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約束事が増えました


 話し合いなんだけど、途中からは大人たちだけで続けられた。


 難しい話だから、私は自分の部屋に戻るよう言われたの。勿論、聖獣様と一緒にね。私は聖獣様を抱いたままベッドに腰を下ろす。


『元気ないね、ユーリア。出発が早過ぎて驚いた?』


「うん……三日後って早過ぎるよ」


(せめて、十日は欲しかった。それでも短いよね)


 自然と、答える声は沈んだものになる。神官様たちが王都に戻るのに、私も同行させてもらう事になったの。


 それが三日後――


 両親が、もう少し延ばせないかって必死に頼んでいたけど、無理だって言われたよ。


 本当は明日、王都に戻る予定だったのを延ばしたんだって。そう言われたら、両親も私も何も言えなかった。もう一人の神官様が、その準備と私の報告に追われてると言われたら、尚更言い難いよね。残念なのは、弟か妹の顔が見れない事かな。


 やるべき事は沢山(たくさん)あるよ。取り敢えず、出発までに、持って行く荷物をまとめないと。サーナにはお別れの挨拶しとかなきゃね。リナリーにはしないよ。


『正直、今でもギリギリだからね。学園の入学式は二か月後だけど、ユーリアの体力を考えると、王都までの移動に三週間掛かるとみたほうがいい。それに、入学までに最低限のマナーと基礎知識は頭に入れとかないといけないし、色々準備するものもあるから大変だよ。制服も既製品じゃないからね、その準備期間も考えると、ほんと時間がないよ』


 そこまで言われると、納得するしかないよね。()(まま)は言えないよ。


 聖獣様が言うように、ポーラット王立魔法学園の大半は貴族様が学んでるからね、平民出身とはいえ、最低限のマナーは必要だと思う。平和な学園生活をおくるためにね。


 平民だっていうだけで、風当たりは相当強いでしょうね。なら、出来るだけ自分の身は自分で護らないと。全部、聖獣様に護ってもらうのは違う気がするから。それに、ずっと一緒に居たいから、甘えるのは程々にしないと駄目だよね。


「立派な聖女になるって約束したから、頑張るよ。疲れたら、モフモフさせてね」


 モフモフはどんな万能薬よりも、私を元気にしてくれるからね。


『ユーリアならいつでも大歓迎だよ。今からモフモフする?』


 すっごく心()かれるお誘い。でもその前に、ちゃんとお礼を言わなくてはいけないよね。私はベッドの上で正座して背筋を伸ばす。


「聖獣様、色々ありがとうございます。結界の事もだけど、お父さんに、本当の理由を(さと)られないようにしてくれて助かりました」


 聖獣様が、神官様に良いように誤魔化(ごまか)してくれたから、家族を傷付けなくて済んだ。安心をくれた。


『僕はたいした事はしてないよ。でも、ユーリアの気持ちはしっかりと受け取ったよ。本当に、ユーリアは良い子だよね。お礼が言えるなんて……どうしたの? 僕、何かおかしな事言った?』


 あまりにも間抜けな顔をしていたからかな、首を傾げながら聖獣様が()いてきた。


「おかしな事なんて言ってないよ。ただ、私に甘いなって思っただけ。当たり前の事をしただけで褒められたから、ちょっと吃驚(びっくり)したの」


 聖獣様の白いフワフワな頭を撫でながら、私は答えた。撫でやすいように、横に耳をペタンとしてくれてる。可愛過ぎるわ。


『ありがとう、ごめんなさいが言えるのって、褒められる事だよ。中には、忘れてしまって、それが出来なくなった大人も大勢いるからね。それは、子供たちも同じでしょ。ユーリアはそんな大人にならないでね』


(嫌な思いをした事があるのかな……)


 聖獣様の声が、とても悲しそうだったから気になった。でも、訊けなかった。その代わりに、私は聖獣様に告げた。


「分かった、約束するね。そんな人にはならないから。絶対、聖獣様を悲しませたりしないから、安心してね」


(また、約束事が増えたね)


 だけどそれは、幸せになるための約束事。


 私自身、そんな人苦手だから、絶対守るね。


 


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