表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
超ど貧乏なちびっこ平民聖女様は、家族のためにモフモフ聖獣様と一緒に出稼ぎライフを楽しんでます  作者: 井藤 美樹


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

30/51

入学早々ブチギレました


 常識が全て正しいとは思わない。明らかに理不尽だったとしても、それが常識の範疇(はんちゅう)内なら勝てないと思っている。


 おかしな話だけど、非常識には悪いイメージが付き(まと)う。少数派だから。ましてや、私は平民。もはや、諦めてるって感じかな。


(だけどね、腹が立たないわけじゃないの)


 現に私は、今猛烈に、目の前のクラスメートに腹が立っていた。


(確か……公爵令嬢って言ってたわね)


 華やかな入学式もつつがなく終わり、一旦新入生が教室に戻った時に、それは起きたの。目立ちたくないから、一番後ろに座っていたのにね。


「平民が【聖女スキル】を持っているなんて、ありえませんわ!! さぁ、今直ぐ白状なさい!! どんなズルをしたのですか!? 恥じを知りなさい!!」


 わざわざ私が座る席の前に立ち、取り巻きを引き連れてヒステリックに怒鳴るのが、公爵令嬢ね……淑女教育は何処行った? マジ、呆れるわ。他のクラスメートは見て見ぬ振りしてるし。侯爵令嬢はいないわね。


(しょうがないか……彼女が一番高位貴族なんだから、下手に正義感出して、目を付けられたくはないよね、家巻き込みそうだし)


 昨日から似た台詞を聞いていたので、溜め息が吐きたくなった。


 ここまでは我慢出来た。


 言われている内容は、昨日とほぼ変わらないし、言われる覚悟があったから。それに、セシリア様が席を外した途端にいちゃもんを付けて来るなんて、小者だって思ったからね。そんな相手に、感情をぶつけるのが馬鹿らしくて、私は淡々と返したの。


「平民である私に、どんなズルが出来るのですか? そもそも、神官様が自らの手で【鑑定】を行うのですよ、不正など出来るわけないでしょ。それに、過去、平民が【聖女スキル】を得た事は報告されています。それでもお疑いなら、直接、大神殿に問い合わされたらどうですか?」


(あお)ったつもりは、なかったんだけどね……)


 顔色を一切変えず、平然と正論で言い負かしたのが、公爵令嬢の(しゃく)に障ったみたい。顔を真っ赤にして、私を睨み付ける、睨み付ける。取り巻きたちも一緒に。


 彼女たちが、悪い方に抜き出てるわけじゃない。多くの貴族が平民は口答えしないと思っている。私も学園の外ではしない。学園内でも、陰口ぐらいなら訂正しようとは思わなかった。


 でもね、直接言われたら話は違うでしょ。


 ここは学園。私は聖女になるための勉強じゃない、聖女としての基礎を勉強しに来たのだ。その邪魔だけは、誰であろうとも許さない。


 いつの間にか、机に降り立っていたハクアが唸り声を上げ怒っている。威嚇音なのか、空気がバチバチと音を立てた。


『ハクア、抑えて。問題を起こしたくない』


 覚えたての念話でハクアを止めた。止めないと、当てる気はないとはいえ、公爵令嬢に雷を落としそうな勢いだったからね。


『セシリアは何処に行った!!』


『セシリア様に、怒りの矛先を向けないで』


 私がハクアを止めたので、バチバチという音が消えた。すると、(ひる)んでいた公爵令嬢が復活。更に、!難癖なんくせを付けてきた。


「平民風情が、この私を脅そうなど生意気な!! これは教育が必要ね」


(嫌な笑み。ハクアの事はバレてないわね)


「教育が? 自分より年下の子供に対して、大勢で詰め寄るような方に、教えてもらうことなどありませんが」


 冷笑しながら、言ってやる。


「なんですって!!」


(ヤバい、煽りすぎた)


 公爵令嬢は手を上げ、私を殴ろうとしてきた。止める者はいない。ハクアには絶対、手を出さないでってお願いしている。


(これは……殴られるしかないかな)


 内心、溜め息を吐いた時だった。


「ユーリア!!」


 その声と同時に、私は誰かに抱え込まれた。振り下ろされる手。乾いた音。何故か、痛みは襲ってこない。


「…………セシリア様?」


 知っている匂いがした。


「大丈夫、ユーリア? 怪我はない? 痛い所はない? 一人にしてごめんね」


 目を開けると、右頬を赤くしたセシリア様が、私の顔を心配そうに見詰めている。


「……私をかばった…………セシリア様が」


 ポツリと呟いた声が聞こえる。頭の中が真っ白になった。


 まさか、貴族であるセシリア様が、平民をかばうとは考えていなかったのだろう。公爵令嬢は見る見るうちに青くなっていく。でも、自分がこのクラスで一番高位だと思い出したのか、直ぐに復活した。


(身分、それがどうした!!)


 私はセシリア様を抱き締め、立ち上がる。セシリア様の頬に(つたな)いながらも、回復魔法を掛けた。そして、セシリア様に微笑み掛け、彼女の前に立った。

 

「……貴女、セシリア様をぶったわね!! 私の親友をぶったわね|! 私なら何を言われても聞き流してあげるわ。平民である事に間違いはないから。だから、今はいくらでも我慢するつもりでいた。でもね、セシリア様をぶったことは許さない!! 例え、貴女が公爵令嬢だとしても許さない!! 正式に抗議するから、覚えておきなさい!! 平民だからと(さげす)み、意に沿わないからといって手を上げる人間が、聖女になんてなれるわけないわ!! 恥じを知れ!!」


 完全に敬語忘れてたわ。


「……ユーリア」


 この時、完全にキレていた私は、教師が来ていた事に全く気付いていなかった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