我儘王女
目の前に並ぶのは、見たことがない程の豪華な料理の数々だった。
(王族凄っ!!)
いつも、こんな食事食べてるのね……目が点になったよ。教皇様と食事をした時も、こんな豪華なものじゃなかった。それでも、私にとっては一番豪華な食事だったんだけどね。今日、更新されたよ。
(この料理が、園で出されたものなら、普通に楽しめたのに……)
同席する面々を見たら、全然楽しめない。っていうか、味が全然しないよ。気疲れしたから、今直ぐベッドにダイブしたい。
実は……王太子殿下が退席してからが、大変だった。私もセシリアもお風呂に放り込まれて、何着もドレス着せられて、完全に着せ替え人形状態。
セシリアは早々に服が決まって、一人くつろいでいた。それはまぁいいとして、何でセシリアは男物なの? そりゃあ似合うけど、絵本や小説から出て来た王子様みたいだけど。何かズルいよね。
ドレスが決まったら、座らされて髪までセットされた。知らないうちに人数増えていたし。その中で、一番綺羅びやか女性がいたんだけど、その人を王女殿下がお母様と呼んでいたから、彼女が王妃殿下だったんだよね。
今、私に向かって小さく手を降ってるし。それ、答えてもいいのかな?
悩んでいるうちに、国王陛下が告げる。
「さぁ、さぁ、マナーなんて気にせずに食事を楽しんでほしい」
「……あ、ありがとうございます。食事に招いて頂き、とても光栄に思います」
御礼を言うタイミングって、これであってるよね。カーテシーをした時は話す許可が出ていなかったから、しなかったけど……あ〜頭がグルグルしてきたよ。
「大丈夫、合っているから」
隣に座るセシリアが、小さな声で耳打ちしてくれた。そして、セシリアも落ち着いた様子で、国王陛下に感謝の言葉を述べている。
「そんなに、硬くならなくていい。我が、ユーリア嬢とセシリア嬢を食事に呼んだのは、エレーナの親としてだ。我の娘を助けてくれて、心から感謝する。これからも、我の娘と仲良くしてほしい」
(えっ、私が先に呼ばれた?》
普通なら、男爵家の令嬢であるセシリアが先に呼ばれるはず。もしかして、私が姫聖女だって事を知ってるの? 姫聖女のことも、古竜様のことも、教皇様は教えていないと聞いていたけど……
(あれ? 誰も疑問を持ってない?)
皆、当然のようにスルーしてる。国王陛下が間違うわけないし……戸惑っているうちに、話がどんどん進んで行く。私もスルーしとこう。
「ありがとう、ユーリアちゃん」
王妃殿下はちゃん呼び。こっちの方が断然マシだよ。私的には、嬢呼びは肩がこるから苦手なんだよね。
「いえ、私の方こそ、第一王女殿下様に支えられ、助けられました。御礼を言われることは、何もしておりません」
実際、そうだからね。
王女殿下が、平民で下級生でもある私の言葉に耳を傾け、真剣に話を聞いてくれたから、混乱せずに乗り越えることが出来た。個人の力じゃなく、皆の力のおかげだと思ってる。
それに――
そもそも、オリエンテーションが無茶苦茶になったのは、間接的とはいえ、私のせいだからね。理由は到底、ここでは言えない。その原因が、今、私の影の中にいるんだけどね……世界の災厄と呼ばれているSSランクの魔物も、護衛として一緒にいるし。
(絶対に言えないわ……)
そんな事を考えていると、国王陛下が目頭を押さえている。
「エレーナが人を支えるとは……」
(えっ!? そんなに感動すること!?)
「ユーリア嬢が現れるまで、エレーナは我儘王女って言われていたからね。王宮での授業も直ぐに抜け出すし、サボるし、感情的だったからね」
不思議に思っていると、王太子殿下が苦笑しながら教えてくれた。王女殿下は不貞腐れて、そっぽを向いている。
私は話を聞いて首を傾げた。
「ユーリア嬢?」
私の反応に、王太子殿下は訝しげに私の名前を呼ぶ。
「第一王女殿下は気は強いですが、我儘ではありません。もし我儘なら、平民の一下級生の話に耳を傾けたりはしません。宰相様と同じように物事を公平に見て判断し、決して色眼鏡で見ることはしません。それに、自分に非があれば、躊躇せず謝れる人です。あと……王宮の授業を抜け出すと仰っていましたが、第一王女殿下は博識で聡明な方です。ローベル侯爵令嬢様は第一王女殿下は本を読まないと仰っていましたが、本当にそうでしょうか?」
話しているとよく分かる。沢山の本を読んで、すっごく勉強したんだって。レイティア様も、家族も分からなかったみたいだけど……それが、腹立たしい。
私の訴えを聞いて、セシリア以外、皆王女殿下に視線を一斉に向けた。向けられた王女殿下は、顔を真っ赤にして、餌を待つ小魚のように口をパクパクしている。
皆の反応に、また私は首を傾げた。
「話していて気付きませんか、第一王女殿下の知識は、本から得ただけでなく、自分で探求し身に付けたものだと。だから、いざという時に判断が下せるのです。第一王女殿下は、とても真面目で努力家だと思います。確かに、自分が好きな物に過剰に反応してしまうこともありますが――」
更に続けようとしたら、王女殿下が立ち上がって遮った。
「そこまでにしなさい!! ユーリア!!」
またまだ言い足りないのに、強引に王女殿下に止められたよ。そのまま腕を掴まれ、食堂から連れ出された。
廊下を抜けて中庭に出ると、漸く、王女殿下は掴んでいた手を放してくれた。
「ユーリア!! どういうつもりで、あんな事を言ったのよ!?」
王女殿下は真っ赤な顔をして私を怒る。
「だって……誤解されたままで悔しかったから」
少し不貞腐れながら、私は答える。
「悔しいって、自分の事ではないでしょ」
王女殿下は大きな溜め息を吐きながら言った。
「エレーナ王女殿下の一番傍にいて、一番見ていた、家族に、レイティア様に誤解されたままって……辛くはありませんか?」
私の問い掛けに、王女殿下は顔を歪め泣きそうになる。
反論の言葉は返ってこない。
だから、私は続ける。そこに、私たち以外の人がいる事に気付かないで。




