第17話 初めての共同依頼
勇者の息子にしてAランク冒険者のエーセンと出会った。
追記(4/23):あとがきにお知らせを追加しました。
「うーん、今日はあんまり良い依頼がないな。」
ハルは冒険者協会の依頼が貼ってあるボードを眺めてつぶやいた。冒険者としては最低ランクのハルが受けられる依頼は多くない。
依頼が多くないということは、困っている人が少ないということを意味するので悪いことではないのだが、ハルにとっては仕事がなくなってしまう。
「となると、常設の薬草採取かゴブリン退治あたり。でも最近はゴブリンも減ってるし、薬草の採取も前やったばかりだから……。」
もちろんそういった人のために冒険者協会は常設依頼を設けている。森の浅いところでも大丈夫な薬草採取とゴブリン退治だ。しかし、最近は森のゴブリンの数も減っているし、薬草もとりすぎてしまえば新たな薬草が生えなくなってしまうので不用意に依頼を受けることができないのである。
ハルは薬草の群生地をいくつか知っているが、先日そこで薬草を採取しているため数を減らさないためにあまり採取したくないのである。
仕方ない、今日は休みにしよう。
そう思ってボードから離れようとしたとき、不意に話しかけられた。
「ん?ハル、お前今日は依頼受けないのか?」
声をかけてきたのは先輩冒険者のレートさんだ。彼は面倒見の良い性格で、まだ新人のハルにいろいろ教えてくれている。
「ええ、良い依頼がないので休みにしようかと。」
「なるほどな。今のお前じゃ受けられる依頼少ないもんな。……そうだ、だったら俺が依頼に連れて行ってやろうか?」
「良いんですか?」
冒険者協会には"共同依頼"という制度がある。パーティを組んでいない冒険者同士が臨時でパーティを組んで依頼を受けることができるという制度だ。
もちろんそれはランクが同じでなくてはならないという縛りはない。ランクが異なっている場合、普通はその間のランクまでの依頼を受けることができる。ちなみにハルは最低ランクのEでレートはCランクなので間のDランクを受けることができるというわけだ。
「パーティメンバーがちょっと怪我しちまってな。その間体をなまらせないために依頼を受けようと思ってたんだよ。さすがにCランクの依頼となると他の奴らがいないときついから、ソロでも問題ないDランクの依頼をな。」
「そうだったんですね。」
「この依頼なんてどうだ?ウルフの群れの討伐。」
ウルフの群れの討伐。Dランクの依頼としては難易度がそこまで高くないとは言われている。レートならきっともっと難しい依頼でもソロで受けられるだろうに、ハルのことを考えてくれたのかもしれない。
「分かりました、頑張ります!」
「そう気負うな。最悪、自分の身を守ることだけ考えとけ。」
初めての共同依頼、そして初めてのDランクの依頼をハルは受けることになった。
いつもより深い森の中。少し薄暗いそこはハルの見慣れない植物が生えていたりする。しかし、勤勉なハルはすでに情報として知っているので、それが"見た目は綺麗だが毒性の強い花"であることも分かっていた。
「さすがだな。興味本位であちこち触るようならまだまだ昇格には遠い。」
「ちゃんと勉強してるんで。」
「座学だけの頭でっかちにならないよう、しっかり体も鍛えておけよ。」
「はい!」
さらに森の奥に進んでいく。すると、急にレートの周りの空気が変わったのをハルは感じた。
「そろそろウルフの群れの近くだ。気を引き締めろ。」
小声でハルに声をかける。ウルフに気づかれたくないのだろう。ハルも声には出さず、うなずくだけで返事を返した。
少し開けた場所に出る。茂みに隠れながら見ると、ウルフの群れが見えた。こちらが風下のためまだ気づかれてはいないようだ。
ハルはウルフの中に一際大きな個体がいるのを見つけた。
「っち。でかいのがいるな。上位種ってわけじゃなさそうだが。でかいのとその周りのは俺がやる。ハルはあの辺にいる奴らを任せる。いいな?」
再びハルはうなずいた。レート曰く上位種ではないようだが、体が大きいというのはそれだけで脅威になる。
「よし、いくぞ!」
掛け声とともにレートが飛び出した。ほんの少し遅れてハルも飛び出す。行き先は先ほど指示された通り、何匹かのウルフが固まっている場所。
ウルフもこちらに気づいたようで、迎撃体制に移る。
ハルは剣を手に持って飛びかかってきた一体のウルフの首元を掻っ切る。続けて飛びかかってきたウルフには切り返しが間に合いそうにないので横っ飛びで避けた。
しかし、もう一体。避けた先にウルフが飛びかかってくる。避けられない。
かまれる直前に剣でガードをするが、ウルフに押し倒される形になる。
(まずい!このままじゃ!)
横から味方のウルフを助けに来ようと別のウルフが近づいてきたのが見えた。しかし、ハルの剣はウルフにかみつかれているため対応できない。
(防げない!)
そう思った瞬間、ハルの上にのしかかっていたウルフの力が急に抜けた。ハルは命からがら立ち上がり、近づいてきたもう一匹のウルフを切り倒す。
そして周囲を見渡す。そこには大量のウルフの死体と、悠然と立つレートの姿がそこにはあった。
「集団戦はまだまだだな。最初の一撃の振りが大きすぎる。それに避ける動作も大げさだ。」
「返す言葉もありません……。」
「ま、日々精進ってやつだ。だが、お世辞にも才能があるとは言えないな。俺くらいにはなれるだろうが、Aランクとかは夢のまた夢だと思えよ。」
「はい。」
ハルは落ち込む。そして思い出すのは最近出会うすごい人たち。おばちゃんに始まり勇者パーティの面々。それに直近ではAランクにして勇者の息子エーセン。彼らはきっととてつもない努力をしているのだろうが、間違いなく才能もあったはず。
落ち込んでいるハルにレートは声をかける。
「さっさと処理を終わらせて帰るとするか。今日は酒おごってやるよ。」
「……ありがとうございます。」
その日はハルにしては珍しく、酒を倒れるまで飲んでしまった。
第17話いかがだったでしょうか。今回はちょっとシリアスになってしまいました。こんな先輩が自分にも欲しかったという欲望があふれ出ちゃいました。感想・評価・誤字訂正など全部お待ちしております。
追記(4/23):次回更新は4/24とお知らせしていたのですが、4月になってから非常に忙しくなったため執筆時間がほとんどとれていません。更新が難しくなってしまったので、一度更新をお休みしたいと思います。落ち着いたらまた更新を再開しますので、その時にまた読んでいただけたら嬉しいです。更新ができなくなり本当に申し訳ありません。




