教会にやって来ました
昨日まで雨が降っていたけど、今日は朝から良いお天気だった。それだけで、ちょっと特別な日って感じがする。
今日はね、教会に行く日なの。自分の【スキル】が分かる日なんだよ。
とてもとても大事な日だから、お母さんにも一緒に来て欲しかったけど、臨月だからお留守番。なので、私はお父さんと一緒に教会に来ていた。小さい村だから、殆どの人が顔見知りだよ。【鑑定】を受ける子は、皆両親揃って来ている。中には、ジジババもいたよ。
当然、教会に来ている子供たちは、皆私の遊び仲間だよ。まぁ中には、どうしても好きになれない子もいるんだけどね。あの子のように。
「あんたの母親、どうしたのよ?」
お父さんが挨拶のために私から離れた隙を狙って、そう高飛車に声を掛けてきたのは、この村で商いを営んでいる家の子でリナリー。
(おはようぐらい、言ったらどうなの)
少しお金を持っているからって、いつも上から目線。べつに、リナリーが偉いわけでもないのに。だからかな、結構、皆から煙たがれているの。本人は全く気付いていなくて、人気者だと勘違いしてるわ。特に私は、他の子よりも強く当たってくるのよね。
(そんなに気に食わないのなら、話し掛けてこなくていいのに)
頼まれても、こっちから話し掛けたりしない。話したくないけど、無視したら無視したで面倒くさいのよ。特別な日なのに、溜め息吐きそう。
「お母さんは、もうすぐ赤ちゃんが生まれて来るから、家でお留守番をしているわ」
(知っている筈なのに、訊いてこないでよ)
「へぇ~貧乏なのに大変よね。ますます、貧乏になるんじゃないの?」
完全に人を馬鹿にしてる。大きなお世話よ。
「そんなの、リナリーには関係ないでしょ。ほっといて」
苛々して、口調がキツくなる。視線を合わるのも嫌。
貧乏をネタにからかわれるのには慣れている。それもどうかと思うけど。まぁそこしか、からかうネタがないからね。ほんと、馬鹿の一つ覚えみたい。そう分かってるのに、やっぱり馬鹿にされると腹が立つの。
「いいこと、平凡で貧乏のあんたが、どんなに頑張っても、良い【スキル】なんて貰える訳ないのよ。せいぜい、【メイド】か【農民】がいい所よね。なんなら、私が特別に雇ってあげてもいいのよ」
(あんた、何様)
ここまで、上から目線なんて……ほとほと呆れるわ。いらないお世話よ。
「結構です」
死んでも嫌。速攻、拒否で。
「全然、可愛くない!! 知らないんだから!!」
私の返答がお気に召さなかったみたい。そんな捨て台詞を残して、リナリーは人混みの中に駆けて行った。
「なんで、リナリーが涙目になってるのよ」
(打たれ弱いのなら、構ってこなくていいのに。ほんと、何がしたいのよ)
そんな事を考えていると、後ろから声を掛けられた。
「おはよう。前から思っていたけど、ユーリアって、リナリーに気に入られてるよね」
振り返らなくても誰か分かった。こんな勘違いな事を言い出すのは一人しかいないからね。振り返ると、やっぱり隣に住むサーナだった。
「何処が? 気に入られてる要素なんて、微塵も感じないけど」
そう答えると、少し呆れた顔をされた。
「素直じゃないし、拗らせてるからね、リナリーは」
(どう解釈したら、そうなるのよ)
違う意味で、こっちが呆れるわ。サーナは素直じゃないって言うけど、私は悪い意味で素直だと思うけどね。
「言ってる意味が分かんない」
「まぁ、分かんないよね。だって、ユーリアって子供って感じしないし。冷めてるっていうか、いつも、一歩下って見てるよね」
(そういう、サーナもね)
「それって、褒めてないよね」
「半々かな」
サーナって可愛い仕草をしながら、さり気なく毒を吐くよね。でも、そういう所嫌いじゃない。
そんな話をサーナとしていると、教会の扉が重たい音を立てながら開いた。
ワイワイと騒いでいた声が消え、シーンと静まり返る。神官様が二人、中から出て来た。
(いよいよ、始まるのね。どんな【スキル】を授かるのかな、すっごく楽しみ)
来い!! 職人系!!