第6話 灼熱の砂漠と、怪しい親父
翌朝、ヴァルドとミリュアは昨日掲示板で見つけた不死系魔物討伐の依頼を街長に報告した。
街長は目を輝かせ、何度も二人に頭を下げて感謝の言葉を述べる。
「いやあ、本当に助かりました。命を落とす者が出ずに済むとは……!」
二人は報酬を受け取り、肩の力を少し緩める。朝の街は清々しく、遠くの市場には活気が戻りつつあった。
その足で、昨日と同じ居酒屋に向かう。
ヴァルドは傭兵らしい豪快さで骨付き肉の煮込みを注文し、かぶりつく。口の中でジュワッと広がる肉の旨味に、思わず満足げな笑みを浮かべた。
ミリュアは昨日と同じ森の実ジュースを注文し、赤くとろりとした果汁をゆっくりと口に運す。
「朝からよくそんなに食えるのう」
「余裕だ。ミリュアはそんなジュースで腹は満たされるのか?」
「赤くてとろとろな液体こそが正義じゃろ」
「さすがは吸血鬼……と言ったところか」
二人は街の光景を目に焼き付け、次の目的地である砂漠の街へ向かう準備を整える。ヴァルドは眉をひそめ、少し肩をすくめた。
「特に聖銀の大剣に関する情報は得られなかったな」
「まぁ、まだ冒険は始まったばかりじゃからな」
道中、砂漠の砂が足首まで沈む中、目に映るのは砂色の広がる地平線だけではなかった。
灼熱の太陽に照らされ、緑色の葉を光らせるサボテンの仲間の植物や、砂に潜む小さな砂トカゲ、光を反射する甲羅を持つ砂甲虫などが生息している。風に揺れる乾いた砂の上を、鋭い嘴の小型鳥が飛び交い、時折砂塵の中から奇妙な甲高い鳴き声が響く。
そんな景色に目を奪われていると、砂丘の影に何かが倒れているのをミリュアが見つけた。
「誰か倒れておる」
「放っておけ。よくある盗賊が油断させるための演技だろう」
ヴァルドは剣を握り直し、無視して歩を進める。ところが次の瞬間、倒れていた男が一瞬のうちに高速ほふく前進で二人を追い越し、再び砂に倒れ込む。
「かまって欲しいようじゃ」
「…………」
またも無視して進むと、男は再び高速ほふく前進で追い越し、再度砂に体を投げ出す。
「のう、わらわ声をかけてみたくなってきたぞ」
「……おい、そこの親父」
ヴァルドの声に、男はぱっと顔を上げる。
「ようやく気にかけてくださいましたな!?」
顔だけ上げて二人の顔を覗き込む男。砂まみれのひょろりとした体型で、腕や脚には筋肉があるものの全体的に華奢な印象だ。
「わたくし、この先の街で武闘家をしております。ダリスと申します」
二人は腕を差し出すダリスと握手する。武闘家としてはあまりに頼りなさげな体型だが、その動きは確かに俊敏で、異様な生命力を感じさせる。
「なぜ、倒れていた?」
「油断をしてしまったのです」
「油断?」
「この先の赤砂谷に巣食う怪鳥サンドルークに襲われたのです!」
ヴァルドとミリュアは互いに顔を見合わせ、次なる危険が近づいていることを悟る。砂漠の街への旅路は、早くも新たな戦いの兆しに満ちていた。
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