噂は尾鰭が付くものです
お茶会での騒ぎは、それなりの目撃者がいたせいで、あっという間に学園内に広まってしまった。
噂って尾鰭が付くものって相場が決まっているよね。レイティア様も例外じゃなく、次の日から学園に来なくなった。
今まで身分差関係なく、別け隔てなく接する、頼りになる優等生。それが、レイティア様だった。
その優等生が、実は差別意識を持っていたとなったなら……周囲の反応はガラリと変わる。精神的にキツいと思うよ。下手に何か言ったら、更に悪化するに決まってるし。こればかりは、時間が解決するしかないよね。
「……ユーリアは優しいね。ローベル侯爵令嬢様の事が気になってるんでしょ」
相変わらず、王子様件天使様は、私の事をとても気に掛けてくれる。
「気にならないわけないじゃない……セシリアは、まだ怒ってるよね」
完全に配慮に欠けていたよ。それでなくても、王女殿下と王太子殿下、そして未来の宰相様がいて、人気急上昇中のセシリアまでがいたら、目立って当然だよ。皆が皆、なんというか……オーラ的なものが半端ないからね。ましてや、話してる内容が内容だっただけに。声も大きかったし。
「怒ってるに決まってるでしょ。まだ、ローベル侯爵令嬢様は、一度もユーリアに謝罪していないからね」
セシリアの気持ちは嬉しいから、何も言えない。間違った事言ってないしね。
謝罪する気があるなら、会う機会はいくらでもあったし、作る事も出来た。なのに、レイティア様は行動を起こさない。つまり、謝る気がないって、セシリアは受け取ってるの。それは、王女殿下も同じだった。
「私的には、謝罪はいらないんだけど」
「それは駄目。ケジメだよ、ケジメ」
(セシリアの言う事は分かるけど……)
「私、平民だよ」
そもそも、貴族が平民に謝罪する事なんてほぼない。求める事さえ以ての外だからね。
「だから?」
真顔のセシリアにそう訊かれたら、こっちが返答に困る。
(平民を馬鹿にするなって思ってきたけど、私自身が一番平民という身分に囚われてる。レイティア様に、大きな口きけないよ)
「……私って、ほんと自分勝手だよね」
「何処が!?」
セシリアの悪口を言ったわけじゃないのに、そんな不満そうな顔をしないで。
「色んな所。それよりも、早く移動しないと授業遅れちゃうよ」
廊下を走ったら怒られるので、早歩きで教室に向かう。
「待って!!」
セシリアが慌てて追い掛けて来た。
「えっ!? エレーナ王女殿下、私が城にですか……?」
食堂で一緒にランチを食べていると、王女殿下がいきなり切り出してきた。
「そう、遊びに来ない? 連休だし」
ニコニコ顔で誘われているけど、絶対、王女殿下だけで終わらない気がする。王太子殿下が現れそうだし、その上の方々も登場しそう。
(正直、嫌かな……肩凝りそう)
「すみません。誘ってくれたのは嬉しいのですが、その日は大神殿に呼ばれてますので」
断ったよ。誘ってくれた王女殿下には悪いけど。ほんとに、連休に用事があるからね。赤竜王様に会いに行くという大事な用事がね。
「えっ!? そうなの、知らなかった」
セシリアがそんな事を言ったから、私を見る王女の視線が自然と鋭くなる。完全に、嘘だって思われたみたい。
「ジュリアス様とライド様に呼ばれたの」
赤竜王様の拝謁に、ジュリアス様とライド様が同行してくれる事になったの。本当は、教皇様が同行したいって言っていたんだけど、教皇様が動くと目立つという理由で、ハクアに却下された。
その後、あまりにも教皇様が嘆き悲しむから、黒竜王様が人肌脱いでくれた。触らせはしなかったけど、姿を見せてくれたんだよ。何でも、私の許可なく、私の影と自分の家を繋げたみたい。事後報告もいいところだよね。時々、美味しいフルーツティーとお菓子が貰えるけど。
ジュリアス様とライド様の名前が出た途端、王女殿下の目がキラキラと輝いた。
(うん、言いたい事分かるよ)
「そうなんだ。でも、私が知らないなんて……」
セシリアはセシリアで、不服そうな顔をして、小さな声でブツブツ呟いてる。知らないことがあっても、おかしなことなんてないのにね。
そんな事を思いながら、王女殿下が口を開く前に言った。
「駄目です。王女殿下を連れて行く事は出来ませんから。セシリアはその日、休みで。たまには、自分の時間を持った方がいいです」
きっぱりと、王女殿下とセシリアにNOを突き付けたよ。実際、付いて来られたら困るから。何も言わなかったら、絶対付いて来たよね。NOと言っても、付いて来そうな感じがする。超不安だよ。
(何で、セシリアは涙目なの!? 自分の時間大切だよね)
「「…………」」
(二人とも、無言はやめてよ!! 怖いから!!)
そんな中でも腹がすくので、お昼ごはんは完食したよ。ずっごく、美味しかった〜〜




