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超ど貧乏なちびっこ平民聖女様は、家族のためにモフモフ聖獣様と一緒に出稼ぎライフを楽しんでます  作者: 井藤 美樹


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お持ち帰りされるみたいです



(今日も良いお天気……ほんと、お茶会には最高の天気だね)


 お菓子も紅茶も美味しいはずなのに、味が全くしない。場が保たなくて乾いた笑みを浮かべたら、王女殿下にギロリと睨まれた。


 根本的な原因は私だけど、このお茶会を異様な雰囲気にしているのは、セシリアと王女殿下だ。まだ、怒りは治まらないみたい。


 そのせいで、天気と反比例して、この空間は雪雲がどんよりと覆い曇ってるよ。更に、木枯らしも吹いてきた。無言の圧だよね。


 さっき睨まれたから、乾いた笑みさえ浮かべられない。時間さえ、ゆっくりと流れてる気すらしてきた。


 さっきから、二人が静かに怒っているせいで、学園の生徒たちが遠巻きに見ては、ヒソヒソと話しながら歩いてる。


(絶対、私が何かしたって思われてるよね。まぁそれは、別にいいんだけど……)


 どうすれば、二人の機嫌が良くなるか分からない。取り敢えず、逃げずに、最後まで二人に付き合うしかないよね。


 そうそう、赤竜王様との契約は、昨日無事に終えたよ。大丈夫と言われていても、バランスを崩して落ちるのは怖かったから、ちょっと情けないけど、往復四つん這いで渡ったよ。


 住処にある赤竜王様の家は、黒竜王様と同様、こじんまりとしていてね、少し懐かしく感じる造りになっていた。木造の家なのに燃えずに建ってる事に、改めて驚いたけどね。


 あとは、マイカさんの事かな。黒竜王様の所にいたマイカさんが赤竜王様の所にいたの。何でも、マイカさんの正体は家の精霊らしくて、黒竜王様の所にいたマイカさんも、赤竜王様の所にいたマイカさんも、記憶を共有した同一個体らしい。双子みたいなものかな? いまいち、よく分かんないけどね。


 黒竜王様の時は、とっても美味しいお菓子をお土産に貰ったけど、今回は貰わなかった。セシリアと王女殿下を誤魔化すのに苦労したからね。でも、すっごく美味しかったよ。


 なんとか、大仕事を終えて帰って来たら、待っていたのは、怒り心頭なセシリアと王女殿下だった。


 それは、一晩明けても変わらなかったようで、更に悪化してた。説明もしないで寮に黙って置いて行き、その後も、追い掛けもしなかったからね。


「……セシリアもエレーナ王女殿下も、そろそろ、怒りを鎮めてくれませんか。どうしても、行かなくてはならない場所があったのです」


「その場所って、何処なの?」


 王女殿下が訊いてきた。昨日はジュリアス様やライド様が傍にいたし、セシリアの事があったから訊けなかった。


「すみません、それは言えません」


 言えるわけない。相手が王女殿下でも。


「セシリアも知らないのでしょ?」


 私が口を割らないから、王女殿下はセシリアに話を振る。攻め方を変えてきたわね。


「知らされていませんよ。私を置いて行った理由も、何処に行っていたのかも。大神殿に行っても、ジュリアス様もライド様も不在で、他の神官たちも一切、行き先を知らない。どんな想いで、ユーリアの帰りを待っていたか。なのに、いつの間にか帰って来てて、呑気に、ジュリアス様とライド様と一緒に晩御飯食べてましたよね」


 セシリアは私を責める。ハクアが身体を起こし、私を見る。視線で止めた。


 どうしようもない理由があったにせよ、セシリアの気持ちを裏切った事実は変わらない。傷付けた事も変わらない。


 昨日、食堂で少し早めの晩御飯を食べていると、セシリアと王女殿下が飛び込んで来たの。慌てて「ごめん」と謝ったけど、許してくれなくて、悔しそうに顔を歪めたセシリアは食堂を飛び出した。傍で見ていた王女殿下が、「ユーリア、セシリア泣いていたわよ」と教えてくれた。飛び出す前のセシリアの表情とそれを告げた王女殿下の顔を思い出すと、今も胸が痛い。


 私もセシリアと王女殿下の後を追おうとしたの。だけど、教皇様の報告がまだだったから、追えなかった。そうこうしているうちに門限が過ぎた。結局、私が寮に戻ったのは翌朝だったの。授業は昼から出た。


 登校してから、セシリアも王女殿下も目を合わしてくれない。隣には座ってくれるんだけどね。もし、隣に座ってくれなかったら、マジで立ち直れなかったよ。


「……ごめんなさい」


 どんなにセシリアに責められても、同じ言葉を繰り返すしかなかった。


「……あ〜もう、ここまで追及しても、教えてくれないなんて、余程の事なのでしょうね。もう、いいですわ。但し、危ない事はしないこと。それと……話せる時が来たら、話してくれたらいいわ。セシリアもそれでいい?」


「…………いいです」


 そう答えたセシリアの声は、とても小さかった。


 やっと、セシリアが目を合わせてくれた。それが嬉しくて、泣きそうになった。私を気遣う王女殿下の気持ちも嬉しかった。


「話せる時が来たら、必ず話します」


 今、私が言えるのはここまで。

 

 セシリアも王女殿下も、私にとって掛け替えのない大切な仲間だから、誠実でありたいと思う。嘘は吐かない。


 でも、真実は話せない。


「……分かりましたわ。では、今週の休みはどうです?」


(ではって、圧が凄いよエレーナ王女殿下。でも、ごめんなさい)


「すみません、エレーナ王女殿下。暫く、休みは大神殿に戻らないといけないので」


 断りづらいけど、断るしかない。古竜様は、あと五柱いらっしゃるからね。休みは契約しに行くと決まっているの。


(あ〜エレーナ王女殿下怒ってる。セシリアもおもしろくない顔してる。普通、怒るよね……)


「分かったわ。なら、今日泊まりに来なさい」


「「えっ!?」」


(なんで、そうなるの!?)


 驚く私とセシリアを無視すると、王女殿下は立ち上がり、有無を言わさないとばかりに告げた。


「セシリアとユーリアの外泊届けは、私の方で提出しておくわ。着替えも用意します。さぁ、行くわよ」


 王女殿下の台詞に、即座に反応する侍女と執事。これ、このままお持ち帰りされるパターン?


(もう、お誘いじゃなくて、命令だよね)


 命令されてるのに、私の口元は緩んでいたの。




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