第3話 森の朝、旅立ちの決意
朝の光が森の木々の隙間から差し込み、昨晩の焚き火の跡がわずかに残っている。
ヴァルドは枝に腰掛け、まだ体の奥に残る疲労と戦うように背伸びをした。
昨晩の戦闘で吸血鬼化した力を使ったとはいえ、体はまだ完全に戻っていない。
「のお、ヴァルド」
ミリュアは枝に腰掛けるヴァルドの横に近づいた。
その小柄な姿が、朝の光に柔らかく映えている。
「この後、お主はどうするつもりじゃ?」
ヴァルドは小さく息をつき、顔を上げる。
「……俺は、宿敵を追う。復讐だ。家族を奪った相手を、自分の手で――そして、戦争をさらに拡大させようとしている陰謀を阻止する」
ミリュアは小さく頷き、静かに座ったまま顔を上げる。
その瞳は真剣で、ただの好奇心ではない。
「ほう……それで、このわらわを巻き込むつもりかのう?」
「……巻き込むつもりはない。危険すぎる。森に留まれ」
ヴァルドの声には強い意思が込められる。
吸血鬼化した力があっても、戦場で起こることは想像以上に危険だ。
「ふむ……お主はそう言うが、昨晩のわらわの戦闘ぶりを見たであろう?」
ミリュアの口調には、自信と少しのいたずら心が混ざる。
小さな体に秘められた力を、彼女は自認しているのだろう。
「……確かにな。だが.....」
ヴァルドは視線を森の奥に向け、手の中で剣の柄を握り直す。
この旅は、ただの復讐ではなく、陰謀を阻止する長く危険な道になる。
誰かを巻き込めば、命が失われる可能性も高い。
「……わらわは着いていくぞ。森で独りぼっちで過ごす日々にもそろそろ飽き飽きしておるのじゃ。お主となら、少しは退屈せずに過ごせそうじゃからのう」
ミリュアは笑みを浮かべながら言い放つ。
その声には、千年を生きる者の揺るがぬ決意が宿っていた。
「……ダメだと言ってもこの感じだと着いてきそうだな」
ヴァルドは深く息を吐き、少しだけ肩を落とす。
「なら……一緒に行くか」
彼は剣を軽く握り、立ち上がる。
森の光が二人を照らし、昨晩の戦闘の緊張感が少しだけ柔らぐ。
「ふふ……うれしいのう」
ミリュアは小さくジャンプするように喜びを表し、森の小鳥のように軽やかな笑い声をあげた。
ヴァルドは肩をすくめ、ため息混じりに呟く。
「……まったく、元気だな、あんたは」
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