聖獣様の名前が決まりました
急遽、聖獣様の名前を決める事になった。
(文句なんて言えない。だって、私が悪いし、これは私を護るために必要な事だから。でもね……ほんとに下手なの、名前付けるの)
両親が呆れて苦笑いする程にね。
分かってるから、つぶらな瞳で、期待のこもった視線を向けないで聖獣様。ジュリアス様も凝視しないでほしい。
忘れてたわけじゃないよ。お願いされた時から、ずっと考えていた。いくつか書き出しては、止めて、また書き出す。何度も何度も繰り返してたよ。何個か絞り込んでみたけど、なかなかしっくり来るものがなくて。
聖獣様の名前だよ、絶対、妥協なんて出来ないよね。私しか呼ばないとはいえ、その名前を特定の人に知られる事になるんだよ、そう考えると、いくら考えても終わりなんて来ないよ。
責任重大過ぎて、頭を抱えて唸りだす。
『……そんなに、深く考え込まなくていいよ。こう、直感的な感じで』
見かねた聖獣様に、難しい事を言われた。
それでも、聖獣様はととも優しい。もし、私が変な名前を付けても、呆れたり嫌がられても、怒ったりはしないと思う。だけど、それじゃあ、私が嫌なの。
悩みに悩んで、一番マシな名前を頭に思い浮かべる。
(でも、違う気がするの……シロアのシロが引っ掛かるんだよね〜その部分を、別の呼び名にしたら……)
そこまで考えていたら、ふと小さい頃の記憶を思い出した。すると、すんなりと口から出たの。
「…………じゃあ、ハクアってどう?」
それでも、自身がないから、とても小さな声で尋ねてしまった。意味なかったけど。
『ハクア? それって、どういう意味なの?』
(あれ? 嫌そうじゃない。意外と好印象)
「ハクって、白って意味なの。海を越えた先にある遠い国の言葉なんだって。昔、お父さんが教えてくれたの。でも、それじゃあ味気ないから、私の名前の一文字を入れてみたの……駄目かな?」
おずおずと、聖獣様を伺う。
聖獣様の名前に自分の名前の一文字を入れるなんて、さすがに不敬過ぎて怒られるかも。嫌がられるかな? でも、どうしても入れたかったの。なんか、繋がりを感じるから。私の名前も、お父さんとお母さんの名前が入ってるし。
『ハクア…………ハクアか……うん、気に入ったよ。今から、僕はハクアだ。ユーリア、これからも宜しくね』
本当に気に入ってくれたみたい。聖獣様の尻尾が左右に勢いよく揺れてるよ。
(良かった〜ふぅ……緊張で、手汗凄っ)
ジュリアス様も喜ぶ聖獣様を見て、「よかったですね、良い名てす」って言ってくれてるし、聖獣様と一緒に喜んでくれた。
そもそも、おかしな名前でも、聖獣様が喜んでくれているのを見て、「そうですか……おかしな名前だと思いますが」なんて、口が避けても言えないよね。
捻くれている私は、ついそんな風に考えてしまう。こういう所が、子供っぽくなくて可愛げがないんだよね。分かってはいるけど、これが私なんだよね。