喜劇 おまけ2
伊丹、青崎、友成の三人が喋っているだけの台本形式の小話です。
ちょっとした箸休め的に公開してみました。
楽しんでいただけたら幸いです。
伊丹「雲雀、車の免許持っとる?」
青崎「持ってないな。お前、大学の時取っとったよな」
伊丹「うん。最後に乗ったん教習所やけどな」
青崎「東京で運転するんか?」
伊丹「友成が車運転できるやん? 横に乗る時スペアで俺が運転できたらええよなぁ……って思ったんや。もっかい教習受けなあかんけど」
青崎「ええんちゃう。たまには友成のカバーしてやるんも」
伊丹「せやんなぁ。ちょっと調べてみようかな」
*
友成「車の運転ですか? 僕が教えましょうか」
伊丹「ええの?!」
友成「もちろん。横に乗ってお教えしますよ」
伊丹「でもこれ、事務所の車と違うん?」
友成「あ、こっちは僕のです。事務所のクルマと同じ型の車にしたので」
伊丹「ええええ?! なんで?!」
友成「あんまり僕自身車にこだわりないのと、乗り心地が良かったからですね」
青崎(ベンツやぞ……流石老舗旅館の一人息子)
*
友成「趣味は車の洗車です」
青崎「へぇ、そうなんや」
友成「というか、なにかを磨くのが好きなんですよね」
伊丹「なんかわかる。ピカピカになると達成感あるんよな」
友成「子供の頃は勾玉づくりにハマって……ひたすら地道に石磨いてました」
青崎「ほんで今はお笑い芸人の原石磨いてるって?」
伊丹「お、上手いこと言うやないか」
友成「なにかが仕上がっていく過程を見るのが好きなので、そういう意味ではマネージャーは僕の天職ですね」
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伊丹「青崎〜〜運転する時一緒に乗ってくれ」
青崎「嫌ですね」
伊丹「敬語で断られた! 友成は横に乗ってくれるって言うたのに」
青崎「だって俺車の運転でけへんし。乗っても役に立たんぞ」
伊丹「そこはさぁ、コンビの相棒なんやから一緒に行くで!って言うてくれよ……」
友成「あ、それなら動画にしましょう。伊丹さんが車の運転に挑戦する企画で」
青崎「……!! 退路を断たれた」
友成「良いリアクション期待してますよ、お二人とも」
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伊丹「いきなりベンツはちょっと緊張するよなぁ……」
青崎「横幅もデカいしなぁ。普通の車でもぶつけかねんのに」
友成「そんなに心配しなくて大丈夫ですよ。ブレーキとアクセルさえ覚えてれば何とかなります。……何とかします」
伊丹「んぐ……友成のコーチ、怖そうや……」
青崎「師匠も、「友成は親切やが優しくない」って一番最初に言うてたからなぁ」
伊丹「俺、ついていけるかなぁ……」
青崎「ほんでも運転できるようになりたいんやろ。きばれや伊丹」
伊丹「……せやな! レインボーブリッジ走ってみたいしな!」
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~動画編~
青崎「青崎です。……伊丹が車運転するって言うから後部座席に乗せられてます。……非常に嫌です」
伊丹「ほんまに嫌そうや」
友成「助手席はマネージャーの友成です。よろしくお願いします」
伊丹「車の持ち主でもあります。この車でポカしたら俺が友成に〆られます」
友成「そんなことしませんよ。伊丹さんなら大丈夫だと信じています」
伊丹「友成……!」
青崎「いや、友成が信じてるのは自分の舵取りの能力やと思うで」
友成「安全運転で行きましょうね、伊丹さん」
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友成「目的地が見えてきました。少しずつ速度落としましょう。ここでウインカー下に。はい。そのままゆっくり手前で停車。」
伊丹「……は、はい」
青崎「……はー、緊張した」
友成「はい、お疲れ様でした。上手だったと思いますよ。予習してきました?」
伊丹「それなりにやったけど……それより友成のナビゲートが完璧やった」
青崎「文句のつけようもなかったな。やっぱり運転上手いだけあるわ。友成の運転やったら寝れるもん」
伊丹「神経質な青崎が寝れるんやから、心地ええんやろな。俺がその域に行けるまではだいぶかかりそうやけど……」
友成「え? 大丈夫ですよ。すぐできるようになります。2〜30時間練習すれば」
伊丹「2〜30時間?! この緊張感で!?」
青崎「……伊丹の寿命縮むな」
友成「人乗せて走ってるんですから、多少疲れますよね。ここからは運転代わりましょうか」
伊丹「……たのんます」
青崎「教習所顔負けの指導してまだ走れるんか……自分のベンツを笑いのために貸し出した男はやっぱり違うな」
*
伊丹「レインボーブリッジも観たいけど……いつか大阪も走れたらいいよなぁ」
青崎「……そやな。皆でどっか行くのも楽しそうや」
伊丹「今年乗れるようになったら万博行けたのになー! まだ人乗せるのはちょっと不安や」
青崎「……俺は人多いとこあんま好きちゃうから」
伊丹「はは、そやな。まだ俺らには早いか」
友成「……というか、大阪での運転が大分早いです」
伊丹「え?」
友成「あの複雑な道路と運転マナーの荒さを考えると、お勧めできかねます。もう4〜50時間練習すれば……」
伊丹「増えてる! 練習時間増えることあんの?!」
青崎「まぁ……気長にやってけや」