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未練

 本来化物――ファントムや妖怪など様々な呼ばれ方をするが――は神々が作ったシステムで人口の増加を防ぐものだったらしい。


 人類の発展をある程度抑制するためのバランサーのような扱いだったらしい。


 しかしたまに超強い化物が出てくると人類が滅びかねないので神々と契約することによってそれらと戦う今風に呼べば魔法少女やヒーローといった存在ができた……らしい。


 それをベル様から聞いたときにボクは「態々契約しなくても神達がやればいいじゃん」って言ったら「それじゃあ面白くない」って返ってきたのでこの杜撰なシステムは結局遊び感覚で作られたようだ。


 なので神々の間で魔法少女の契約が流行ってから暫く真面目な取締がなく、化物の数は限りなくゼロに近づき、リスキルされるようになっていった。そして産業革命という流れだ。


 それからは流石に不味いと思ったのか最高神――誰なんだろうね?――が化物を側の人間しか見えなくして一般人を多く殺せるようにした上、死因を災害や事故と認識するようになった。

 近年の異常気象なんかはこれが原因である……多分。


 それでも魔法少女達が多すぎたのでそれを減らすのがボクや瑠流の仕事だ。罰音は事情をしっていてやりやすい娘を紹介してくれる。

 少し、犯罪チックな響きだが。まぁ響きよりよっぽど大罪ではある。


 手段は問わない。

 側の人間は元々死にやすいので誤魔化しやすい。

 側の人間を人間とよべるのか甚だ疑問だが。


――魔法少女とヒーローと神々と人間と……

 そう区別するべきだといった彼女の顔はもう思い出せない。ただ覚えているのは前世で()殺したこと(リヴァイアサンの口に)くらい(放り込んだこと)だろうか。

 それと


「魔法少女ミルキークイーン。好きなお米はコシヒカリ!」


 確か宇迦之御魂神(うかのみたま)、俗に言うお稲荷さんの契約者で大変特徴的な名乗りだった。





 何時ものように罰音から聞いた所で待ち伏せして近づいてくる気配が懐かしかったのは彼女に似ていたからだろう。


 御劔人魅(みつるぎひとみ)、彼女の娘で私が死ぬ2年くらい前――2007年位――まで一緒に暮らしていた。

 この子は……しんどいかな。

 後でベル様に謝ろう。

 まあ元々人を減らすためのボランティアみたいなものなので許してくれるだろう。よくあることだし。

 とはいえ頼まれたことをしないのは心苦しいが。

 長生き?しているから縁のある人が多いので割とこういうことが多いのだ。

 ボクもすぐ諦めるし。

 無理に殺ってメンタルダメになっちゃったら元も子もないから。


 本当はこのまま立ち去るべきなのについ身体が動いてしまう。


 後ろからこっそりと近づき――




 ――此方を振り返れないように顔を固定して抱きついた。


「っ!!」

 すぐに離れようと藻掻くが結界で封じ込める。

 恐らく連絡できるなにかもあるのでそれも結界で封じてそのうえから偽装する。

 

 彼女諸共狙っているのか私に向かってくる弾幕も彼女にも当たらないように往なす。




 暫くして魔力切れか抵抗がなくなったので魔術を使って声を私に変える。


「久しぶ、おわっ!」


 肘がとんできた。これ以上暴れられても困るので地面に人がダメになる結界を張って押し倒す。

 そして――。


「久しぶり、人魅、私だよ、分かる?」


「その声で話しかけるな!」


「どうして?」


「……その人はもう死んだの……家族だったの!!だから…その声を使うな!!」


 家族…か……。


「そっか、それは良かった」


「貴様!!」


「違う違う、家族って呼んで貰えたことだよ」


「お前じゃない!!もう死んじゃったの……やめてよ……」


「1990年生まれだったから今はもう36歳か、大きくなったね、結婚した?子供はいる?まあ他にも聞きたいことはあるけど答えてくれないだろうから一方的に言わせてもらうと、今の人魅は結構幸せに見える、それを見れただけで私は満足かな」


 本当はもっともっと話したいけれど、誰かが異変に気付くかもしれないし、鼻もズビズビで涙声になりかけているから……それでもあと少しだけ……。


「うん、これで満足かな、お休み」


 そう言って軽く彼女の頬にキスをして魔術でそっと寝かせて、その場を立ち去った。


「ルナ……ルナ……いかないで……」


 ()()にはもう何も、聞こえない……。


 チラチラと魔法少女姿特有のかなり長くなった艷やかな金髪と銀色のメッシュが少し鬱陶しかった。



 その後に帰って、ベル様に報告して、ご飯を作って、食べて、寝る。

 お風呂は魔術。


 それがボクの日常。




 

第一部、一章 終

今日はもう一個閑話入ります

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