表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
超ど貧乏なちびっこ平民聖女様は、家族のためにモフモフ聖獣様と一緒に出稼ぎライフを楽しんでます  作者: 井藤 美樹


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/51

初給料日です


 今日は待ちに待った初給料日。


 正直、なんの仕事もしていないのに、聖女だからっていう理由で貰っていいのかなって、後ろめたい気持ちもあったんだけど……そこは、気持ちを切り替えて、貰えるものは貰っとかないとね。お母さん働けないし、家族増えるし、収入がガクンと減るけど出ていくお金はグンッと増えるしね。


 家には、生まれて間もない弟がいるんだから。手紙に書いてあったの、名前はユースにしたって。可愛いんだろうな。会いたいけど、今は目の前の事を頑張らないとって思ってたけど、これは……


「…………こんなに、貰ってもいいのですか?」


 ずっしりと重い麻袋を受け取って、私はとても戸惑(とまど)っている。っていうか、固まっていた。


 だって、見た事がない金額だったんだよ。村だったら、四人家族で一年は楽に暮らせる金額なんだから、そりゃあ固まるよ。自然と、麻袋を持つ手がブルブルと震えてきたよ。


 そんな私を、ジュリアス様とハクアはニッコリと微笑みながら見ている。完全に保護者目線だ。


「正当な金額ですよ。といっても、ユーリア様はまだ聖女見習いです。なので、一番低い金額となっております」


(マジで!?)


「えっ!? これで、一番低いんですか!?」


「はい」


「…………」


 言葉が出て来ない、なんか、怖くなってきた。


「ユーリア様?」


『ユーリア、どうかしたの? 疲れたの?』


 黙り込んでしまった私を気遣い、ジュリアス様とハクアが声を掛けてくる。


「……見習いでこれだけ貰えるって事は、聖女様たちは、とても重要な仕事をしているって事ですよね……危険な場所にも派遣されるって聞きました。私に、この金額を貰えるだけの働きが出来るのでしょうか?」


(聖女の責任と重圧が、こんな形で、身にしみて知る事になるとは思わなかったよ)


 今まで、ジュリアス様やライド様から聞いてはいた。勉強もしていた。でもどこか、現実味に欠けていたというか……実感が持てなかった。


「怖くなりましたか?」


 ジュリアス様の問い掛けに、私は小さく頷く。


「それでいいのですよ、ユーリア様。無理に分かろうとしなくていいのです。ただ、その気持ちを忘れないで下さい」


 ジュリアス様の言葉が、温かさと一緒に私の心に浸透していく。


「はい」


「それで、給料は送られるのですか?」


「そうですね、半分は家に送って、残りは手元に。でもこんな大金、持って歩くのは怖いですよね」


(スリや強盗に狙われるのは嫌だよ。私、恰好(かっこう)の餌でしょ)


 王都に来るまでは、三分の二を家に送ろうかなって考えていたんだけど、物価が高過ぎて、念のためにある程度は手元に置いておこうと思う。必要な時に手元にないのは不安で避けたいの。怪我や病気になった時とかね。まぁ実際、どれくらい使うか分からないから多めにね。


『僕が一緒なんだから、心配いらないよ』


(うん、大丈夫だといいな)


「ありがとう、ハクア」


 ハクアにお礼を言ったのだけど、考えが読めるハクアはちょっと()ねてしまった。


「ユーリア様、この前、ライドにプレゼントして貰った斜め掛け鞄がありましたね。それを、少しお貸し頂けませんか?」


 ジュリアス様が訊いてきた。


「分かりました」


 不思議に思いながらも、素直にジュリアス様に鞄を手渡した。ジュリアス様は鞄を開け内側を覗き込んだ。何かを確認しているみたい。


「やはり、魔法を付与出来る素材で作られてますね。これならば、付与出来るでしょう」


 そう言うと、ジュリアス様は鞄の上に手を置き、小さな声で「収納」と呟いた。鞄がほのかに光る。光が消えたら、私に鞄を返してくれた。


「これで、その麻袋が入りますよ。【収納】と唱えながら入れてみて下さい」


「えっ、ほんとに!?」


 試してみると、本当に入ったよ。魔法って凄い!! でも、鞄の中には何も入っていなかった。


(お金が消えた!?)


「収納魔法で亜空間に収納してますので、鞄の中には入っていないように見えます。あと、この鞄の所有者はユーリア様になっておりますから、他人が開ける事は出来ません。取り出したい時は、【管理】と唱えて下さい。【収納】されている物の一覧が出ます。あとは選択するだけです」


(なるほど)


 さっそく、やってみた。すると、空中にリスト表が浮かんでいる。麻袋三個と合計金額が記載されていた。あとは、灰色の文字で書かれた品が。


(これって、【収納】していないものじゃない)


「凄っ!!」


 感嘆の言葉しか出ないよ。


「項目を押して、取り出す量を指定すれば取り出せます。誰にも知られずに取り出したい時は、頭の中で指示を出せば取り出せます。【隠匿(いんとく)】を覚えたら、私がしたように掛けて下さい。そうすれば、外でもリストを見ても大丈夫ですよ」


「ありがとうございます、ジュリアス様!!」


 感謝感激。思わず、ジュリアス様に抱き付いちゃったよ。あとで、はしたないって怒られたけどね。でもね、それくらい嬉しかったんだから。


 すると、またハクアが()ねちゃった。ライド様の時もそうだった。ジュリアス様が仕事に戻った後に、モフモフしプラッシングしたら、どうにか機嫌をなおしてくれたよ。私からしたら、ご褒美だけどね。


 その日の昼過ぎに、ライド様にお願いして配達屋に連れて行ってもらった。


「無事に届きますように」


 くすねられたり、野盗に襲われたら困るもの。


『大丈夫。ちゃんと届くように細工しておいたから、安心して』


(なら、何が起きても大丈夫だね)


「ありがとう、ハクア」


 私はニッコリ笑って、ハクアの頭を撫でた。




 後日談。

 辺境行きの荷馬車を襲った野盗さんが、晴れなのに雷に打たれ、違う街に住む配達屋の係員さんは、室内にいながら雷に打たれたそうです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