宮廷から追放された魔法技術者の俺だけど、隣の国に拾われたので魔法兵器を作って元いた国に攻め込みます。後悔しても今更遅い!
俺はヨルバ。ルマナ王国に非正規雇用の技術者として雇われている。
本当は正規の技術者として働きたかったが、今でも、それはかなっていない。
ドラゴンに乗れない、ただそれだけのために。
この国の学校では、入学試験に「ドラゴンに乗る」ことが科せられる。
俺はそれが出来なかったために、学校に行けなかったのだ。
今は、王都ルマノポリスの城にいる。隣のハスマニア王国と戦争になるので、この国の王、ドラゴシスがその武器のアイディアを募集するというのだ。
何でも、このルマノポリス城で迎え撃って、敵が疲れた所を一気に逆襲する作戦なんだそうだ。
俺は数年間かけて、一生懸命自分なりにできることを考え。
ドラゴンに乗れない自分が、技術者として王国に尽くせる方法をあみだした。
強力な魔法兵器の設計図と、その模型だ。これさえ完成させれば、必ず王国の助けになるだろうと思っていた。
集まった人々の中には、俺の知り合いも数多くいる。彼らが口々に王に提案した。
「城壁をドラゴンに守らせましょう。そうすれば敵は城壁を登ってこれません。」
「敵は魔法などと言う遅れたものを未だにつかう、ただの野蛮人です。」
「そうとも。ドラゴンさえいれば、この国は完璧です。」
「敵は沢山兵隊を引き連れてくるようですが、ドラゴンとこの絶対不落の城壁がある限り、何度攻めてこようとも同じです。」
皆がドラゴンのうまい使い方を考える中。
「ヨルバよ。お前はどんな方法を思いついたのだ?」
ドラゴシス王が俺に問いかけた。
「魔法を使った兵器を考えました。きっと王国の役に立つと・・・」
俺なりに考えた、とっておきの傑作を王に見せる。
ところが、王は、俺が一生懸命考えた設計図を、びりびりと破り捨て、兵器の模型を投げ捨てた。
「魔法だ?そんな野蛮な物を考えるなんて、貴様は王国の恥さらしだ。」
「な、なにを!?」
王は気に入らなかったようだ。顔をしかめてしまった。
「そうだ。ヨルバはドラゴンに乗ることが出来ないからって、魔法なんて言う野蛮で時代遅れな物にすがっているだけだ。」
「こいつはドラゴンに乗れなくて、学校に落ちたからな。」
「こいつは無能だから、正規の技術者として働けないんだ。」
周りの知り合いからも、ののしられる。
「そんな!?俺は俺なりにできることを・・・、」
「問答無用だ!ドラゴンに乗ることが出来ず、学校にも落ちたお前に価値なんてない!」
ドラゴシスが俺をどなりつける。そして、「今まで期間雇いとして情けで雇ってやったが、それでは不満と見える。ならば追放だ!この穀潰しを城から叩き出せ!」
「そうだそうだ!王様の言う通りだ!役立たずは出て行け!」
周りも皆王に賛同しているみたいだ。
「・・・俺を追放したこと、後悔しないでくださいよ。」
こうして、俺は追放されてしまった。
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これから、どうしようか。
考えた末、俺は隣のハスマニア王国に向かうことにした。
噂だと、魔法使いがたくさんいるらしい。
もしかすると俺を雇ってくれるかもしれない。
夕方、国境の川を越え、ハスマニア王国に入る。
―戦場の跡だろうかー
ときどき、なにかが焼け焦げたようになっている。
川べりに、人影をみつけた。
少女だ。
美しい長い茶髪、澄んだ黒い瞳に、幼さの残る顔。
小柄ですらっとした体系。10代前半に見える。
そして、黒い帽子に、上下の黒い服。大きな杖。
一目でわかる。
魔法使いだ。
こっちに気付いたようだ。
「あなたは・・・?」
あまり元気がなさそうだな。何かあったのだろうか。
「俺の名は、ヨルバ。ルマナ王国の技術者だったんだけど・・・その、まあ、クビになったってわけで。この国に、仕事を探しに来たんだ。」
「仕事?」
「ああ。俺は、魔法を使った道具を考えたりしてるんだ。」
俺は彼女の隣に座りこんだ。
「魔法・・・ですか。それだったら、この国ならたくさんあると思います・・・。」
彼女はふさぎ込んでしまっている。
「君も、魔法使いだろ?」
どうやら、魔法と言う言葉を、あまり聞きたくないようだ。何故だろう?
