肉の匂いとフルーツの甘い香りが混ざり合い、旅の疲れを忘れさせる雰囲気だった。
「さて……何を頼むか」
「ふむ、どれも美味しそうじゃが……わらわは昨日と同じく森の実ジュースでもよいぞ」
「さすがにそれだけでは腹は満たされんだろう。俺は肉料理を……」
その時、後ろから声がかかった。
「お悩みですかな、ヴァルドさん、ミリュアさん!」
振り返ると、いつの間にかダリスが近くに立っていた。両手を胸の前で組み、嬉しそうに目を輝かせている。
「おすすめメニューをお伝えしましょうぞ! この街の名物は“赤砂豚の骨付き煮込み”と、“砂漠の甘露フルーツのスープ”ですぞ!」
「なるほど……それを頼むか」
「わらわも、そのスープにしようかのう」
料理が運ばれてくると、ヴァルドは豪快に骨付き肉をかぶりつき、咀嚼のたびに満足そうな表情を浮かべた。
ミリュアは甘いスープを口に運び、ほほ笑みながら小さな声でつぶやく。
「ふふ……これは絶品じゃ」
「うむ。美味いな」
食事を終えた二人は、満足げに店を出る。砂漠の乾いた風が頬をなでる中、ダリスが先導して歩き始めた。
「では、わたくしの故郷を少し案内いたしますぞ。砂漠の街は歴史ある建物が多いのです」
街の通りを歩きながら、砂色の石畳や低い建物、屋台の香ばしい匂いに二人は感心していた。砂漠のフルーツを売る子供たちや、行商の人々が忙しそうに動き回っている。
「こちらがわたくしの道場ですぞ。ご覧の通り、現在は生徒はおりません……普段は砂漠のフルーツを集めて売って生活しておりますぞ」
建物は壁が崩れかけ、床は砂が溜まっている。扉を押すとギシリと音を立て、中はがらんとしていた。
「なるほど……人はおらんのか」
「はい。普段は砂漠の果実を売る日々でございます。ですが、武の心を磨く場所としては十分でしょうぞ」
二人は一通り道場を見学し、感謝の言葉を伝えた。
「案内ありがとうな、ダリス」
「いやいや、こちらこそお二人を楽しませることができて光栄ですぞ」
道場を後にする前、ヴァルドは本題を切り出した。
「ところで、聖銀の大剣を探しているのだが……何か手掛かりはあるか?」
「聖銀でしたら、少し遠いですがサンラグ鉱山でとれると聞いたことがありますぞ」
二人は同時に顔を上げ、目を見開いた。
「よし、次の目的地は決まったな」
砂漠の街を背に、ヴァルドとミリュアは新たな冒険へ歩を進めた。
後ろではダリスが少し得意げに、しかし怪しげな表情で二人の後をつけていくのだった。




