第4章 ヘッドライトが……
「こんにちは!」
その男性はいきなり大声で声をかけてきた。
「あなたが『180km歩く旅』の挑戦者なんですね。」
「まあ、そうですが。」
剛はあっけにとられてしまった。その男はいったい何を考えていきなり大声を出したのか。どのような人なのか知りたくなった。
「あの...。お名前を聞いてもよろしいでしょうか。」
「あー、私は、中上誠也と申します。うちの同級生の雅子さんがお世話になっております。」
「雅子さんとは仲が良かったんですか?」
「ええ、すごく仲が良かったです。」
「どのような関係で仲が良くなったのですか?」
「あのーーそれは秘密ということでよろしいでしょうか。」
「まあ、いいですけど。」
「そんなことより! 早く出発しましょう。もう時刻は16:40分ですよ!! 早くいかないと間に合わないよ! タイムリミットは明後日の正午。あと43時間20分しかないよ。早く! stand up!」
うるさいなー 剛は内心そう思った。そして息を大きく吐いた。
「じゃあ行くか!」
そして二人は北山峠に向かって歩き始めた。あと20kmだ。ふたりは速足で歩いた。
「21:00までには到着できるといいですね。」
「そうですね。」
二人は鉄道の走る線路を横に見ながら歩き続けた。そして電車が通るたび、乗りたいと思ってしまっていた。
「あの電車に乗ればすぐにつくのに。」
そこから二人は無言で歩き続けた。しゃべる気力もなかった。しかし横に一緒に歩いてくれている存在があるだけ相当な力になれた。そして1時間も歩き続けると6km地点に到達した。夕日を横目に見ながら二人は会話を交わした。
「夕日綺麗だなー。こういうのを見ると達成感が湧くんだよ。」
そして二人はあることに気が付いた。
「そういえばヘッドライトがない。」
「懐中電灯もないのか?」
「ああ、無いんだ。」
「実は俺もないんだ。」
「仕方ない、歩き続けよう。」
もう道路は完全なる山道に突入していて車はほとんど通らず街灯もほぼないので、命がけだった。そこからも一気にペースが落ち、次の1時間では、3kmしか進めなかった。もし1人で歩いていたらどうしようと剛は冷や汗をかいた。
さらに歩いていると急に額に激痛が走った。
「道路標識だ!」
「大丈夫ですか?」
あまりの疲労とともに、気が遠くなった。しかし肩を組みあいながらなんとか歩いていると、道の駅が見えてきた。そして道の駅に倒れこむと道の駅に入った時刻は19時だった。
「すいません。新毛原まであとどのくらいありますかね?」
「あと、10kmぐらいですかね。」
とりあえず二人は椅子に座った。すると、誠也はこおりをかってきてくれた。早速それを額に置いた。
次にヘッドライトを2個買ってきてくれた。お金は全額負担してくれた。
「ありがとうございます~~~~!」
剛は神に祈りをささげるかのように手を合わせて祈った。
「別に大したことないですよ~。」
そして、疲れが取れるまで休むことにした。
第5章へ続く。