強制送還されました
「な、何を考えているんですか、貴方は!!」
ライド様がマジ切れしている。そして、教皇様の胸倉を締め上げ怒鳴っていた。
(いいのかな……一応、ライド様の直属の上司よね。大神殿の最高責任者なのに。飛び火されたくないから、間に入るつもりはないよ。ないけど、そろそろ静かにしないと、古竜様達とハクアの我慢が限界みたい。気付いてる? 気付いてないよね……しょうがない、物理的に雷が落ちる前に止めないと)
「二人共、いい加減にして下さい!! 丸焦げになりたいんですか!?」
お腹に力を入れて叫んだよ。そしたら、ピタッと二人が止まった。慌てて、両膝を砂浜に付き頭を垂れた。
「何故、お前がここにいる?」
黒竜王様の低い声が浜辺に響いた。ほぼ同時に、快晴だった空にどんよりとした厚い雲が広がる。遠くで鳴る、雷の音が聞こえた。
「も、申し訳ありません!! 一度、この目で御方が住む場所を見たかったのです!!」
額に砂を付けながら懇願する教皇様の気持ち、少し分かる気がする。
(詳細に報告してるから、どうしても行きたくなるよね。見たくなるよね)
特に教皇様は、古竜様達やハクアの事、とっても好きだからね。いや、好きのレベル遥かに越えてるわ。自分の全てだって豪語してるし。なのに、自分だけ見れてないなら尚更よね。
そんな事を考えていたら、古竜様達とハクアが何とも言えない顔をした。
「……俺達の住処、観光地じゃないんだけど」
赤竜王様も不快そうに言う。
(まぁ、そう思うよね。両方の気持ちが分かるから、どっちも味方出来ないわ)
傍観していると、ハクアが参戦してきた。
『なんなら、即退場させようか? 代わりに、下僕を呼ぶよ』
凍えた目と抑揚のない声で、ハクアが激怒していると分かる。教皇様は全身から冷や汗を吹き出して、小刻みに震えていた。
「ハクア、口悪よ、可哀想だから程々にしてあげて。何なら、ジュリアス様を呼んで、今回は全員で出発するのはどう?」
私の妥協案に、教皇様の顔がパッと明るくなる。
「駄目だ。青竜の所まで行くのに、かなりの時間が掛かる。下手したら、泊まり掛けになるやもしれん。長時間、あれが不在だと不都合が出るのではないか?」
(そんなに掛かるの? なら、仕方ないよね)
教皇様って、朝と夕方の二度、祈りを捧げないといけない。さすがに不在は不味いわ。無理矢理留守番させられてるジュリアス様も、言い訳に頭を悩ましてそう。
「決まりましたね。さぁ、さっさと帰って仕事をして下さい。祈りの仕事の他に、事務仕事溜まってますよね」
すっごく良い笑顔だわ、ライド様。それにしても、容赦ないな。
教皇様とライド様のやり取りを、乾いた笑みを浮かべながら見ていると、教皇様の足下が光り出した。光りが消えると、激怒顔のジュリアス様が立っていた。
教皇様、強制送還されました。
ジュリアス様は私達に視線を向けると、直ぐに状況を把握したのか、両膝を砂浜に付け頭を垂れる。ハクアがゆっくりとジュリアス様に近付き、低い声で言った。
『ジュリアス、手間を掛けさせるな』
特に悪い事していないのに怒られてる。
(教皇様もライド様ではなく、ジュリアス様を身代わりに残したのを見ると、結構確信犯だったのかもしれないわね。それにしても、巻き込まれただけなのに、ハクアに睨まれて災難だわ。でもこれで、出発出来るよ)
「じゃ、皆揃ったし、そろそろ出発しようか」
私がそう呼び掛けると、ジュリアス様は立ち上がり、ライド様と一緒に私の隣に立つ。古竜様達とハクアは、それぞれ、私の身体に器用にへばり付いている。当然、強化魔法も掛けてもらってるよ。
(やっぱり、この面子がしっくり来るね)
「では、気を取り直して、いざ、水底庭園へ!!」




