若気の至り
すいません。投稿したと思っておりました。もし楽しみに待っていてくれた方がいらっしゃったら大変申し訳ない。
「今日は予定あるから、また今度話す。それでいい?」
「よくないが、訴えられたらたまらんからな、せめて送らせてくれ」
それくらいはさせてやるとボクは頷く。予定があるのはほんとだ。眠いから寝たいのと晩御飯作らなきゃ。あと人数が想定より多かったから食材が足りない……。
「スーパーよってく」
「……りょ」
家まで送ってもらうと既にベル様は帰っていて防音の結界が張ってある。ドアを開けると爆音でギターや声が響いていた。
リビングの扉を開けると机の上にビールやお菓子のゴミが散乱してあり、お惣菜の蓋とかも見えるから勝手に食べていたみたいだ。ベル様だけは食べずに椅子に座って待っている。
なるべく見ないようにしても目に入るギターを弾いている私の身体。可愛すぎて見ていられず逃げるように料理を作った。
ベル様が食べ終わったあと食器を回収してから熱唱している元妹といろんな楽器を魔法で弾く月読様をおいて風呂などの諸々を仕上げ、寝室に向かった。
ベル様はついて来なかったのでもう寝てもいいのだろう。
私はこれが明晰夢だとすぐに分かった。私が私だから。
いつも見る夢、自分に呪詛を吐きながら死んだ人、諦めたように抵抗しない人、最期まで抗い続けた人、死んだことにも気づかない人、そして殺されながらでも私に大切ななにかを託して逝った人。
殆ど顔を思い出せないが鮮明に覚えている人もいる。
一番古いのは俺が死ぬ少し前くらいの記憶、今となっては若気の至りとしか言いようがないが、派手に悪役をやっていた。
最初は人を殺すたびに吐き気がした。初めて人を殺したときはベル様に気絶させられないと寝られなかった。暫らくしてやっと少し楽しいって思えたんだ。
そう思わないとやっていられなかった。先輩――月読の巫女――の心配そうな表情も心地よかったからか、狂ったように人を殺し続けた。いや、狂っていた。
そんなボクでもベル様は何も言わずに黙って見ていた。あの月読様が珍しく真剣にベル様の胸倉?を掴んで怒っていたのを覚えている。
40をすぎた頃からは虚しくなった。人を殺しても楽しくない。それからは美味しい人間だけを食べていた。
勿論美味しい人間は強かったし頭も良かった。
一瞬で山が吹き飛ばされることもあるし数を揃えて来ることもあった。それでも最強格の一には届かない。
そして60過ぎに●●に殺されるまで人を殺し続けた。
そして、次に目を開くと私は産声をあげた。
今はもう大丈夫。人を殺しても何も思わないから。




