一週間後のお茶会で
オリエンテーションが終わってから、一週間。学園はなんとか落ち着きを取り戻したよ。色んな人に何度も話を訊かれて、ほんと大変だった。
疲れてる私たちを気遣ってか、放課後、王女殿下がお茶会をしようと誘ってくれたの。レイティア様も誘ったけど、断られた。というか、避けられてる。図書室に行ってもいないんだよね。
王女殿下もセシリアも、レイティア様の事は気にしていない素振りで、美味しそうにお茶を飲んでいる。
「……いったい、誰がなんの目的で、あのオリエンテーションをしたのかしら?」
王女殿下がポツリと呟く。
黒竜王様の件も〈竜の愛し子〉の件も二人は知らない。どこから漏れるか分からないからだって。なので、闇魔法を使う事も禁止された。
最初から使う気ないけど、そりゃあそうなるよね。秘密を知る人が増えれば増えるだけ、リスクは高くなるからね。それに、危険性も増える。
せめて、セシリアだけはと思ったけど、教皇様たちに反対されたよ。だから、この事を知ってるのは、ジュリアス様とライド様、そして教皇様だけ。国王陛下も知らないらしい。色々考えての事だと思う。セシリアがもう少し成長したら、話すかどうか決めるんだって。そこら辺含めて、全て教皇様に丸投げしたよ。
「さぁ……でも、忘れられないオリエンテーションになりました」
下手なことは言えない。誤魔化すことに慣れてないから、ドキドキものだよ。
(違う話題にならないかな。無理だよね……)
「そうよね。朝起きたら、すぐ傍に道があったのだから」
「魔法で隠されていたのか……全員無事でよかったです」
王女殿下の台詞に、セシリアが答えた。
「お父様もお兄様も調べているけど、魔法の痕跡が全くなくて、八方塞がりですって。あまりにも痕跡が見付からないから、夢を見ていた事にされそうだわ」
(そうなるよね。黒竜王様が、そんな凡ミスするわけないし。犯人なんて、一生出て来ないよ)
といっても、私たちが行方不明になったのは事実。大々的な捜索隊が組まれたし、必死で調べるのは当然よね。行方不明になったのが、王女殿下と宰相様の御令嬢、教皇様の庇護下にいる私とセシリアとなれば、必死になるわ。
(どう、決着付けるのかな? まぁ、なんとかするよね、教皇様が)
そんな事を考えながら、私は紅茶を一口飲んだ。
「……私としては、もう二度と、こんな事が起きなければいいと願います」
誤魔化しもない、正直な気持ち。でも、次の連休は、赤竜王様に会いに行かなくちゃいけないんだよね。
「そうね」
「そうですね」
王女殿下とセシリアが私を見る。
絶対、何か気付いているよね。でも、賢い二人だから訊いては来ない。それでも、何も言わずに、こうして一緒にお茶を飲んでくれるんだから、私って幸せ者だよね。ちょっと、胸が痛いけど。
そんな事を思いながら紅茶を飲んで、お菓子を食べていると、招待していない人がやって来た。
「いつの間にか、仲良くなったみたいだね」
そう声を掛けて来たのは王太子殿下だった。
「お兄様!?」
「「王太子殿下!!」」
私とセシリアは立ち上がり、カーテシーをする。
「ここは学園だから、正式な挨拶は不要だよ」
王太子殿下にそう言われて、私とセシリアはカーテシーを解いた。顔を上げると、王太子殿下の後ろに男子生徒が立っているのに気付いた。
険しい表情を隠そうとしていない男子生徒は、私を睨み付けている。
(私、何かした?)
テーブルの上でハクアが威嚇し、さり気なく、セシリアが私を庇うように前に立った。王女殿下も前に出て来て、私を背に庇う。男子生徒が私を睨んだ理由はすぐに分かったよ。
「ローベル侯爵子息様、私の友人を怖がらせないで下さいな」
(ローベル侯爵!? レイティア様のお兄様か!?)
王女殿下の口調は柔らかいけど、完全に喧嘩を買うつもりだ。セシリアも応戦体勢に入ってる。
「セシリアもエレーナ王女殿下も、そんな喧嘩腰にならなくても」
私が王女殿下の名前を口にした時、男子生徒の眉が不愉快そうにピクリと動いた。
「レイティアの次は王女殿下か。上手く誑し込んだものだ。レイティアを利用するだけして、ポイ捨てか、なかなか世渡り上手な娘だな」
返って来た言葉は、あまりにも辛辣なものだった。一瞬、何を言われたか分からない。
(誑し込んだ……誰を? 誰を利用したの……)
「おい!? 何を言っている!?」
王太子殿下が咎る。その声よりも、更に大きな声が響いた。
「撤回しなさい!!」
王女殿下がこめかみに青筋を立てながら、マジ切れしていた。




