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吸血鬼の少女に血を吸われた傭兵は、迫る戦争と不死の脅威に立ち向かう  作者: 白月つむぎ


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第17話 傭兵、吸血鬼化して戦場に立つ

 朝の光がヴァルブリーゼの街を柔らかく照らすなか、三人は宿屋を後にした。高原特有の爽やかな風が髪を揺らす。


 街の広場に立つと、冒険者ギルドの掲示板が目に入った。今日も依頼がずらりと並び、その中にひときわ目立つ書き込みがあった。


 ヴァルドは掲示板をじっと見つめ、目を細めた。


「……周辺の国境沿いで傭兵を募集しているらしいな。やはり、戦争が始まったか」


 ミリュアも掲示板を覗き込み、口角を上げて微笑む。


「ふふ、ヴァルド、当然参戦するんじゃろ?」


 ヴァルドは肩をすくめ、淡々と答える。


「傭兵が本業だからな」


 報酬は通常の討伐依頼よりも高額で、戦況次第では名声も得られる。

 ヴァルドは迷うことなく依頼用紙に自らの名前を記した。


「これで俺はこの地域の戦争に関わることになる。ミリュア、お前もついて来るか?」


「もちろんじゃ。ヴァルドと一緒なら、どんな戦いでも恐るるに足らぬ」


 ダリスもすかさず言葉を添える。


「ふふ、私も影ながら同行させていただきますぞ! こういう戦場でこそ修行の成果を活かせますな」


 三人はギルドの受付に用紙を提出し、正式に傭兵として戦場へと派遣されることとなった。


 ◇


 その日の午後、国境沿いの戦場に足を踏み入れると、空気が一変した。硝煙と血の匂いが混ざり、遠くからは戦士たちの叫び声と金属音が響く。

 ヴァルドは目を細め、辺りを見渡す。敵は国境を越えて侵入してきた魔族連合の兵士たちだ。


「……ミリュア、油断するな」


「うむ」


 ミリュアは戦意を漲らせ、薄青色の瞳に赤の輝きを宿す。

 ダリスは軽く体を伸ばし、怪しげな構えを取った。


 最初の突撃が始まる。人間兵と魔族兵が激しくぶつかり合う中、ヴァルドは冷静に敵の動きを見極めた。

 吸血鬼としての力が、身体を一瞬で反応させる。視界の端に矢が飛んでも、すべて避けるように身体が動く。


 ミリュアの指先が淡く光り、風の精霊を宿した魔法弾が敵の足元を叩いた。


「ヴァルド、そこじゃ!」


 ヴァルドは瞬時に判断し、敵の懐に飛び込み、蹴散らす。

 倒れる兵士たちの間を滑るように進む彼の動きに、ミリュアも思わず感嘆の声を漏らした。


「やれやれ、ヴァルドさんが無双しておるな……わたくしも負けませんぞーー!!」


 ダリスは周囲の敵を牽制するように、独特の構えで連続攻撃を繰り出す。


 戦場の中央で、ヴァルドたちの力を目の当たりにした兵士たちは動揺し、次第に押し返されていく。


 そのとき、ヴァルドを囲むように必死の形相の魔族連合の兵士たちがうねるように押し寄せた。

 窮地に追い込まれた彼らは、火事場の馬鹿力のごとく鋭い爪や牙、異形の武器を振りかざし、命を賭けて襲いかかる。


「来るがいい……!」


 刹那、ヴァルドは瞬間移動のように前方へ跳躍し、振り下ろした剣は魔族の盾をものともせず切り裂いた。

 兵士のひとりが反撃しようとするも、ヴァルドの動きは予測不可能で、避けることもできずに横腹を斬られる。

 血しぶきが空中に舞い、兵士は吹き飛ばされた。


「……ヴァルド、すごいのう!」


 ミリュアの声に答えることなく、ヴァルドは次々と敵の攻撃を受け流し、斬り伏せていく。

 その集中力と反射神経、そして強靭な肉体――吸血鬼化した彼の身体は、戦場で孤高の王のように輝いていた。


 周囲の魔族連合軍は次第に後退を余儀なくされる。

 ヴァルドの剣先ひとつで地面に跡が刻まれ、血で染まる砂が光を反射する。

 ミリュアもそれに合わせ魔法の矢や結界を展開し、連携によって戦場の支配権を確立していく。


 最後にヴァルドは大きく息を吸い込み、力を一点に集中させた。

 その瞬間、周囲の空気が震え、斬撃の軌跡はまるで稲妻のように敵を薙ぎ払った。

 魔族軍は形勢を完全に崩され、残党は逃げ惑う。


 地面には倒れた敵の影と、砂塵にまぎれた無数の斬撃の跡。

 ヴァルドは剣を地面に突き刺し、深く息をついた。赤く光った瞳は、ようやく元の色に戻る。


「……ふう、終わったな」


 ミリュアは戦場に漂う緊張の余韻を感じながらも、いつもの柔らかな笑みを浮かべる。


「さすがはヴァルド……あっぱれじゃ!」


 ◇


 瓦礫と煙が残る戦場を抜けて、ようやくヴァルブリーゼの門をくぐる。

 三人の肩の力も少しずつ抜けていった。


「ようやく街に戻ってきたな」


 ヴァルドは剣を背に背負いながら、深く息をついた。


 三人は街中の冒険者ギルドへ向かい、報告を済ませる。

 ギルドの受付嬢は笑顔で報告を受け取り、紙幣や宝石で報酬を渡した。


「これで旅費は確保できたな」


「ふふ、また少し冒険が楽になりそうじゃ」


 こうして三人は、再びサンラグ鉱山への道を歩き出すのだった。

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