表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
吸血鬼の少女に血を吸われた傭兵は、迫る戦争と不死の脅威に立ち向かう  作者: 白月つむぎ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/58

第23話 生者の魂、闇に消え

「さあ、このままじゃつまらないわ。もっと、歯向かってちょうだい!」


 ヴィオレッタのレイピアが光を切り裂き、連続で振り下ろされる。三人は必死にかわすのが精一杯で、攻撃の隙を探す間もない。


「くっ……!」


 ヴァルドは剣で防ぎながら、刃の先に光る冷たい汗を感じた。


 そのとき――


「わたくしも参戦しますぞーーー!!」


 ダリスが勢いよく飛び込む。両手を広げ、謎の型を取り、連続攻撃を放つ。


「うおおおおーーーっ!!! そのたわわなものにわたくしは触れたいですぞーーー!!!?」


「ヤダ、なにこの親父……」


 ヴィオレッタは目を丸くし、ドン引きの表情で一蹴。

 ダリスは吹き飛ばされ、床に転がった。


「ご褒美ですぞーーー!!」


 再び立ち上がるダリス。


 ――しかしその瞬間、ミリュアがスッと影のように接近。短剣を一閃させ、ヴィオレッタの腕に小さな傷を刻む。


「いやーん! 傷が残ったらどうしてくれるのよ!!」


 ヴィオレッタはさらに猛攻を仕掛けようとした瞬間、足元の鉱脈が小さく軋む音を立てた。

 壁の亀裂が、まるで彼女たちを試すかのように広がっていく。


「……なっ、何だこれは!?」


 周囲の不死兵たちも慌てて足元を見下ろし、状況の危うさに気づく。


「やはり地下への道を作るために爆発は……」


「そりゃあこうなるわなぁ……」


「ちょ、ちょっとアナタたち、なんでもっと早く言わないのよ!」


 慌てふためく声が飛び交う中、ヴィオレッタは顔をしかめつつも短く息をつき、冷静さを取り戻そうとする。

 しかし、薄暗い地下鉱脈の亀裂はさらに広がり、瓦礫が崩れ落ちる音が響く。


「まあいいわ……聖銀はしっかりと手に入れたことだし……撤退よ! 全軍撤退――!!!」


 ヴィオレッタの号令とともに、黒装甲の不死軍たちはドタバタと後退していく。

 ぎりぎりのタイミングで崩れかけの鉱脈から逃れる姿は、どこか滑稽でもあった。


「俺たちも逃げるぞ!」


 ヴァルドはミリュアとダリスを促し、三人は地下鉱脈の危険をかいくぐって素早くその場を離れた。


 崩れ落ちる瓦礫の音と遠くに響く怒号を背に、三人は息を整えながら地下鉱脈を後にした。


 ◇


 地上へ抜けた瞬間、背後で鉱脈が大きく軋み、岩盤が音を立てて崩れ落ちた。地下の通路は完全に塞がれ、まるで鉱山そのものが消え去ろうとしているかのようだった。


「くそっ、あいつら聖銀を……!」


「のう、あの者――」


 ミリュアの指先が震え、遠くに立つ影を指し示した。そこには、先ほど助けたはずの生存者が二人、しかし――その瞳は空洞に近く、動きもぎこちない。肌には不自然な青白さが漂い、口元には血の痕がついていた。


「まさか、ヴィオレッタに噛まれたのか……!?」


 ミリュアの声が震える。ダリスも目を見開き、言葉を失った。


 その瞬間、二人の“不死化”した生存者が、無表情のままこちらに向かって歩みを進める――牙を剥き、迫るその姿は、かつての人間の面影をわずかに残すだけだった。


 “不死化”した二人の生存者は、無表情のまま牙を剥き、迫る。

 かつての面影をわずかに残すその姿に、ヴァルドは一瞬、躊躇の色を見せた。しかし、戦わねば三人とも命が危うい。


 ミリュアが短剣を握りしめ、ヴァルドとダリスが連携して敵を足止めする。

鋭い一閃、巧みな身のこなしで、徐々に不死者たちを追い詰めていく。


「こっちですぞーーー!!!」


 ダリスが放つ奇妙な技で注意を引き、ヴァルドが突進の軌道を作る。その隙に、ミリュアが冷徹な目で短剣を深く突き立て、二人の“不死者”は静かに倒れた。


 息を整え、互いの顔を見合わせる。戦いの最中に流れる緊張感とは違い、今は怒りが込み上げる。


「くそ……アルグレイド……!」


 ヴァルドの拳がわずかに震え、血と瘴気の混ざる空気を掴むように握り締める。


「……許せぬ……あの者のせいで、こんな無垢の命が!」


 ミリュアも短剣を握りしめ、鋭い瞳で闇を睨む。怒りと悲しみが混じった冷たい光が、彼女の瞳に宿っていた。


 やがて夜が明け、薄い橙色の光が瓦礫の広場を照らし始める。


 三人は倒れた不死者たちのそばに花を置き、静かに手を合わせた。


 ヴァルブリーゼを後にした三人は、再びルーミエールの街へと足を向ける。

 次に迫る戦いに備えるために――静かに、しかし確かな決意を胸に抱きながら。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