「・・・。」
うつむいたまま答えてくれない。
気になるので、更にたずねてみる。
「何か事情がありそうだね。」
彼女はしばらく黙りこんだ後、静かに話し始めてくれた。
「・・・聞いてもらって、いいですか?」
「ああ。聞かせて。」
「わたし、アリサっていいます。ヨルバさんの言う通り、魔法使いです。」
やはりそうなのか。
「でも・・・わたし、魔法が使えないんです。使っちゃいけないんです。」
「使っちゃいけない?」
「はい・・・。」
話しながら、彼女の顔はどんどん暗くなっていくのがわかる。
「わたし、ただ魔力があるだけの役立たずなんです。」
いきなり何を。
「魔力だけが取り柄の魔力馬鹿で、魔法を使うと、四方八方が爆発するんです。」
アリサの声にはどんどん声がこもり、とうとう泣き出してしまった。
「どんなに、どんなに練習しても、うまくならないんです!魔法を使いこなせないんです!」
「ぐすん・・・だから、魔法を使うことを、お城から禁止されてるんです。ちゃんと使えるまでは、周りに被害が出るからダメだって・・・」
時々破壊されたような跡があるのは、てっきり戦場になったからだと思っていたけど、アリサの努力の跡だったのか。
俺はアリサの髪をなでてやる。
「ごめんなさい。いきなりこんなこと。言ってしまって」
「今まで、誰にも言えなくて。・・・でも、ヨルバさんが聞いてくれて、スッキリしました。」
魔法を使いたいのに使えない。どんだけ努力しても報われない。それはどれだけつらい事なのか、俺にもなんとなくわかる。
「俺でよければ、助けになるよ。」
「ヨルバさん・・・?」
荷物から50センチほどの筒を取り出す。
「これは、小型の魔法筒だ。魔力を込めたら込めただけ、遠くに飛ばすことが出来る。ほんの少しだけ、魔力を込めてみて。」
「はい。」
俺は、アリサに筒をわたす
アリサが目を閉じる。魔力を込めているようだ。
筒の中が青白く光りだす。だが爆発する気配はない。
「緊張しなくていいよ。反動があるから、足をしっかり踏ん張って。」
俺はアリサの後ろに回り、彼女を支える。
震えていた肩が、止まる。
「そのまま、上に向けて撃って!」
「はい!」
バシュッ!と鋭い音がして、魔力の束が一瞬で上空に見えなくなった。
魔力の通った後は、夕焼け雲に穴が開いている。
「・・・すごい!これを、わたしが?」
アリサは何が起きたかわからないという感じだったが、われに帰ると顔が明るくなった。
「うん、成功だ。もっと魔力を込めれば、より大きな力が出せる。」
「ヨルバさん、わたし・・・わたし・・・!ちゃんと魔法が使うことができたんですね!」
よかった。アリサの顔にもう涙は無い。
空がぱっと光る。アリサが撃ちだした魔力が、散らばって消えたようだ。
「きれい・・・」
「うん。アリサの作った光。きれいだよ。」
「・・・」
アリサの顔、少し赤くなってる?
