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見下され婚約破棄された妹ですが、本気を出してみました  作者: 高取和生@コミック1巻発売中


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3/8

再生

 王太子殿下に声をかけられた瞬間、エメリアの脳内に警鐘が鳴った。

 研修が終了し、王宮の政務庁に勤務してまだ三か月程度だ。

 本来、王太子と直に接する機会など、ないはずである。


「楽にして欲しい。私は、新しく採用された文官全員の声を、直接聞きたいと思っているだけだから」


 アルノルト王太子は、気品ある青年だった。

 年齢は姉と同じだったろうか。

 背は高く、琥珀色の瞳は鋭さを帯び、口調は丁寧である。

 王家の血を引く者としての威厳を持ちつつも、他人を見下すような眼差しではない。


「君の報告書に興味を持った。我が国の教育改革についての提言だ」

「提言というと、孤児院の研修後に、提出したものでしょうか。王太子殿下は、それをご覧に?」

「当然だ。私自身、関心のある分野だったものでね。君の案は具体的であり、改革に伴う経済的基盤の設定も、非常に現実的だ」


 エメリアの心は小さく震えた。

 孤児院の環境改善に関して、彼女は大変気になっていた。

 いくばくかの寄付や、輪番制の様な、貴族子女の奉仕では、到底子どもたちを守りきることは出来ないと、以前から感じていたのだ。


 経験値の少ない新人の書いた報告書など、誰も顧みることはないだろうと書き上げたものであった。


 それを、受け止めてくれた人がいた。

 王国の頂点にいる人物が、読んでいてくれた。


「政務庁補佐官として、私の直属の部下になってみないか?」

「!」


 エメリアは卒倒しそうになる。

 だが、アルノルトは極めて自然に告げた。


「もちろん、すぐにとは言わない。君の意志を尊重する。だが……。『王国のために役立ちたい。役立つ自分でありたい』と思う人材を、私は必要としている」


 思わずエメリアは顔を上げる。

 そのセリフは、あまり口にしたことがない。

 言った記憶があるのは、あの孤児院で……。


「こうすれば、分かってもらえるだろうか」


 悪戯っ子のような笑顔で、アルノルトはポケットから眼鏡を取り出した。

 その姿は、奉仕として来ていた、あの時の地味な青年……。


「そっ、その節は、失礼いたしました」


 慌てて頭を下げるエメリアの姿を、アルノルトは目を細めながら見つめた。



◇◇


 アルノルトは自身の執務室で、エメリアとのやり取りを想い出していた。


「受けて、くれるだろうか……」


「エメリア嬢ですか?」

「え、ああ……」


 執務机の向こう側に座っている、秘書兼護衛のガウスが笑っている。

 頭の中で思っていただけなのに、言葉に出てしまっていたようだ。


「良かった良かった。生真面目過ぎて、いまだ婚約者も決めてない王太子が、ようやく女性に執心するようになって」

「しゅ、執心なんかじゃないぞ」


 ガウスはへらへら笑う。アルノルトとガウスは幼馴染の関係なので、成長した今も、気安い間柄だ。


「有名だったけどね。華やかな姉のセシリア嬢と、その影に隠れていた知性派の妹エメリア嬢って」

「へえ……」


「姉の方は年中パーティに参加して、妹は飛び級であっさり貴族学校卒業し、ほとんど社交界に出て来ない」

「そうか、だから……」


「そんな知性派の妹を捨て、姉と婚約した、アホなバルツァーの息子」

「何それ。勿体ない!」


「まあ、それでエメリア嬢は文官を目指すことにしたそうだから、良かったんじゃないの? アルノルト殿下」

「そりゃあ、優秀な人材を確保出来たからな……そうか、そんな過去が」


 少し顔を赤くしたアルノルトを見て、ガウスは思った。

――結構、本気みたいだな……


 そもそも、新人文官の研修なんてものに、王太子が自ら足を運ぶことはない。

 大方、文官試験最優秀合格者の実力を、見極めようと行ったのだろうが。

 一目惚れでもしたのか。次代の王は。


――まあそれならそれで。密やかに護衛しなければならない上に、変装の小物まで用意してあげた俺って、偉い偉い!


 何やらぶつぶつ言いながら、頷いている護衛ガウスを、訝しそうに見るアルノルトだった。



◇◇

 


 エメリアは悩んだ末、アルノルトの申し出を受けることにした。 

 婚約者に裏切られ、侯爵家を追い出された自分が、王太子直属の政務官になるとは。

 その重みを考えると、指先が震える。

 恐れ多い。怯みそうになる。


 だが、誓ったのだ。影の衣は脱ぎ捨てると。

 前に進むのだ。過去は振り返らずに。


 残務を片付け、部署の同僚たちに残念がられながら、一か月後。

 エメリアは王太子補佐官として、王政の中枢部へ足を踏み入れた。


Q:なんか、必ず、おちゃらけたキャラ出ますね

A:気のせいです

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― 新着の感想 ―
おちゃらけたキャラはなんぼおってもええですからね( ˘ω˘ )
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