魔王との運命の出会い
ああ意識が薄れていく…死んだのかな?
私小金井由衣34歳独身、働き過ぎと睡眠不足により、意識が朦朧として、自宅で倒れる。
ああ、せめて死ぬ前に、結婚したかった。結婚していれば、こんな状態でも夜遅くだし、すぐに夫が救急車呼んでくれて助かったはず。うぅ、私だって頼りたいときがあるんだー。
目を開けるとそこは、豪華なシャンデリアと古風な絵画が飾ってあった。
ソファが、見た目がフカフカで座ってみたくなる。
デカそうなベットに私は寝かせられていたようだ。
ピンクのシーツが私にかけられていた。
ここは天国? いや、なんか香水の匂いがする。心が和らぐ、アロマの様だ。
匂いを感じるってことは、死んでない?
手を握ってみた。グーパーして肌の感覚がある。夢でもなさそう。
「お目覚めかい?」
突然どこからか声がした。
周りを見回すと、何やら光り輝く物体が浮いていた。
その物体はまるで妖精の様だった。
「あなたが話しかけて来たの?」
私は妖精と思われるものに話しかけた。
「そうだよ。君は向こうの世界で亡くなって、この世界に僕が呼んだんだ。」
やはりよく見れば、妖精に間違いなさそう。
「なんですって? 一体…なんのために?」
私は戸惑って聞いた。
「うん、これから詳しく話したいとこだけど、あまり時間がない。君を召喚したのは、魔王を倒してもらって、新しく君が大魔王になるんだ。」
「はい? あの…今なんと仰いましたか?」
私が大魔王? 自分を指差しながら、この妖精に再度尋ねた。
「君の使命だ。この世界に秩序と安寧を保つため、魔族と人間が共存する世界を作るため、君は、新たな魔王となる。そして勇者と結婚する。ちなみに私はこの世界の神だ。」
な…なんと! 妖精じゃなくて、この世界の神だったかー!
しかしいきなりの展開。私は、頭が痛くなって来た。頭を叩きながら、必死に状況を飲み込もうと思った。
「えっと…あなたは、神で私を召喚したと? それで魔王を私が倒して、新しく魔王になれと? ちょっと待って? 私聖女とかじゃなくて?」
矢継ぎ早に神に尋ねた。
「そうゆうこと。聖女ではない。今もう勇者が魔王をだいぶ痛めつけて、魔王は逃げていると所なんだ。君がとどめを刺すんだ。一撃で倒せる魔法を君は使える様になってる。」
「さっ、急いで今から魔王を倒しに行くよ。ついて来て。」
光ってる神様が、私を急かす。
ええーいきなりなんのこっちゃ? まったく…異世界でも、こき使われるのか。私ってそう言う星の元に生まれたのかしら?
それにしても…色々情報が出てきて、混乱するわね。
ちょっと整理しなきゃ。
私は死んで、ここに転生転移して…それで神様から、魔王を討伐しろって命令されてるとこよね。
それで私が魔王を倒したら、その後を引き継いで、世界を平和に導く? で合ってるのよね? 多分。
やれやれね…転生してから、もう仕事させられるなんて。ちょっと休ませて欲しい。
いきなり連れて来られても…そりゃ助けて貰えたのはありがたいけど、だからってそんな落ち着いて考える暇も与えないなんて。
ここでもこき使われるんだ。シクシク…私は気分が落ち込んで…どっと疲れが押し寄せて来た。
「君は空を飛べる魔法が使える。頭で念じるんだ。空を飛ぶと。一発で魔王を倒せる魔法と、回復魔法を君は使える。仮に魔王に攻撃されても、すぐに回復出来るんだ。」
「はぁ? 色々説明どうもです。」
神様が、窓から外に出るのを見て、私は、念じてみた。体が宙に浮いた。ほほー、これはすごっ。
そして神様について行き、魔王の元に向かった。
「あの…一つ質問が。私って元の世界には帰れるんでしょうか?」
魔王とやらを倒せば、帰して貰えるかなと、淡い期待を抱いた。
「それは難しいね。もう君は向こうの世界で死んでるからね。まぁちゃんと大魔王として務めてくれれば、その新しい体で帰れるよう方法を考えてあげても良い。」
やっぱり死んだのね。新しい体か。鏡見たいな。新しい体って若返ってたりするのかな?
神様と色々話をしながら、考えていると、神様が森の様なところに、降りて行った。
魔王のいるとこ、すぐ分かるなんてさすが神様。この神様から、私は逃げられなさそうだなと、ちょっと怖くなった。
「こっちだよ。おっ…魔王発見。ささ、ちゃっちゃっと魔法で魔王を倒して。それと僕は君にしか見えないし、僕の声も君にしか聞き取れないからね。」
神様が説明を唐突とした。
私は、浮いてる神様を見て木に寄りかかってる、怪我をしていて、今にも死にそうな…えっ…ちょっと待って…何この私のタイプを表したイケメンは!
その風貌は、ロングの赤い髪にツノが生えて、眼は赤く、目鼻立ちの整った貴公子と呼ぶに相応しい…とても素敵な男性がそこにいた。
めっちゃ好みなんだが? その赤い眼に吸い寄せられる。まさにカリスマ性のあるオーラを放っている。魔王と言われて、確かに納得できる威厳を感じる。
「さぁ、とどめを。両手を魔王に突き出して、そこから魔法を放ってもらえれば、後は勇者が現れて、僕が仲を取り持つよ。」
神様が私に伝えた。とどめをって…はぁ? 無理なんだが? ってか魔王って言っても怪物見たいな見た目じゃなくて、ほぼツノが生えてる意外人間じゃん。
それを殺せって? 無理無理。
嫌でございますと言う表情で神様を見た。
「追手か? ふっ…俺ももうここで終わりか。せめて部下達は逃げ延びてくれれば良いが。」
魔王が観念したと言う表情で呟いた。その声は、まさに美声と言えるぐらい、私の胸をドキッとさせた。
そして自分の身より、部下のことを考えてた発言に私は彼に同情の気持ちを抱いた。
それは、私が過労で死んだことによるものでもあった。
うぅ、私も社長に案じて欲しかったー。
そう考え…自然と私は、彼に両手を突き出した。
「新しい魔王、そう大魔王の誕生だ。これから君が魔族を率いる…って、ちょっと君! 何やってるの?!」
神が驚きの声を上げた。
分かってる!
私もこんな事しちゃ駄目なのは。
私は魔王に回復魔法を施していた。
彼の辛そうな表情…片手を抱えている。痛みが激しいのだろう。擦り傷も無数にある。
彼を救いたい。苦しみから解放してあげたい。私は彼を殺すことよりも治療することを選んだ。
それは過労で誰にも救ってもらえなかった、孤独感を彼に、共感を抱いたからかもしれない。
私が助けてあげる。あなたは1人じゃない。もちろん、これで魔王が私に感謝する保証はない。
私が殺される可能性もある。魔王だから、彼の性格は分からないから。それでも構わない。
だって…彼に一目惚れしてしまったんですもの。