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 放課後、女の子から手紙で呼び出されて告白されると思ったら、闘技を申し込まれた件。


 どうしてこんなことになってしまったのか、誰か説明してください!


「闘技って、仮にキミが勝ったら、俺より強いってことでしょ?わざわざ弟子になる必要なくない?」

「そ、それは、そうですけど。で、でも、意見が対立したら、闘技で決めるのが常識じゃないですか」

「そりゃ、そうだけどさ」


 夫婦ゲンカから国同士の争いまで、闘技で決着をつけるのが常識だ。それは神々が決めたこの世界の絶対的なルール。


 自分の意思を貫きたければ、誰よりも強くなければならない。物理的な意味で。


「神々の定めに従い、闘技の開催を許可します」

「うわ!」


 突然背後から声をかけられたせいで、思わず飛び退いてします。びっくりして声を上げたのは、彼女ではなく俺です、すいません。


「闘技のルールを決めてください」


 突然現れたのは、おそらく闘神教会に所属する神官だ。彼らは世界中で活動する、闘技の審判員でもある。闘技があるところに神官あり、と、本当にどこにでも現れる人たちだ。


「すいません、まだ正式に闘技を受けたわけでは無いんですけど」

「闘技はすでに正式に受理されました。辞退は敗北としますが、よろしいでしょうか?」


 よろしくはありません!


「仕方ない、戦いますよ。でも、マギチューブは無しでお願いしますよ」

「視聴手数料が入りませんが、よろしいですか?」


 闘技の様子は常にドローンで撮影される。撮影された映像は、リアルタイムで専用の端末、『マギチューブ』から視聴することができる。


視聴数によって、闘神教会から配信料がもらえるようになっているのだが、世界中で闘技が行われている現代で、一学生の、それも落ちこぼれ学校と呼ばれる学校の生徒同士が突発的に行う闘技を見る人なんてまずいないだろう。一日に何万件もの新規動画が配信されているんだから。


「よ、よろしくないですぅ。例え1ダリでも、お金がもらえるならもらいたいです!」

「じゃ、じゃあ、マギチューブで配信するかどうかを賭けて闘技する?」

「うぅ、お願いしますソラく~ん。本当に、本当にお金がないんですぅ」

「・・・・・・わかったよ」


 くそう、こいつ絶対狙ってやってんだろ。上目遣いの角度とか、絶対に計算しているよ、可愛いな、くそ!


