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 結局結論が出ることはなく、セーラ先生には少し検討する情報と時間が欲しいと言われて、解散になった。


 粉砕した肩についてもなぜか後回しにされてしまったため、現在俺の両肩は動かすこともできない状態になっている。


 つまり、両手が使えないと言うことで・・・・・・


「じゃあ、これ食べよ、タツミ君」

「え、えっと、その・・・・・・あ~ん」


 なぜか両手に花の地獄を味わうことになっていた。


 確かにね、スプーンやフォークを持つことはできないんですよ。頑張っても自力で食事することはできないんですけど、だからってこのシチュエーションはおかしいでしょ!


 普通女子は立ち入らない男子寮の食堂で、右には小柄でほんわかとしたクラスでも人気の高い美少女。そして左には、よりにもよってこの国の第一王女殿下。


 そんな彼女たちが、俺の両脇を固めて食事を食べさせてくれるなんて、どう考えても悪目立ちする。


「ご、ごめんだけど、やっぱり二人は女子寮に戻った方がよくないかな?」

「え?アタシのせいでケガしたんだから、治るまでお世話するのは普通じゃない?」


 アタシのせいでケガをしたんじゃなくて、アタシが意図的にケガをさせたんだろうが。王女殿下ならせめてメイドさん付きの入院施設とか紹介しろよ。とは言えないけど、自分が世話をするという発想に行き着かないでいただきたい。


 どう考えてもこの人はお世話される方で、お世話する経験なんて無いでしょう。


「そ、ソラ君は、私にお世話されるの、嫌、ですか?」

「そ、んなことは無いよ?」


 不安いっぱいな潤んだ瞳の上目遣いでそんなことを言われて、断れる男子がどれだけいるだろうか?


 当然俺は無理である。


 あきらめてお世話されているわけなのだが、男子たちの嫉妬の視線が痛い。


 とっとと食事を済ませてしまうのが最適だと考えて、口元に運ばれてきた食事をただただ咀嚼するマシーンに徹する。


「タツミ君~、せっかく美少女二人が食べさせてあげてるんだから、もう少しうれしそうな顔しなよ~」

「・・・・・・ウマイデス」

「こ、これも、どうぞ」

「・・・・・・ウマイ、ウマイヨ」


 何もなく食事が終わることを祈りつつ咀嚼マシーンと化していたが、大体そんなことを考えているとフラグが立つわけで。


 視界の端に勢いよく立ち上がる一団が映る。


どうかこっちに来ませんように、と神々に祈りを捧げるよりも早く、その一団は俺たちの前に到達し、跪いた。


「ライザ・リラ・イザイル第一王女殿下に、カルバモニス子爵家が三男、ザニス・カルバモニスが具申いたします」

「嫌です」


 一団の先頭にいた少年が、目を伏せたまま告げた言葉を、満面の笑みを浮かべたライザ王女が切り捨てる。


 まさか拒否されるとは思っていなかったのか、ザニスと名乗った少年の後ろに控えていた仲間たちは、驚きで顔を上げてしまう。


 全く状況がわからないが、彼らの中では驚くことが起こっているんだろう。


「恐れながら、私の話に耳を傾けてはいただけ「むりです!」しょうか?」

「見て解るとおり、私は今食事中です。子爵家とは言え、三男ではテーブルマナーも習いませんでしたか?」


 いつもと雰囲気が違う。笑顔ではあるが、その視線は相手をグサグサと刺し殺すような鋭さを持っているようだ。


「カルバモニス子爵家、確か伯爵への昇爵も間近と聞いておりましたが、子息の教育も満足にできないのであれば、考え直さなければなりませんかね」

「し、失礼致しました。しかし・・・・・・」

「しかしではありません。これ以上お話しすることはないと言っているのだけれど、いつまでそうしているおつもりですか?」

「も、申し訳ありませんでした!」


 哀れにも、すごすごと逃げていく一団。


 周囲の生徒たちも、合図でもされたかのように一斉に視線を外した。それほどの威圧感を感じた。これが王族ってやつなのか?


