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見下され婚約破棄された妹ですが、本気を出してみました  作者: 高取和生@コミック1巻発売中


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5/8

親心

 エメリアが脚光を浴びるようになった一方、彼女の生家、グランシュタイン侯爵家は重く沈んでいた。

 執務室では侯爵家当主のハワードが、書類の上で手を組んで、思いを巡らせている。


 眼下の書類は、長女のセシリアが婚約した、バルツァー家から届いたものだ。

 新規事業への資金提供依頼ということだが、単なる借金のお願いである。

 公爵家の資産が目減りしているのはハワード侯爵も知っている。

 しかし。

 早晩、セシリアの婿として、迎えなければならない。


「セシリアの、婿か……」


 ハワードはため息をつく。

 そもそも長女のセシリアは、美貌を武器に高位貴族に嫁がせる予定でいた。

 セシリアに、グランシュタイン侯爵家の切り盛りは出来ないだろう。

 というか、そんな無理なことを、させたくなかった。


 代わりに小賢しい妹の方に、領地経営を任せようと思っていた。

 子爵あたりの次男三男でも宛がえば、エメリアには分相応なはずだ。

 だからなるべくエメリアは家に閉じ込めるようにして、ハワードの仕事を覚えさせた。


 ところが。

 ハワードの父、先代侯爵が、エメリアを妙に可愛がった。


 ――俺には、あんなに優しくなかった!


 先代侯爵はエメリアの知性を誉め、侯爵家を継ぐのならと、公爵家との縁を勝手に結んでしまった。

 ハワードは内心憤った。

 公爵家なら、セシリアの方が相応しい。

 なんなら、王家との縁だって望める容姿なのだ。


 知性がなんだ。

 貴族の女は跡継ぎを産み、社交界で輝くことが仕事だ。

 一つでも家格の高い縁を結ぶには、際立った美貌が何より武器なのに。

 なんでエメリアが、文官とか王太子補佐官なんかに……。


 ハワードの執務室をノックする音が聞こえた。

 この時間で来るとしたら、家令か妻だろう。


「入れ」


 目を腫らした妻のマリアンが飛び込んで来た。髪は乱れ、化粧も崩れている。

 面倒くさいと思いながら、ハワードはマリアンを座らせる。


「あなた!」

「どうした……」


 ぐすぐす鼻をすすりながら、マリアンは訴える。


「酷いわ酷いわ。みんな……」


 最近、マリアンがお茶会に行くと、クスクス笑われる。

 あるいは「エメリア様のお話を聞かせて欲しい」と言われる。


「しょうがないだろう……。王太子殿下がエメリアを、過剰に持ち上げたのだから」

「それだけじゃないわ。レナード様が、エメリアじゃなくてセシリアを選んだことだって」


 ぴくりとハワードの頬が動く。


「それが何だって?」

「金塊を捨てて、土塊を拾った馬鹿、だって」


 ドンと大きな音を立て、ハワードは机を叩く。


「どこの誰だ! 公爵家と我が家から、抗議をする!」

「そんな大きな声出さないでよ! 『みんな』なのよ! 私もう、お茶会に行けない」


 ハワードの価値観が一瞬揺らいだ。


「旦那様」


 いつの間にか家令が室内にいた。


「な、なんだ、いきなり」

「大きな音がしましたので、様子を伺いに。……それと」


 家令は冷静な声で言う。


「前ご当主様が、明日いらっしゃると先触れがありましたので」


 ――父が、来る?


 ハワードの顔が翳った。



 ◇◇



 王宮でエメリアは、相変わらず多忙な日々を過ごしていた。

 評価が上がれば、一層仕事の量が増える。

 だがむしろ、エメリアにとっては望ましい状況だった。


 王都に吹く風が冷たくなった頃。

 エメリアは王宮内の庭園に呼び出された。

 呼び出したのはアルノルトである。

 庭園は、薄紫色の秋の花が揺れていた。


「忙しい君をこんな処まで呼び出して、すまない」

「いえ。こちらの庭園に入るのは初めてです。素敵な場所ですね」


 アルノルトは柔らかい表情で語る。


「秋に咲く花を、君に見せたかった。薔薇ほどの華やかさはないが、私はこの花々が好きでね」


「まあ、本当に綺麗ですね。なんというか、凛とした色味で」


「似ている、と思ったんだ。君が」

「え?」


「凛とした花であり、見る人を安心させる。この花の姿は、エメリア、君に似ていると」


 エメリアは、上手く返答できずに立ちすくむ。きっと頬は朱に染まっているだろう。

 心臓は思い切り跳ねて煩いほどだ。


「花の名はジェンチアナ。この国の、王妃の紋章に使われている」


 アルノルトの瞳には、季節外れの熱がこもっていた。

 エメリアの手を、彼はそっと握る。


「私の妃に、なって欲しい」

Q:こういう父親、いるんですか?

A:あはは、体験談っす。リアルでしょ?


お読みくださいまして、ありがとうございます!!

クライマックス間近、と思います~~

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― 新着の感想 ―
Σ あとがきー!! って、ちと方向性は違いますが、うちの父、若い頃は言ってなかったのに、家を継げとか婿をとって子供産めとか、今更どう考えても不可能なことを言い出し…\(^o^)/ そんなの前世紀の遺…
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