大神殿に到着しました
予定通りに王都に到着した私たちは、そのまま大神殿へと向かった。
教会ではなくて、神殿の方ね。ここ重要。
教会と神殿は一緒のようだけど、役割と活動が全く違うの。でも大半の人は、神殿の支部が教会だと思ってる。私も、少し前まではそうだった。それは、主要な街以外は、教会が神殿の役割を担っていると思っていたからなの。実際の話、神殿や教会って一緒に見てたんだよね。
神殿は主に、浄化と結界、穢れた大地の再生を担っているの。反対に教会は、祭祀を執り行っているわ。結婚式とか葬式、あとは週一回あるミサとかかな。簡単に言えば、神殿は国を相手にしてて教会は人相手かな。
でもね、教会の一番の使命は、穢れが発生したら神殿に知らせる事なの。私が住んでいたど田舎にも教会があったのは、その使命のためなんだって。ほんと、私って何も知らなかったよ。
なので、創世神様の使いである聖獣様と、神聖魔法が使える聖女様は大神殿に居を構えているの。いずれは、私もここに住む事になるのかな。
その大神殿なんだけど、今まで泊まっていた教会や神殿とは違って、とっても広かった。
あまりにも広すぎて、口を開けたままポカンとしてしまったよ。それが、あまりにも間抜け顔だったみたいで、ハクアに大爆笑されたわ。見渡す限りの大理石の床なんて見た事ないもの。しょうがないじゃない。
因みに、十人程いる聖女様は皆、ここから地方に派遣されてるんだって。大神殿にいるのは、一年のうち、よくて二か月程度らしい。なかなかキツい仕事だよね。私も学園を卒業したら、地方に派遣されるのかな。やっていけるか、少し不安になるよ。まだ何も始まっていないのに、弱音を吐くのは早いよね。
そうそう、学園に入学するまで、私はここに泊まることになった。学園に入学したら、寮に入る予定。
聖獣様であるハクアがいるのにって疑問に思ったけど、私が既に聖女である事とハクアに選ばれた事は、学園を卒業するまで内緒にする事になった。
私とハクアの身の安全のために。
(まぁ、それが最善だよね)
それにしても、こんなに広いせいか、人とすれ違う事もぶつかる事もない。っていうか、人がいない。
(埃一つないよ。窓も床もピカピカだし。謎よね……)
ど田舎感満載で、キョロキョロと周りを見ながら、私は間の抜けた感想を抱いていた。
「そんなに、キョロキョロしていると転びますよ」
苦笑しながら、ジュリアス様が注意してくる。ライド様は声を出して笑った。それを見て、またジュリアス様がライド様を睨んでいる。
(このやり取り、安心する)
「珍しいのだから仕方ないでしょ、ライド様。ジュリアス様、今この大神殿には、聖女様はいらっしゃるのですか?」
(もし、いらっしゃるのなら、勉強のために会ってみたいな)
「残念ながら、今は誰もお戻りになっていませんね。入学の時期ぐらいに、お一人戻られる予定ですが」
「残念。一度、会って話を聞いてみたかったのですが……」
「心配なさらずとも、話す機会はこれから先何度もありますよ、ユーリア様」
残念がる私を、ライド様が慰めてくれた。
大理石の廊下を進み、あてがわれた部屋に通される。そこも、馬鹿みたいに広かった。そして、テラスもあって私専用の庭まであったの。
(マジか……ハクアがいるからだよね。慣れるまで時間掛かりそう)
気後れしながらソファーに腰を下ろすと、ライド様がホットココアを淹れてくれた。すっごく美味しい。
(甘いのっていいよね〜癒やされる)
ハクアも満足そうに器用に飲んでる。でも、口の周りは茶色に染まってるけどね。後で口拭いてあげなきゃ。いつも思うんだけど、意外とハクアって、熱いの大丈夫なんだよね。
ライド様は満足そうに私とハクアを見てから、自分たちの分のコヒを淹れ、ジュリアス様の隣に腰を下ろした。
ホッと一息吐いていると、向かいに座っていたジュリアス様が、再度注意点と、これからの予定を繰り返し確認してきた。長くなりそうな予感。
(ゆっくりくつろいでいるけど、教皇様に挨拶しなくていいのかな? 誰も言わないけど、本当にいいの?)
挨拶のあの字も出ないので疑問に思ったけど、ジュリアス様の話は触れないし、ハクアも何も言わない。
(忙しいからかな……)
一人納得して、私はジュリアス様の話に耳を傾けた。