表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
見下され婚約破棄された妹ですが、本気を出してみました  作者: 高取和生@コミック1巻発売中


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/8

祝宴

 王太子直属になったエメリアの日々は、想像を遥かに超える多忙なものとなった。


 資料作成や会議の調整、諸侯との交渉文書の草案に加え、他国との同盟条約の確認まで、業務は膨大である。

 それに加え、王太子アルノルトは、エメリアとの直接対話を求めてくる。

 アルノルトの関心は、平民の生活向上と教育だった。


「それで、わざわざ孤児院まで、足を運ばれたのですね」


 ふわり微笑むエメリアの言葉に、アルノルトの顔が薄く染まる。

 それを見たガウスは、意味深に言う。


「まあ、そうなんだけど、それだけではなかったりしてね、殿下」

「ガウス!」


「え?」


 キョトンとするエメリアには見えない角度で、アルノルトはガウスの横腹を肘打ちした。

 軽く咳払いをして、アルノルトはエメリアを見る。


「以前から気になっていた。だが、国の予算には限りがある」

「はい。国防費と外交費だけで、予算の四割、それに治水管理や農地支援を加えると、余剰は……」


 パラパラ資料を捲りながら、エメリアは答える。


「そう。だから孤児院の修繕は後回し、貴族学校はともかく、平民の教育機会がない状態が、続いているのだ」

 アルノルトの眉間に皺がよる。


「予算の問題、だけでしょうか?」

「いや、人材も含めてだ。例えば平民に教育の機会を与えるにしても、貴族学校の教諭ほど、給金は出せない。そうなると、低額でも良いという人を探すか、奉仕を募るか。どちらも行き詰っている」


「なるほど」


 真剣な眼差しのエメリアに、ガウスは訊く。


「飛び級で卒業したエメリア嬢は、よほど優秀な家庭教師がいたのでしょうね」


「いえ。……もともと、私は貴族学校への入学もダメだと言われておりまして」

「ええ? なんで?」

「あ、姉に、お金がかかるもので……」

「ああ……」


 アルノルトとガウスは納得する。


「でも、一年だけで良いからとお願いして、なんとか許されました。基礎的な内容は、祖父から手ほどきを受けていたので……あっ!」


 エメリアの瞳がきらりと光る。


「そうだわ。こんな方法は如何でしょう」


 何気ない雑談から始まった、教育改革への着手は、この日から二か月後のことである。



 ◇◇



 王太子の打ち出した政策が認められ、「形」になった。

 今日はその竣工式と祝宴が開催される。


 人手も予算も足りない状況で、いかに教育の底上げをしていくか。

 エメリアが提案したのは、次のようなことである。

 すなわち、退職した文官経験者などの活用と、商人への協力依頼である。


「要は、暇こいてる爺さんのケツを叩く、ということですね」

「ガウス、言い方!」


 エメリアは笑いながら言った。


「そういうことです。ついでに、儲けだけを考える商人に、多少なりとも社会貢献をしていただかないと」 


「言うようになったね、エメリア嬢」

「おかげさまで」


 文官経験者の賛同者に、孤児を含む平民の子どもたちの基礎教育を行ってもらう。

 一回請け負う度に、王太子印を押す。

 印が十回押されたら、提携している商店で、好きな物一点を無料で買える。

 提携した商店には、王太子御用達の旗を掲げることを許可する。

 基礎教育が終わった後、有望な子どもは、提携商店で働くことが出来るようになる。


「王太子御用達なんて、喜ぶ商店あるのか?」

「はい。民人は皆、王族の方への敬意と憧憬を持っていますので」


 確信を持って答えるエメリアに、アルノルトはつい、こんな質問をしてしまう。


「それは、君も、か?」

「も、勿論です」


 アルノルトとエメリアのやり取りを聞き、ガウスは肩をすくめて見ていないふりをした。


 関係各所の許諾を得るために、エメリアは何種類もの書類を作成し、走り廻った。


「働き過ぎだ」

 何度かアルノルトに残業を止められた。

「もう少しだけ」

 仕方ない風を装って、エメリアの残業に付き合うアルノルトだった。


 教育を施す場所は、寂れて使用していない離宮と決まった。

 そして離宮の修繕が終わり、ようやく開校の運びとなったのだ。


 ◇◇


 竣工式後、祝宴となった。

 壇上から、王太子アルノルトが挨拶する。


「この成果の大部分は、私の補佐官である、エメリア・グランシュタイン嬢のものと言えよう! エメリア嬢、こちらへ」


 会場は一瞬静かになり、すぐにざわめき始める。

 エメリアの名を知る者は驚き、知らない者は戸惑う。


 戸惑う者たちの中に、エメリアの姉セシリアと、元の婚約者レナードの姿があった。

 いつもの如く派手な衣装で現れたセシリアは、『地味な妹』が王太子に名を呼ばれ、壇上に上がる姿に言葉を失う。

 レナードの顔色も悪い。以前レナードの父が『宝石を捨て石ころを拾った』と言ったのは、まさか、この事なのか……。


「どうして……どうしてエメリアが? 補佐官て何? 王太子殿下の?」


 慌ててセシリアは、会場にいるはずの父、グランシュタイン侯爵を目で探す。

 だが、王太子がエメリアを紹介した時点で、グランシュタイン侯爵夫妻は退席していた。


 セシリアは歯噛みしながら、優雅に微笑む、地味なはずの妹の晴れ姿を眺めた。

Q:王太子印なんて、ぽこぽこ押して大丈夫なのか?

A:認印レベルとお考え下さい

Q:異世界に認印あるのか?

A:なんなら、朱肉のいらないハンコもありますよ、多分……


お読みくださいまして、ありがとうございます!!

評価、ブクマ、感想、レビュー、心より感謝申し上げます!!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
お労しや姉上( ˘ω˘ )
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