ほんの少しの魔力を込めただけなのに、空の向こうまで突き抜けて行った。
おそらく、空の彼方、星のあるところまで飛んで行ったかもしれない。
「アリサは役立たずなんかじゃない。これだけすごい魔力があるんだから。」
「ヨルバさん・・・」
「そうだ。この国の王様にも掛け合ってみよう。魔力を制御できるなら、アリサが魔法を使う許しをくれるかもしれない。」
「はい。全部ヨルバさんのおかげです。わたし、ヨルバさんのおかげで、自信を取り戻せました。」
元気になってくれてなによりだ。
気付けば、アリサが俺の肩にしなだりかかってきた。魔法を使ったから、体力が消耗したのだろう。
俺はアリサの肩をそっと抱きながら、暮れゆく空をしばらく眺めていた。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
数日後、俺とアリサはハスマニアの王都、オドリンの王宮にいた。
この国の王、ハテフに面会するためだ。
「そなたならアリサの魔法を制御できると!?」
ハテフ王は驚いている。
周りもざわついている。
「はい。何度か試しましたが、この道具によって全て成功しました。」
「本当か・・・?にわかには信じられんが、余の前で見せてもらおうか。」
ハテフ王は半信半疑の様だ。
でも、ルマナでされたように、話も聞かずに否定するわけではなさそうだ。
俺たちはハテフ王に連れられ、城の屋上に来た。
そこで俺は、初めて会った日のように魔法筒を取り出して見せた。
「これが、その魔法道具です。アリサ、この前みたいに、空に撃ってみて。」
「はいっ。」
ハテフ王をはじめ、周りがアリサに注目する。
アリサは筒を空に向け、魔力を放った。
鋭い音とともに、光が眼にもとまらぬ速さで空に飛んでいく。
爆発は、やっぱり起こらない。
「な、なんと・・・!?」
ハテフ王はびっくりしている。
「おおっ!本当だ!」
「あたりが爆発しないぞ!」
「一体どういう仕組みなんだ!?」
周りの人も同じようだ。
「ごらんの通りです。もっと大きな力を込めて撃つものも作れます。王様、アリサに魔法を使わせてあげてくれませんか?」
ハテフ王は語りだした。
「余はな、本当は、アリサの魔力を、なんとか使わせてやりたいとは思っておったのだ。しかし、わが国には、強すぎるアリサの魔力を制御する術が無く、そのまま使えば周りに被害が出ることを、王として見過ごしにはできなかったのだ。」
「ゆえに、今まで封印しておくしか無かったのだ。そなたのおかげで、アリサの魔力を使いこなす方法が、ようやく見つかった。余からの頼みだ。ぜひともこの国で、正式な魔法技術者として働いてくれ。」
「ありがとうございます!よかったね、アリサ。」
アリサの顔がぱあっと明るくなった。
「はい!わたし、ヨルバさんのおかげで、居場所が見つけられました。」
「いやいや、俺はただ道具を考えて作っただけだよ。」
「ヨルバよ。そなたを見込んで頼みがある。」
「はい。」
「そなたは、故郷に未練はないな。」
王様が何を頼もうとしているのか、俺には予想がついていた。
・・・それはすなわち、故郷ルマナとの決別を意味することも。
「ルマナに未練はありません。今はこのハスマニアのために働きます。」
王はそれを聞くと、しばらく黙った後に口を開いた。
「我が国は、まもなくルマナ王国に攻め入るつもりだ。だが、ルマナポリス城の城壁は大昔の魔法で守られているらしく、我らの魔法兵が魔法をぶつけても、びくともしない。しかも、城壁はドラゴンで守られていて、とても近づけない。そなたには、これを打ち砕く兵器を作ってほしい。」
「承りました。」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
俺の提案した魔法兵器は、王立の兵器工場で作られ、それぞれ配備された。城壁を打ち砕く巨大な大砲―トプカ砲と名付けられた―と、ドラゴンを退ける別の大砲だ。
その知らせは、ハスマニア中、そして近隣諸国を駆け巡り・・・
「ヨルバとかいう者がアリサの魔法を使った新兵器を作ったらしい」
「これまで幾度となくルマナポリスの城壁とドラゴンに阻まれてきたが」
「そのヨルバとかいう者の新兵器のおかげで、今度は勝てるかも知れないぞ」
「今までは日和見をしていたが、今回はハスマニア軍に加わろう」
ハスマニアの大軍が、ルマナポリス城攻略に向けて出陣した。
「ヨルバの新兵器のおかげで、今回は今までよりも多くの兵が集まった。そなたにはどれだけ感謝しても、し足りぬな。」
「そうですよ!ヨルバさんはもっと誇っていいんですよ!」
ハテフ王もアリサもそう言うけど。
俺はアリサの魔力を制御しただけだ。そんな大したことはしていないさ。
―――追放側 ルマナ王ドラゴシス――――
敵が現れたという報告に、ワシことルマナ王ドラゴシスは城壁から見下ろす。
―ずいぶんと数が多いな。―
「なあに、雑魚が何万人せめて来ようとも、ドラゴンと城壁をやぶれはせん。」
ワシがそう思っていると。
兵士から声が上がった。何事だ?
「おい、なんだあれは?」
「巨大な・・・筒・・・大砲!?」
大砲だと!?
