古竜様たちの恩情
声がする方を見れば、赤い空飛ぶトカゲ、いや、赤い竜が腕を組んで私たちを見下ろしていた。
(なんか、不思議な感じ。でも、カッコよくて可愛い)
それにしても……身体の色が違うだけで、黒竜王様とそっくり。行動もね。場所は違うけど、一週間前にも同じ体験したよ。
「……赤竜王様ですか?」
念のために訊いておく。百パーセント間違いないと思うけどね。
「なかなか、面白い娘だね。今回の竜の愛し子ちゃんは。黒ちゃんと契約済みなのに、この俺を赤いトカゲだって、ショックだよ」
(古竜様たちの一柱なのに、口調が軽っ)
そう言えば、こんな話し方をする人が村にもいたよね。確か……女の人を見れば声掛けてた。
「俺、軽くないからね。そもそも、ここに女の人いないからね」
憤慨しながら、赤竜王様は抗議する。相変わらず、考えている事が筒抜けだよね。
「あっ、それは分かってます」
もう慣れたもので、平然とそう答えたら、ライド様とジュリアス様に腕をガシッと掴まれた。そのまま、数メートル後ろに引き摺られる。
(えっ、何!?)
「ユーリア様、も、もしかして、古竜様たちは、私たちの考えを読む事が出来るのですか!?」
「ユーリア様、赤竜王様をトカゲって、ましてや遊び人だと、失礼過ぎます!!」
ジュリアス様に詰め寄られ、ライド様には怒られた。それにしても、ジュリアス様が焦るの始めて見たよ。
「二人共落ち着いて。まず、ジュリアス様の疑問から答えます。普通に読めますよ。ハクアも読めますし、そんなに驚かなくても。神様なので、特に珍しくないのでは。あとは……村人の中で、話し方が似ていた人がいたので思い浮かべてしまいました」
大の大人二人相手に、しどろもどろになりながらも、なんとか答える。
「……聖獣様も心を読む?」
ジュリアス様が、呆然としながら訊き返して来たので、私は首を傾げながらも教えてあげた。
「読みますよ。もしかして、知らなかったんですか!?」
ジュリアス様の様子から見て、それしかないよね。ほんと、これには驚いたよ。
(私よりも長くハクアと一緒にいた二人が知らないなんて……もしかして、わざと教えなかったの!?)
『別に訊かれてないし、わざわざ教える必要ないよね』
(いや……それって、ほぼ確信犯じゃない)
可愛い姿をして、ハクアって意外と腹黒なんだよね。
『その言い方酷い!! ただ、賢いだけだよ!!』
猛抗議する姿も可愛い。でもこれで、ハクアも考えを読む事が証明されたね。
「自分で言う? でもまぁ、ハクアって賢くて物知りだよね。いつも、私を助けてくれるし。話が逸れましたけど、ジュリアス様、ライド様、ハクアは普段は読まないようしていますが、読めます。それよりもいいのですか? 黒竜王様と赤竜王様の話を中断して。あれ? いない」
気の毒な程、ジュリアス様とライド様の顔から血の気が引く。
(怒って先に行ったのかな?)
そんな事を考えていたら、ジュリアス様とライド様が数歩下がり、片膝を付き頭を垂れた。と同時に、黒竜王様と赤竜王様の声が耳元からした。
「我を無視するな」
「そうだよ。無視されると、俺悲しくなっちゃう」
口調は拗ねたようにしか聞こえないけど、その視線はジュリアス様とライド様に向いている。
(あ〜睨まれてる)
生きた心地してないよね、絶対。二人が可哀想になって来たよ。
「……今回は、俺がここでいいよね」
黒竜王様とハクアに一方的にそう告げると、赤竜王様は私の腕の中にスッポリとおさまった。少しヒンヤリとして、しっとりとくるこの肌触りも格別だね。
「しかたないの」
黒竜王様はそうボヤくと、私の肩に乗った。まるで肩車のように。ハクアもよくこの体勢とるよね。
椅子取りゲームに負けたハクアは、見る見る機嫌が悪くなっている。
(ガラが悪くなってるわ……)
目がすわって舌打ち打ってる。皆の信仰を集める聖獣様なのに、その顔も舌打ちもアウトだよ。
古竜様たちに見下されて、ニヤリと笑われたハクアは、完全にブチッと切れたみたい。背中を登って来た。黒竜王様の足を押して、無理矢理スペースを作って肩にしがみつく。
(さすがに、重たいんだけど……)
「しょうがない。なら、これでどうだ?」
黒竜王様が何かしてくれたようだ。急に、身体が軽くなったよ。
「ユーリアの身体に強化魔法を掛けた。これで、我らを楽に運べるはずだ」
(抱っこのためだけに、強化魔法って)
どうしても、抱っこして欲しいって事だよね。勿論、抱っこさせて頂きます。見掛けによらず、皆甘えただよね。
「そちらの無礼は許そう。我が愛し子が信頼している保護者たちだからな。だが、次はないぞ」
赤竜王様の住処に向かう前、ジュリアス様とライド様は黒竜王様からピシャリと怒られていた。
『ありがとうございます、黒竜王様、赤竜王様』
ハクアに念話が出来るんだったら、黒竜王様たちにも出来るよね。
相手は古竜様。
この世界で偉い神様だからね、怒られるだけで済んだのは、古竜様たちの恩情だよ。最悪、死んでいてもおかしくない。勿論、その事は、ジュリアス様もライド様も気付いているはず。二人の空気が変わったからね。
「こっちだよ、ユーリア」
赤竜王様の道案内で、私たちは赤竜王様の住処に向かう事になった。
(でも、行き先は、火山の火口口だよね……大丈夫かな)
沢山ある小説の中から、この小説を選んで読んで頂き、心からありがとうございます。
来年もまた、頑張って更新していきますので、応援宜しくお願い致します。
まだまだ寒い日が続きますが、風邪やインフルには気を付けて下さいね。
それでは、良いお年を。