「それでは、改めまして闘技のルールを決めてください」

「スタンダードで良いだろ?」

「ふわぁ、なんか今のベテランぽくて格好良かったです。私もやっていいですか?」


 やめて、なんか急に恥ずかしくなってきちゃう。こんなのでベテランぽく見えるなんて、本当に闘技とは縁の無いところで生活してたんだろうな。


 俺が子どもの頃なんか、闘技をやりすぎて教会の神官に怒られたこともあるってのに。


 そんな女の子が、憧れの人みたいになりたくて育成学校にやってきた、と。やめよう、悲しくなってきたよ。


「す、スタンダードで!」

「・・・・・・かしこまりました。個人戦、基礎ルールで開催いたします」


 ちょっとだけ格好つけて言った彼女の言葉を、事務的な態度で正式名称に直しながら通達する神官。


 それを見て、自分が初めて闘技を申し込んだ日のことを思い出してしまう。俺もずいぶんと歳をとったものだ。精神・肉体共に15歳だけどね。


「それでは、ただいまより、ステラ・ランダーとソラ・タツミの闘技を開始します。フィールド・オン」


 そうそう、ステラだ。今度は忘れないようにしよう。などと心のメモ帳にステラ・ランダーをしっかりメモっておく。


そうこうしているうちに、神官が手を掲げると、周囲が虹色の光に包まれる。


 空間は大体直径20メートルほどの円形空間。かなり狭い空間だが、一般人にとってはこの大きさが普通だ。


「両者、シールドを展開してください」


 言われたとおり、全身にシールドの魔法を展開する。


「ふえぇ・・・・・・」


軽く全身の筋を伸ばして準備を整えていると、なぜか目の前のステラから悲しげな声が聞こえてきた。


「ステラさん、シールドの展開をお願いします」

「は、はいぃ。ちょっと待ってください。うぅ・・・・・・できた!」


 シールド魔法は、なれてくれば呼吸をするのと同じように展開できるようになる。なれていない子どもなんかは、今の彼女みたいに時間がかかる訳なのだが・・・・・・


 あれだけ強力な突きを放つことができるのに、魔力操作はあまり得意では無いのか?


「ステータス・オープン」


 両者がシールドを展開したことにより、お互いの頭上にシールドの残量が表示される。シールドの残量は、そのまま自分の残り魔力量だ。


この数値が0になればシールドが解除され、フィールド外に強制的に退場させられる。


 一般の、普段魔力を使わない仕事をする人の平均が100と言われている。魔力を使ったり、訓練を積むことでこの数字はどんどん伸びていく。


 育成学校1年生の世界平均は300~500と言われ、入試を受ける最低条件が200とされている。


 これがプロになるとその数値が跳ね上がり、ルーキーで1000以上。トッププロになると1000000以上になる人もいる。


「え?ソラ君、シールド残量がおかしいよ?」

「ほほう、さすがですね」


 ステラは俺のシールド残量を見て驚いている。まあ、確かに同年代に比べれば少し多いけど、神官はなぜか納得したご様子。なんだこの人、俺のファンか?




ステラ・ランダー シールド残量

723


ソラ・タツミ   シールド残量

21386




 ステラだって、学生平均よりもかなり多い。今までほとんど闘技をしてこなかったのにこの数値はちょっとおかしいんじゃない?


 俺のシールド残量がアレなのは、元師匠のおかげというか、幼なじみたちのせいというか。


「それでは、闘技、開始!」


 なぜか闘技を開始するときのかけ声ってあんまり格好良くないんだよな。伝統的にこうなってるらしいんだけど、地味すぎる。


世界大会の決勝だってこのかけ声だもんな。入場からセコンドアウトまでの時間は花火が上がったり、スモークを焚いたりド派手な演出が盛りだくさんなのに。


「破!」

「おっと」


 余計なことを考えていたら、ステラの拳が目の前まで迫っていた。相変わらず真っ直ぐ飛んでくる拳は、身体を横にずらすだけで容易に回避することができる。


 真っ直ぐすぎる性格とその拳は、一対一の闘技において相性最悪としか言いようがない。隙だらけの詠唱を用いる魔法職になら、もしかしたら当てられるかもしれないが、そんな魔法職はすでに絶滅している。


「これなら、どうですか・・・・・・破!」

「うげ!」


 直接俺に拳を当てることをあきらめたステラは、地面に拳を叩き込んだ。その衝撃は地震と間違うほど強烈で、拳が突き刺さった周辺から順にヒビが入っている。


「まだまだぁ!」


続けて拳を叩きつけ、さらに衝撃は強くなっていく。あの小さくて愛らしい姿からは想像できないほどの怪力だ。


 あれほどの威力を出しているというのに、魔力消費がほとんど無いのはどういうわけか。



ステラ・ランダー シールド残量

698


ソラ・タツミ   シールド残量

20818



 俺のシールド残量が568も減っているのに対して、ステラの消費量はわずか25。まさかとは思うけど、身体強化の魔法を使わないであの威力なのか?


 それに比べて、何もしていない俺はステラの20倍以上消費している。


 この前のオリエンテーションでも思ったけど、やっぱり俺の魔力はもの凄いペースで減っているな。実際に数値で見ると悲しくなってくる。30分もすれば間違えなく退場するな。


 ステラにこれ以上校舎を壊させないためにも、とっとと決着をつけるとしよう。


 俺はステラによって陥没させられた地面から飛び上がり、空へと飛び上がる。






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