「馬鹿な!奴らに大砲を作る技術なんか無かったはずだ!」
ワシは驚き、思わず叫んだ。
ただの大砲ではない。
長さ15メートルはありそうだ。
砲口は1メートル以上、人間が収まるかもしれない。
それを、同じく巨大な台車に載せて馬で引っ張っているようだ。
「なんという大きさ・・・我が国の大砲の10倍はある・・・あんな物、一体どこから!?」
待て。
あの筒の形、どこかで見覚えがある。
ワシは考え、思い出す。
そういえば、前にいたヨルバとか役立たずが持ってきたガラクタ、あんな形では無かったか。
「まさか・・・あの穀つぶしがあれを作ったとでも言うのか!?」
―――ハスマニア軍陣地 ヨルバ視点―――
「ヨルバさん、いつでも大丈夫です!」
「アリサ、はじめて!」
「はい!」
アリサがトプカ砲の砲身に手を当て、魔力を込める。
青白い光が、砲口から漏れ始める。
このトプカ砲はとてつもない魔力を放つため、アリサの魔力でなければ到底足りない、いわばアリサ専用の大砲だ。
しかも大きすぎるため、俺とアリサの二人がかりだ。
俺は城壁に狙いを定め、引き金を引く。
ドオオオン!
すさまじい音とともに、光のかたまりが飛び出し、
ルマナポリス城の誇る城壁に大穴が開いた。
「おお!」
「こ、これまで千年にわたって攻撃を寄せ付けなかった城壁が・・・一瞬で!」
「これが・・・ヨルバさんの新兵器の威力!」
味方の兵士が感銘を受けているみたいだ。
ドオオオン!
ドオオオン!
ドオオオン!
命中するたびに、城壁が吹き飛んでいく。
我ながら、すごい威力だ。
逆にアリサのことが気になる。
「アリサ、魔力は大丈夫?少し休憩してもいいよ。」
「ありがとうございます。でも全然大丈夫。ヨルバさんのおかげで、たまっていた魔力を放つことができているので、今すっきりしてます!むしろ・・・」
「うん?むしろ?」
アリサは控えめに続ける
「あの・・・もうちょっと、派手に魔力を撃てるのは無いんですか?」
いやいや、もうちょっと派手なのが良いって。
「・・・時間をかければ出来なくはないけど、それ使うと多分街丸ごと消し飛ぶから、今回は使えないかな。あくまで占領が目的だから。」
「そうですか、・・・。」
アリサは少しだけ残念そうだ。
いや、それでしゅんとされてもなぁ。
―――ルマナ王国 ルマナポリス城内 ドラゴシス王視点―――
「そんな・・・!そんな馬鹿な!完全無敵の城壁が、一撃で吹き飛ばされただと!」
一体何が起きているんだ!
大砲のあたりに目をこらすと、ヨルバの姿が見えた。やはり奴のガラクタか。
城の兵士も動揺しているようだ。
「城壁がやられた!」
「ドラゴンの鎧でできているから、大丈夫なはずではないのか!?」
「魔法使いとかいう野蛮な奴ら相手になぜ!」
―まだだ、まだ負けたわけでは無い!―
「城壁を修理しろ!」
ところが。
「兵が足りません。城壁はドラゴンが主に守っていますが、ドラゴンに城壁は直せません!」
「なにい!」
うろたてはならない。
ワシは次の策に打って出る。
「ドラゴンを敵陣へ突っ込ませろ!あの大砲を破壊し、魔法使いどもを蹴散らしてやる!」
ワシの命令とともに、城壁を守っていた数十匹のドラゴンが、上空から一斉に敵陣に襲い掛かる。
あっというまに、敵陣が崩れていく。
そうだ。ワシは何をうろたえているのだ。ドラゴンさえあれば、負けはせぬ!
魔法使いどもはドラゴンが怖いのか、大砲の近くから前には出てこないようだ。
「ならばワシの方から出向いてやる。最後の切り札、エンシェントドラゴンを出せ!」
ワシはひときわ巨大な竜、エンシェントドラゴンをくりだす。
目標はあの大砲だ。
よくみると、ヨルバの奴の傍らに女がいる。
何か細工をしているようだな。魔法使いか?
