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第11話 少年の正体

謎の子供が宿屋を訪れた。


「そっちにはいるか!?」

「駄目です、こっちにはいません。」


 とある城の中で一人の人物を探して騒ぎが起こっていた。どうやらとある人物が突如行方をくらましてしまったそうだ。

 その中で一人冷静、いや呆れてしまっている男が頭を抱えながら声をかける。


あの方(・・・)の捜索は私が行いましょう。皆は通常の業務へ戻ってください。大丈夫です、こんなことはもう何回もありましたから。」

「サウラ様……。よろしくお願いします。」


 こうして、ひとまずは城の中での騒ぎは収まった。その中で、サウラと呼ばれた男は思わずといった感じでため息がこぼれ出た。


「全く、どこに行かれたというのか。本当に魔王様(・・・)は自由なお方だ。」





「えっと、本当についてくるんですか?」

「なんだ、我についてこられたらまずいのか?」

「そういうわけじゃないですけど……。」


 別にハルはずっと一人で活動しているわけではない。でも、基本的にハルは先輩についていくばかりで、自分についてくる人がいるというのは何だかもどかしい気持ちだった。

 それに、この人はおそらくハルよりはるかに強い。それなのに、こんなに簡単な依頼についてこさせるのは申し訳ないという気持ちもハルにはあった。

 

「そういえば名前を聞いていないんですけど。」

「そうだったな。我の名前はゾンマーだ。我は……。おっと、これは言うなとエアルに口止めされていたのだった。」

 

 何だかゾンマーは怖いことをつぶやいた。あの(・・)エアルが口止めするほどの秘密。聞きたいような聞きたくないような、そんな矛盾した感情をハルは抱く。

 

 そして二人はイノシシが現れるという畑にたどり着く。なるほど、確かに畑の一部が動物によって荒らされているような形跡が見て取れる。おそらく、畑に実っていた作物を目当てにやってきたイノシシの仕業だろう。

 

 ハルは畑の周囲を注意深く観察する。すると、森の方向へと続く獣の足跡を発見することができた。ハルはできる限り気配を消して足跡をたどる。

 どうやらゾンマーもここでは空気を呼んでくれたようだ。同じように気配を消してハルの後ろをついていく。

 

 そして、ハルはようやく犯人と思われるイノシシを発見した。さっそく、ハルは腰に提げている剣をゆっくりと気づかれないように抜いた。

 

 しかし、次の瞬間。

 

「何をしている。さっさと殺してしまえば良いだろう。」

 

 突如、突風が吹き抜けた。次の瞬間、狙っていたイノシシは血を流して倒れていた。あまりに唐突なことで、ハルは困惑する。

 

「えっと、ゾンマーさんが?」

「ああ。風の魔法くらい珍しいものではないだろう?」

 

 いいえ、珍しいものです。その言葉をハルは飲み込んだ。ゾンマーはどうやら魔法を使えるらしい。それも相当に高いレベルで。

 

「む、しまった。」

「今度はどうしたんですか?」

 

 ゾンマーの言葉に思わず質問を投げかける。ゾンマーはなぜか虚空を見つめている。まるで、"そこに何かが現れる"のを知っているかのように。

 

 その視線の先に一人の男が突然現れた。まるで転移魔法を使ってきたかのようだ。現れた男はゾンマーの前で跪いた。

 

「ようやく見つけました、魔王様(・・・)。」

「サウラか。よく我を見つけたな。」

「もとより人間の国に行かれていると思っていましたので。それより魔王様、業務が滞っております故、早くお戻りいただきたく――。」

 

 二人が会話を始める。しかし、ハルは隣でぽかんと口を開けたまま、困惑して立っていることしかできなかった。

 

 魔王(・・)。それはかつて勇者ウェール達が戦い、物語上では討伐されたとされている魔族の長。しかし、実際はあまりの強さに討伐することはできず、今なお魔族の頂点に君臨しているとか。

 

 その魔王が今、目の前にいる。どこからどう見ても少年にしか見えないような姿で。

 

 そんなあまりにありえない状況にハルはついに現実逃避を始めてしまった。

 

「じゃあ、依頼達成を報告してきますので。ではごゆっくり。」

 

 そう言って二人から離れようとしたところ、ゾンマーがハルの肩をつかんだ。

 

「待て。何か言うことがあるだろう?」

「えーと、お疲れさまでした?」

「違う!我は魔王なのだぞ!もっとこう……、何かあるだろう!?」

 

 すでに現実逃避してしまっているハルにゾンマーの言葉は届かない。ははは、とハルは乾いた笑いを出すばかり。

 

 それに急に魔王とか言われても困る。見た目だけでいえばハルより年下だし、態度も加味すればまさしく"クソガキ"とでも呼べるような感じだったのだ。

 

「なんと失礼な。魔王様、この人間を殺してもよろしいですか?」

「駄目に決まっている。また(・・)魔王が侵攻を始めたとかデマを流されてしまうだろうが。」

 

 どうやらかつて侵攻を始めたというデマを流されてしまったことがあるらしい。いや、というよりそれが原因でウェール達が魔王討伐に出たのではないだろうか。

 そして、ウェール達も魔王と出会い、侵攻の話が嘘であることに気づいたのだろう。それもあって、戦いはどちらの命を奪うこともしなかったのかもしれない。

 

「そろそろ戻らなくてはならないようだ。ハル、エアルによろしく言っておいてくれ。」

 

 どうやら魔王としての業務を放ってこっちに来ていたようで、サウラは魔王ゾンマーを迎えに来たらしい。二人はおそらく転移魔法と思われる魔法を使ってその場から姿を消してしまった。

 

 取り残されたハルは一人つぶやく。


「……依頼は達成したし、帰ろう。」





 依頼達成の報告を冒険者協会にして、ハルは宿屋に戻った。そこには心配そうな顔をしている宿屋のおばちゃんことエアルがハルを待っていた。

 

「ハル!大丈夫だったかい?あいつに何もされてないかい?」

 

 きっと"あいつ"とは魔王ゾンマーのことだろう。特に何も起こらず、ゾンマーは帰ったということだけを伝える。すると、エアルはほっと肩をなでおろした。

 

「昔あいつと戦ってから妙に気に入られちまってね。今でもたまにうちに来るんだ。大体の冒険者はあいつのオーラに当てられて避けるんだけど、ハルはなぜか関わっちまったからね。きっと興味を持ったんだろう。」

 

 魔王に興味を持たれて良いことなど、多分無いような気がする。

 

「安心しな。あんたに何かしようものなら、あたしがぶん殴っといてやるから。」

 

 魔王相手にこんな風に言えるエアルはやはり頭がどこかおかしいと思う。ハルは改めてそう思うのだった。


第11話いかがだったでしょうか。謎の子供の正体は魔王だったようです。勇者パーティの次に会うと言ったらやっぱり魔王ですよね。感想・評価・誤字訂正など全部お待ちしております。


次回更新は3/20(月)になります。読んでいただけたら嬉しいです。

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