表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
超ど貧乏なちびっこ平民聖女様は、家族のためにモフモフ聖獣様と一緒に出稼ぎライフを楽しんでます  作者: 井藤 美樹


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

40/51

オリエンテーション始まりました

〈オリエンテーション編〉始まりました。


 こういう大事な(もよお)しの日って、天気が崩れたことないんだよね。これも皆、神様とハクアのおかげだよね。


 今日はオリエンテーション当日。


 朝から快晴です。


(……でもここは、極寒過ぎて凍えそうです)


 理由は簡単。私とセシリアは、王女殿下とレイティア様と一緒に、学園長による開始の挨拶を聞いていたから。


(どんなに気に食わない相手でも、さすがに、留年は嫌だよね。王族関係なく、恥だもの)


 無事に終われば、それにこした事ないし。どのみち、私はどちら側にも付く気はなかった。それは、セシリアも同じだった。まぁでも、急遽(きゅうきょ)交代した理由は、王女殿下も理解してそう。誰の差し金かもね。それを表には出さないのを見ると、やはり、公爵令嬢とは違うと思った。


 オリエンテーションは、四人一組で、学園内にある実習の森で行われる。


 要所要所に置かれた課題をクリアして先に進む、遊戯みたいなものね。学園内だから、魔物は当然いない。でも、野生動物はいるよ。でも、凶暴なものはいないはず。それに、先生たちが待機してるから、安全面は大丈夫かな。


 オリエンテーションの課題は全部で六つあって、答えごとに進む道が違うみたい。チームワークが試されるやつだよね。


(チームワークね……この組に、それを求めるのは無理だと思う)


 現に、今も意見が割れて収拾つかなくなってるし。騒いでいるのは王女殿下だけど、レイティア様もはなから聞く気がないみたいだし……どっちもどっちだよね。


「私は、こちらの道を進むべきだと思いますわ!!」


(何故、喧嘩腰)


「そうでしょうか? 私は、こちらの道を選びます」


 完全に意見は真っ二つに割れていた。


(第一課題でこれって……)


「言い合ってもらちがあきません。セシリア様、ユーリアさん、貴女はどちらの道を選びますか?」


 レイティア様は私たちに意見を求めた。


 王女殿下は面白くなさそう。まぁ、そうだよね。彼女の中では、自分以外敵だと思ってるから。


「第一課題は、迷子の子供がいて、兵士の詰め所まで連れて行く事になった。近道するか、遠回りになるが大通りを通るかですよね。なら、私は近道ではなく、大通りを通る方を選びます。セシリアは?」


「私も遠回りの方を選びます」


 因みに、これはレイティア様の方を選んだ事になる。別に、レイティア様だからそっちを選んだわけじゃあない。課題を読んで決めたのだけど、納得出来ない人が一人。


「どうして、そっちなの!? レイティアに懐いているから、そっちを選ぶのね!!」


(いや、違うけど)


 レイティア様は呆れたように、溜め息吐いてるわ。冷めた目で王女殿下を一瞥(いちべつ)すると言った。


「三対一で決まりですね。では、行きましょう」


 王女殿下を無視して、そのまま進もうとしている。


(この二人、会話がなさ過ぎる!! それじゃあ、駄目だよ)


「少し待って下さい、レイティア様」


 私が止めた事にレイティア様は吃驚したのか、目を丸くしている。何故か、王女殿下も。


「まず、訂正を。私は、レイティア様の意見だから選んだわけではありません。反対にお訊きしますが、王女殿下は、何故近道を選んだのですか?」


「それは、早く子供を親元に返してあげたいからですわ」


(子供のためか……)


「私も、王女殿下の気持ちに同感です。でも、その近道が安全と断言できますか? もし、人(さら)いに会ったら、子供と一緒に逃げ切れますか? 逃げ切れなければ、子供は一生親元には帰れません。当然、近道を選んだ王女殿下もです。だから、私は遠回りしてでも、危険性が低い、人通りがある道を選びました」


 途中遮る事なく、王女殿下は私の答えを聞いている。王女殿下は人の話を聞ける人だ。


「王都は安全ですわ」


「そうかもしれません。しかし、この課題に場所指定はありません。例え、王都と場所指定していたとしても、私は遠回りを選びます。一度、メルセの街で(さら)われ掛けましたから」


 あの時の恐怖は、一生忘れない。


 用心深くなるのは、自分の身を護るため。以前の私なら、あまり深く考えずに、近道を選んだかもしれない。

 

「攫われかけた!!」


「本当に!!」


「それで、犯人は!?」


 三人に詰め寄られた。近い、近いって。


「犯人は未だに捕まってはいません。配達屋さんにライド様と一緒に行った帰り、はぐれてしまって……大通りに向かって歩いていたら、狭い路地に入り込んでしまって。知らない男に腕を掴まれそうになって、怖くて一目散に逃げ出して、空樽の中に隠れました」


「……よかった、無事で」


 セシリアがギュと私を抱き締める。その背中を、私はポンポンと叩く。これは、暫く離れてくれないわね。


「だから、ライド様が、王都でユーリアさんの手を握っていたのですね」


 レイティア様が言った。私は小さく頷く。


「あの時、恥ずかしがらずに、素直にライド様と手を繋いでいたら、あんな怖い想いをしなかったし、皆を心配させる事もありませんでした」


 そう答えると、レイティア様は王女殿下に視線を向け、静かな声で言った。「これでも、羨ましいですか?」と。


「分かったわよ。行きますよ!! 私に付いてらっしゃい!!」


 私たちが選んだ答えを選び、先頭を歩き出す王女殿下を見て、レイティア様は苦笑している。


「分かった」って声らとても小さかったけど、はっきりと聞こえた。なんか、嬉しくなったよ。


 やっぱり、王女殿下は思い込みが少し激しいだけで、根は悪くない。反対に、とても温かい人だと思った。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