よし、ヨルバの奴より先に、あの女を八つ裂きにしてやる。
―ヨルバの奴め、自分がいかに役立たずかを思い知るがいい!―
ワシは竜の群れとともに、ひときわ大きなエンシェントドラゴンにまたがり、ヨルバの奴を目指す。
―――ハスマニア軍陣地 ヨルバ視点―――
「味方の前衛、総崩れです!」
「情けない!前衛は何をやっているか!」
ハテフ王が怒っている。
敵のドラゴンが、前方の味方を蹴散らしてこっちに向かってくる。
目標はこのトプカ砲と。
アリサだろう。
「王様、目標はこの大砲と思われます。・・・念の為、確認しますが、味方にドラゴンはいませんよね。」
「・・・あいにくな。」
「いえ。むしろ好都合です。心置きなく、ドラゴンを倒せます。」
「ヨルバよ、頼んだぞ。」
「お任せください。」
迫りくる数十匹のドラゴン。体長十メートルはあるだろうか。
「アリサはそのままトプカ砲に魔力を込め続けて。最後にすごくデカいのが一匹くるはずだ。」
「はい!」
俺は対ドラゴン用兵器の指揮を執る。
トプカ砲の後方から、台車に乗せられて対ドラゴン用兵器が、何台も姿を現す。
台車の上に、ワイングラスのような形をした物が乗っかっている。
その「グラス」の細い部分は、「ワイン」をためる内側の部分まで貫いている。チューリップの花のような形だ。
奇抜だが、これも大砲の一種だ。
この「グラス」の中に魔力を集め、真ん中の細い部分からドラゴンに向かって長時間放ち続けるのだ。
「魔力注入、開始!」
1台につき数十人の魔法使いが、魔力を注入し始める。
数十人が束になっても、アリサの魔力には到底及ばない。
おそらく城壁も破れないだろう。
だが、ドラゴンを撃ち落す位はできる。
「各砲、準備出来次第撃て!」
キーン!という鋭い音とともに、青白い細い光がドラゴンに向けて浴びせられる。
のたうちまわりながら、次々とドラゴンが倒れて行く。
「すごい!ドラゴンがまるでただのハエみたいだ!」
「味方にドラゴンがいなくてよかった・・・」
味方から歓声が上がる。
異変を感じて逃げようとするドラゴンもいるが、複数の光に挟み撃ちされ、あえなく倒れる。
数十匹のドラゴンの群れは、数分とかからず全滅した。
「普通のドラゴンは倒したか。・・・さあ、来るぞ。」
ドシーン!ドシーン!
突然、地響きがした。
そして、ひときわ大きな黒い影が見えた。
「ヨルバさん、あれは!?」
アリサが思わず声を上げる。
「・・・あれは、エンシェントドラゴン。ルマナ王国の最終兵器だ!」
今までのドラゴンとは、けた違いの大きさ。
「体長100メートル位はありそう。ドラゴンと言うより、まるで山みたいですね。」
「うん、俺も見るのは初めてだけど、こうして見ると確かに山みたいだな。」
そう、ラスボスのお出ましって訳だ。
小さいドラゴンを撃ち落していた光線が一斉にそいつに放たれる。
だが、効果はなさそうだ。
「他のドラゴンを瞬殺した光線が効かないぞ・・」
「なんて大きさ、大きすぎる・・・」
兵士からそんな声が漏れるが。
効かない事位は想定内だ。
「そう、大きすぎる。大きすぎて、重くて空が飛べないんだ。」
ならば、やることは一つ。
「トプカ砲であれを仕留めるまでだ。アリサ、入れられるだけ、ありったけの魔力を注ぎ込んで!」
「はい!」
トプカ砲の狙いをエンシェントドラゴンに定める。
いや、定めるまでも無い。
大きすぎて。どこを狙っても当たりそうだ。
「アリサ行くよ!」
「はい!」
俺は傍らにいるアリサの肩にそっと手を触れる。
そして、今にも襲い掛かろうとするエンシェントドラゴンに向け、引き金を引く!
ドオオオン!
「命中した!効いてる!」
ガオオオオという咆哮をあげて、エンシェントドラゴンが苦しむ。
ドオオオン!
ドオオオン!
ドオオオン!
