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再挑戦③

 すると、猪貝は地面を指さす。

「これよっ」

「どれよ?」

「どれって……、もうっ、鈍感なんだから。地熱よ、ち・ね・つ」

 確かに、地熱を使えばうまく料理できるかもしれない。試しにヌルヌルを解除した状態で地面に触ってみる。

「うおっ。やっぱ熱いな。でも、これだとまだ熱としては弱いんじゃない?」

「だから、掘るのよ」

「掘る? 何もないのに?」

「何もないなら作ればいいのよ(二回目)」

 結局俺は猪貝の言うとおりに岩魔法でスコップを作って掘り始める。

 でも、スコップでほれる量はそこまで多くないので、全然掘り進まない。


「これじゃぁ、埒が明かねぇからなんとかしねぇとな」

 額から滴る汗を手でぬぐう。

「ファイトーっ。がんばっ」

「ファイトじゃねぇぇ。こちとら掘っている途中に腰を痛めたんじゃぁぁ。お前もやれやぁぁ」

「だって私、パワーがあるわけじゃないんだもん。か弱い女の子だよ?」

 そして、猪貝は右目をパチッと閉じてウインクをしてくる。普通だったらうれしいのかもしれないけど、こうやって使役されてる時だとなんとうざったらしいことだろう。

 

 さすがにこのまま掘り続けてさらに腰を痛めたら、今後のダンジョン探索に支障が出ると思い作戦変更をする。

俺は岩のスコップを地面に突き刺し、俺が掘った浅い穴から出る。

「ちょっ。まだ終わってないわよ」

「まぁまぁ。いいから見てろって。いいこと思いついたからさ。汚れたくなかったら離れてた方がいいよ」



 猪貝が離れたのを確認してから俺はスコップの柄の部分に手をかざして

「岩魔法ッ」

と叫んだ。


 すると、スコップの先が地中で形を変え、膨らみ始める。そして変形したスコップの先っぽは地面を突き破って顔を出す。それに追い出されるようにして土が勢い良く舞い上がり、大きな穴が開く。


「な、何をやったの?」

 驚いた様子で聞いてくる。

「地中で、スコップの先を変形させてバランスボールみたいなものを作ったのさ。そしたら体積が増える分、土が追い出される形になるから穴が開くって寸法だ」



 なんやかんやで下準備も終わったので、調理を開始する猪貝。

 採取したダンガンラビットの肉を短剣でうまくさばいていく。捌き終えると、カバンからいくつかの調味料を取り出す。

「なんで調味料持ってんの?? 重たくない?」

「もっと強いダンジョンに潜る人は調味料とか一式そろえて持ってく人もいるみたい。時間がかかるから。でね、それを見習って少しだけ持ってきてたの」


 そうか、それで荷物が多かったのか。


「だったら、俺も荷物を持っていくから。今度からはちゃんとそういうことは共有すること、仲間だろ?」

「だって――私は今のところあんたに助けてもらってばっかりで……」

「大丈夫、食べ終わったらもう一回ダンガンラビットに挑戦しよう。ランクも上がったことだし次は猪貝にも戦ってもらうしさ」


 先ほどのダンガンラビットを倒したことで猪貝のランクが10になったらしい。10になったことでスキルポイントもある程度貯まっただろうから何かのスキルを手に入れれば戦力になる。


 こんな感じのやり取りをしながら、調理をすすめた。と言っても下処理と味付けさえ終われば、あとは地中に鍋を埋めて数分待つだけ。

 

 で、できたのはダンガンラビットの蒸し焼きだ。

 鍋を地面から掘り返し、ふたを開けると中から蒸気と香辛料の匂いがあふれだす。

 ダンジョン探索で疲労し腹が減っているせいかいつもより強烈なにおいに感じられた。

 そしてその香りは鼻孔を刺激し食欲を掻き立てる。


「「じゃぁいただきまーーす」」

 両手をぱちんと合わせ、ダンガンラビットに感謝を示してから食べる。


「うん。うまいっ。鶏肉みたいな味なんだな。意外とクセがないから食べやすい」

「ほんとにおいしいっ。初めて作ったけどよく出来てる」

「いや、初めてだったんかい。に、しちゃぁうまく出来てるけども」


 こんな感じに栄養補給もできたので、探索を再開した。


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