我が家
ブンブンと蝿が飛ぶ音が聞こえる…煩い。
「おい、羽の音じゃない。目ざましだ、起きろ!」
あれ蝿じゃない?今はヒトの姿か。
「ベルしゃま? ん、おはようございます。よいしyえっ? いてっ!」
ダラダラしていると布団から出られなくなるこの時期なのでこのまま起きようとすると腰が抜けていて起き上がれなかった。
「貴様あの程度でこのザマとは、軟弱だな」
カチーン
「あの程度ですか? 散々抱いておいて泣いても許してくれないのがあの程度ですか? 学校の前の日は程々にしてくださいって言いましたよね。乙女の身体は繊細なんですよ。この色欲魔」
「暴食の悪魔たるこの俺に色欲魔だと? 色欲魔は貴様だろ、最後はおねだりしてきたくせに」
「あれはベルさまが言わせたんでしょうかが!」
「だからなんだ? 喚いても貴様が可愛らしくおねだりした事実は変わらんぞ」
「先代の頃からずっとこれですよね。今回も初潮が来てからほぼ毎日じゃないですか? これを色欲魔と呼ばずなんていうんですか? ロリコンですか?」
「俺が何をしようと信仰によってしか俺の性質は変わらん。つまり俺は暴食の悪魔だ。それにお前はもう16だ、もう全くロリじゃない」
この屁理屈鬼畜悪魔め。
「はいはいボクが悪ぅございました。でもですよ、こんなことしといて次代はどうすつもりですか? ボクが俺だったら絶対嫌ですよ」
「俺も嫌に決まってるだろ。そもそも次代など存在せん」
やけに真面目な顔をして言う。
「そうですか、期待してますね」
ボクも頑張るから、そんな寂しそうな顔しないでください。
「あっ、支度しなきゃ」
「まだ5時だぞ」
「え? でも目覚ましは7時のはずじゃ?」
「俺が鳴らした。腹が減ったからな」
「それだけのために起こしたんですか?」
えっ本気で言ってるこのアホ悪魔。
「そう言ってる。何か作れ」
「巫山戯んなよ?」
思わず心の声が漏れてしまった。
「何か言ったか? それに貴様はもう睡眠などいらんだろう」
いるんですよ、精神的に。
「…はぁ〜分かりましたよ。何か適当に作ってきます」
「適当じゃなくて真面目に作れ」
ダメだなぁボク、この人に言われるとなんだかんだ許してしまう。明らかに理不尽なことを言われているのに疲れた身体に鞭打って台所に向かってしまっている。
これじゃダメンズウォーカーだ。あの人は今度から心のなかで製造品1号と呼ぼう。
「あれ〜先輩?おはようございます。昨日結構遅くまで声聞こえてましたけどもう起きてて大丈夫なんですか」
あっ、2号。こいつは元々だなうえにメンじゃなくてウーマンだし違うか、ってかデリカシーのかけらもねーな。
「お腹が空いたそうです」
「へぇ〜あんな激しそうだったのにこんな時間に起こされてメシ作るんだ? いい女すぎるねー」
知ってるよ。この口調バラバラウーマンはボクより一つ下で高一の安倍瑠流、キラキラネームだ。
彼女の両親曰くベルを入れたかったそうな。
このベルはバアル・ゼブル、俗に言うベルゼブブ様じゃなくてバアル・ペオル、ベルフェゴール様のことを指す。
彼女と瑠流、ボクとベル様の四人暮らしである。
ややこしいので普段はベルゼブブ様をベル様、ベルフェゴール様はバアル様と呼んでいる。
「ベル様呼んできて」
「はぁーい」
なんやかんや喋っているうちに朝餉が出来た。
大体いつも匂いにつられてバアル様がやって来る。
今日も例外ではないようだ。
「バアル様、おはようございます」
「ん」
なかなかに無口な方だが家ではボクの次に常識人と言える方で引き籠もりなことを除けば神秘的なサムシングにしては常識人だ。
ただ常識人といっても人じゃないうえに常識が分かるだけで常識に従うわけでもない。あとついでに知り合いの大罪の悪魔の中では1番らしい性格をしている。
つまり怠け者。
その後住人四人(二人と二柱)が揃ったので早めの朝餉を食べるとまだ眠かったボクは部屋に戻って二度寝した。
1-2 業界に広まっていないことを人に教えないでね