 こんな威圧ができるんなら、この勢いでセーラ先生も説得してくれれば・・・・・・いや、あの人は無理かなぁ。


 しかし、なんでライザ王女がぼっちなのかはわかったような気がする。


「姫様、さっきの人たちは」

「ああ、大丈夫だよ。うちの貴族なら、アタシに手は出せないだろうし。嫌われても、どうせ敵対派閥の貴族家だしね」

「そ、そう、ですか」


 ステラは逃げ去っていく一団が食堂から出て行くまで、その後ろ姿を見つめていた。


 理由も聞かずに追い返しちゃったけど、ゼニス君とやらは何が言いたかったんだろう。まあ、この状況を考えれば明白なんだけど。


 どう考えても面倒ごとに巻き込まれたな。


「さ、気を取り直してご飯を食べよう」

「・・・・・・はいぃ」


 その後朝食を終えるまでの間は、周囲の視線が気になることはなかったのだが、ライザ王女の威圧を間近で感じたせいか、ステラの元気が無かった。


 俺?


 俺は咀嚼マシーンとして稼働してましたよ。




 なぜか着替えも手伝うとか言い出した二人を男子寮から追い出して、ようやく自室で一息つけた。


 このまま午前中の座学を欠席してしまおうかとも思ったが、あの二人が部屋まで突撃してきそうだったので、大人しく登校することにしよう。


 ただ今は、一人の時間を満喫したい。


「おうおう、ソラぁ。ケガしたってのは本当かこらぁ」

「お、おぅ」


 朝は食事よりもリーゼントのセットが大事なリーゼント君は、どうやら先ほどの地獄をご存じないらしい。


「どこケガしたんだよボケが」

「ああ、両肩をね、骨折したんだよ。おかげで両手が使えなくてさ」

「はあぁ~~、大けがじゃねえかぼけごらあ!なんで早く言わねえんだよ!」

「今朝ケガしたばっかりだから」

「マジかよ!んじゃあよ、なんか困ったことがあれば、すぐに言えよな」


口調はヤンキーなのだが、話してみると意外と良い奴なのだ。兄貴って感じで、同級生に慕われているのもわかる気がする。


「それじゃあ、お昼を一緒に食べてくれると助かるんだけど」

「昼飯か?姫様たちはどうすんだ?」

「知ってるんかーい!」

「ああん!んなもん、1年の間じゃみんな知ってんだろ。随分賑やかだったそうじゃねえかごらあ!」


 そうだよね。あんだけ目立ってれば、嫌でも耳に入ってくるよね。


 もういっそのこと、今日は授業を休んでセーラ先生のところで治療してもらおう。


「おう、ソラぼけぇ。外のあれ、ソラの連れの嬢ちゃんじゃねえか?」


 サボりの覚悟を決めているところに、リーゼント君から声をかけられたので、窓の外に目を向ける。


「あ~あ」


 外の光景を見て、思わず手で額を覆いたい気持ちになった。腕が上がらないからできないけど。


 外では、先ほどライザ王女に話しかけようとしていた一団が、ステラを取り囲んでいた。もちろんステラの正面に立って何やら喚き散らしているのは、子爵家の三男坊君だ。


「おう、あれはEクラスの奴らじゃねえか?」

「Eクラス?」


 子爵家の坊ちゃんだって言うから、俺たちより上のクラスだと思ってたんだけど、まさか最底辺だったとは。


 Eクラスが相手なら、ステラ一人でも大丈夫だと思うけど、どうしたもんか。ライザ殿下が一緒に居てくれれば良かったのだが、なぜかあの姫様いないし。


「っけ。女一人相手に男が何人も群がりやがって、恥ずかしい奴らだぜごらあ!」


 そう言いながら、リーゼント君は愛用のバットを担ぎながら部屋の窓を開け放つと、そのまま外へと飛び降りていった。


「ちょ!ここ三階なんですけど~!」


 ズシンと重い音が聞こえた時には、すでにリーゼント君は着地をすませ、お坊ちゃんにバットを突きつけていた。


「ダチの連れに手ぇ出すたあ良い度胸だなぁこのアホ共がぁ!まとめて闘技してやるから、かかってきやがれごらあ!」







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