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視線がぶつかる?

次の日。

いつものように図書館に寄りこんで、小難しい本を手に取ろうとしゃがみこんでジャンプの体制。いっせーのーでっ

「あ〜ら、今度はどれっ? 」

ぬっと飛び出す高い壁。まーた職員の矢倉さんか..............

「いや、これぐらい届きますって..............」

「まーたまたまた無茶しちゃってー。うーんと、これだ! たぶん!!」

「..............もうそれでいいです」

その4つ隣のが欲しかったんだけどな..............まぁいいやもう..............

とりあえず書架から引っこ抜いてもらった本を小脇に抱えてテーブルに着く。えっ、足が浮いてる? そんなことはどうでもいいんだよ、ってか言うな。

ふむふむ..............なるほど.....................うん、わからん。けど難しいってことは分かる。えっへん。

(とはいえ、分からないものを無理やり読み続けるのも苦痛だ..............)

軽い目眩を感じた僕は、席を立って早々とその本を戻しに行く。

案の定..............というか何故か待ち構えていた矢倉さんに本を手渡して返架してもらうと、哲学書のコーナーを離れて軽読書のコーナーへと足を進める。..............たまにはこういうのも読みたいんだよい.......


さて、何かいい本は..............お?

本棚の影でぴょこぴょこと動く頭。なんだろう..............すごく見覚えがある。具体的には昨日の夕方ぐらいぶり。

「やぁ?」

思いきって話しかけてみると、

「ひゃあんっ!?」

あ、飛び上がった。

「び、びっくりさせないでよっ、..............って、あれ? 」

「あ、ども.......」

「きっ、」

ん? 固まった.......?

「きのう、のっ、」

ギギギと音がしそうなぐらい鈍い動きで手を伸ばしてくる。そしてそのまま肩を掴まれて、

「..............おねがい、昨日のこと、忘れてくれるかな?」

「え? 鳥のヒナを助けたこと?」

「そっちじゃなくてっ!! その..............肩車のあとのっ」

「ああ、あのレモン色の」

「言わないでっ!?」

一歩踏み込んで声を張り上げる。そこら中の視線がなんだなんだと問いかけてくる。それを二人して両手で制して、

「..............いや別に言いふらしたりしませんけど..............」

むしろ言いふらす方が変態だろ。噂だと、その日の「色」を言いふらす奴が居るらしいし、むしろ見せつけて歩く変態もいるって聞いたけど..............

「なら、よかったぁ」

ホットする様子の向こう。..............っと、その前に欲しい本があるんだった。えーっと、どこだ..............

「ん? さがし物?」

「ええ、まぁ」

うーん、多分この辺なんだが..............見えない..............上の棚か? だとするとここからじゃ見えないし、また人手を借りなきゃ取れないし..............

「ねね、なんて本探してるの?」

「ん? あぁ、『クマとリンゴの時計台』っての」

「えっそれここの図書館にあるの? 小学生のちっちゃい子向けの本だよね?」

むかっ。自分もちっちゃいくせに。あと誰が幼稚園児だ。

「いたっ!? な、なんで蹴るのっ!?」

「なんとなくムカついたから。で、そっちは何を探してんの? 」

「あー、私は、『砂漠のバラ』っての」

「あーあれね」

請求番号はほぼ同じだし、この辺にあっても良さそうだが..............

「あっ、あれじゃない? 」

そう言われて指さすその先を見るけれど、僕の視界からは本棚の天板の底しか見えない。

「いや見えないって。でも、そこにそれっぽいのがあるんだな? 」

ちょい癪だけど、またあの姉さん呼んできて取ってもらうか..............トホホ.......

「あ、待って、」

「.......なんだよ?」

「これもしかしたらさ、もしかしたらだけど..............肩車したら届かないかな?」

「.....................へ? 」

思わず、そいつと本棚を見比べる。確かに昨日の木よりかは低いけど..............

「..............大丈夫なのか? 人目もあるし.......」

「うん? 大丈夫だと思うよ? ちょうど本棚のスキマだから影になるし」

大胆だなおい.......

「ん、分かった。んで? また僕が持ち上げればいいのかい? 」

「い、いやっ.......こ、こここ今度は、私が下になるからっ!?」

「あん? まぁ確かにその方が背は高くなるけど..............」

なんでそんな顔赤らめるんだ?

「と、とにかくっ、ほら、持ち上げるよっ」

「ん、あぁ」

軽く足を開くと、その間に頭が入る。少し揺れたかと思えば、みるみるうちに背が高くなっ..............!?

「ふぁ......./////」

思わず漏れたヘンな声。脳みそが一瞬ハジケる。

「ちょっ、変な声っ」

「う、うっさいなっ」

な、なんだったんだ、今の............../////

「ほら、早く探してっ」

「わーかってるって.......ん、ほんとだ、あった」

軽く身を乗り出して目当ての本を引っこ抜く。さて、他には何を借りようかな。

「ちょっと、見つけたんなら早く私のも探してよっ」

「わかってるよー。..............んと、この段にはないからもうちょい低く」

「えっ、低く? .......んぎぎ、こう?」

ゆっくりと下がっていく身長。目線が3段目まで下がったあたりで、お目当てのものが見えてきた。

「ん゛っ、ま、だっ?」

「見つかったよ」

と、背表紙に手をかけたはいいものの.......

「ん? なんだこれ..............取れないっ」

ギチギチに詰められた列は、目当ての本をしっかりと噛みこんで離してくれない。このまんまだと背表紙が千切れるっ。

「え、ちょっ、はやくっ」

「んな事言ってもっ」

ちょっ、下で暴れんなっ、あっ、にゃっ、くすぐったいっ、

「わあっ!?」

ついに下が崩れた。慌てて本棚に手をついて、落ちるのだけは回避したけど..............

ガラガラドサッ!

手をついたとこが悪かった。本棚の列を丸ごと押し込んじゃって、その向こうにいた列の本を押し出して床にバラまいちゃったようだ。

「.....................これ、マズくないか?」

恐る恐る横を見ると、そこには誰も居なくて、

「に、逃げるが勝ちぃっ!!」

「あっ、こら待てぇ!?」

一足先にすたこらさっさと逃げ出していたその背中を、僕も必死に追いかけたのだった.......

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