のたうちまわる巨大ドラゴンに、次々に砲撃を叩き込む。
「トプカ砲、ましてやアリサなんかには、絶対に近付けさせない!」
何度も体勢を立て直そうとする奴に、その隙を与えない。
やがて、ひときわ大きな断末魔の咆哮とともに。
ズシーーーン!という地響きがひびき。
エンシェントドラゴンが倒れた。
「エ、エンシェントドラゴンを倒した・・・。」
「やったー!やったぞー!」
「うおおおおおお!」
味方から歓声が上がる。
「ヨルバさん!やりましたね!」
アリサが抱き着いてくる。笑顔がまぶしい。
「ヨルバよ!よくやったな!そなたの魔法兵器のおかげで、今や城壁もドラゴンも倒すことが出来たぞ!」
ハテフ王も喜んでいるようだ。
「いやいや、アリサや他の魔法使いたちが頑張って魔力を注入してくれたおかげですよ。」
「ああ。もちろん、アリサたちにも感謝しているぞ。」
「「ありがとうございます!」」
「ようし、一気に城を攻め落とすぞ!全軍突撃!」
ハテフ王の声が響き、雄叫びとともに一般兵たちが城に向かって駆け出していく。
最早ルマナポリス城には城壁もドラゴンも無い。ルマナ側の兵は完全に戦意を喪失したようで、兵が城から散り散りに逃げ出しているのが見える。
流石に魔力を使って疲れたのか、ぐったりしたアリサを、俺は抱える。
「流石にちょっと疲れました。ヨルバさん、少しの間、こうしておいてもらえますか?」
「うん。アリサ、お疲れ。」
アリサは俺の腕の中で、すうすうと息を立てている。
「・・・あなたに会えて、本当に良かった。これからも、ずっと一緒に居たいです。」
小声でも突然そんなことを言われると、俺もドキッとするんだけどな。
―――ルマナポリス城 ドラゴシス王視点―――
「エ、エンシェントドラゴンが、倒された・・・」
「他のドラゴンも全滅だ!」
「敵が突撃して来るぞ!」
「もう駄目だ、逃げろー!」
なんとか逃げ帰ってきたが、ドラゴンは全滅したようだ。
兵の声が聞こえる。味方の兵が我先にと逃げていく。
ワシは有能だ。無能な奴らはみんなクビにしてきた。ヨルバの奴と違って穀潰しなどでは断じてない。
有能なワシにだからこそ、今の状況がどのような物かがわかる。
―最早これまでだ。―
「なぜだ!なぜワシが負けねばならぬのだ!有能なこのワシが!」
ワシは剣を抜き、迫りくる敵の大軍に向かって一人駆け出して行った。
―――後日談 ヨルバ視点―――
あの後、俺とアリサは、ハスマニア軍に占領されたルマナポリス城に入った。
ルマナ王ドラゴシスは行方不明になった。捕虜の証言から、おそらく戦死したのだろうということだ。ルマナ王国は滅亡し、ハスマニア王国に併合されることになった。
俺の知り合いも皆行方知れずだ。戦死したか、捕虜になったか、あるいはどこかへ逃亡したのか。この先もわからないだろう。
「ヨルバよ。次にそなたたちに頼みたいこと、わかっておるかな。」
「はい。破壊されたこの城、この街、魔法の技術で見事修復してみせます。」
ルマナポリスはこの地方で一番大きい街だった。ハテフ王はこの地に、新たな王都を建設するのだという。
俺がかつて落ちた上級学校は、魔法学校に改装されるそうだ。
俺は王立の魔法兵器研究所所長になった。アリサはその直属の部下だそうだ。
そして。
「ヨルバさんはまだハスマニアの事はよくわかんないと思いますから、わたしが色々教えてあげます!」
・・・だそうで、アリサと一緒に住むことになった。
これから、色々な所を案内してくれるらしい。
アリサが魔法の練習をしていた場所には、今でもたまに二人で出かけている。
そして、魔法筒を空に放ってみたりする。
最近は、撃った後によくぐったりして俺にもたれかかってくることが多くなった。
魔法の撃ちすぎで、疲れ気味なのかな?
表面上は、すがすがしいような顔に見えるんだけどな。
俺と話すと時々顔を赤くしたりするし、今度、その辺をじっくり聞いてみようと思う。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
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と思ったら
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面白かったら☆5つ、つまらなかったら☆1つ、正直な感想でもちろん大丈夫です!
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