番外:縁結び系女子
番外編です。なんか知らないけど、どうやらバレンタインデーには投稿しようと思っていたらしいですよ?
……馬鹿か?
時系列にして、テスト週間より1週間ほど前。
「…”恋愛成就”の七不思議だあ?」
崎森高校の誰にも開けられぬ扉、その先にある部室。
襤褸の部屋に置かれるにしてはやけに作りの良いソファに座る影の薄い男性生徒━━浅田真は、怪訝そうな表情で今しがた聞こえた言葉を聞き返した。
「そうよ、最近流行っているらしいの」
そう解答するのは同校に通う女子生徒。
濡れたように艶やかなストレートロングの黒髪に日本人形のように精巧な作りの顔。切れ長の瞳は少しつり上がっていて、どこか気の強そうな雰囲気を覚える━━土御門聖は眉唾だけどね、と同じく怪訝そうな表情で補足した。
いつもであれば”また体を張らされるから”という理由で真は露骨に嫌な顔をするが、今回ばかりは理由が異なっていた。
「いや、この前この学校の七不思議は全部解決しただろうが。なんで急に新しいのが湧いて出てきてんだよ」
真が顰めっ面をしたのは単純に理解に苦しんでいるからである。
それもそのはず。
つい先日、それこそ七不思議『赤紙青紙』『動く肖像画』を解決した後、聖と真は残り5つの七不思議を一斉に解決させたのである。
まさかの自分自身が最後の七不思議の正体であったため、聖から手酷い折檻を受けた記憶は真の中では未だ記憶に新しい。
つまり、この学校に2人が解決していない七不思議は残っていないはずなのだ。
「最近語られてるってことは謎の7つ目じゃないってことだし…マジでどういうことだ?」
この学校に存在する七不思議、その7つ目は“不明”である。無論、であればこの新たに生まれた“恋愛成就”が7つ目であると考えられなくもないが、だとしても時系列がおかしい。
首をかしげる真に対し、聖も同感であるとジェスチャーをしながらも情報を追加する。
「7つ目に収まるにしてもつい先日から語られ始めた怪談である以上、私たちが関与していないのは明らかね…とはいえ、私がわざわざ話題に挙げた以上、それなりの信憑性がある怪奇現象なのよ」
聖は“困ったことにね“と言葉尻に付けて眉を顰めた。
「というと?」
聖は一呼吸置き、今回の一件について軽く精査しまとめた情報を話始める。
「内容としては『放送室の中で想いを伝えるとその恋が叶う』というものよ。とはいえ、ただそれだけなら思春期にありがちなこじつけ青春話で済ますこともできるんだけど…どうやらこの方法での告白成功率が100%らしいのよ」
「ひゃくぱーせんとお!?」
深々とソファに座りながら疑い半分に聞いていた真が前のめりになり目を丸く見開いた。確かに偶然にしてはできすぎている。とはいえ、一瞬その数字に驚いた真も改めて冷静に聞き返す。
「…いや100%といっても母数次第だろ、正直2組3組ならまだあり得なくないラインだ。土御門、母数は調べたんだよな?」
100/100と2/2では同じ100%でも意味合いが異なってくる。意外なことに数字とは使い方次第で人を容易に騙すのだ。
騙されてなるものかと真は再度聖に問うた。
「聞いて驚きなさい━━15組よ」
一瞬その回答に理解が止まってしまった真は指折りで数字を数えた。5の折り返しで顔が引き攣り、10の折り返しで変な笑い声が出、15の時点で顎が外れそうなほどに呆気にとられた。
「……15ォ!!???」
…そりゃ怪奇現象レベルだわ。うん、間違いない。
目を再度大きく見開きながら、真は悲鳴のような大声を上げた。
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「で、放送室に来てみたわけだが…」
「想像よりも大盛況みたいね」
2人の視線の先には放送室。真としては鎌鼬の件で諸々近づき難いものがあるが、とはいえ来ないわけにも行かなかった場所。
しかしそんな暗い思い出を吹き飛ばすほどの珍妙な光景に、真は無意識に変な笑い声を上げる。
「まさか告白待ちで待機列が出来てるとはね…」
放送室に向かって男女ペアが3組立っていた。どのペアもそわそわとした雰囲気があり、羞恥心からだろうか頬を赤く染めている。
その異様な光景に真も顔面を赤く染めた。無論青筋のおまけ付きである。
「腹立つ〜〜。ちょっと今からあそこの男どもをブン殴って来てもいい?」
冗談のような口調だが、しっかりと拳を鳴らしながら肩を回している。GOサインが出ようものなら確実に殴りに行くだろう。
しかしそんな下らないことを聖が許すはずがない。心底呆れた表情と共にため息を吐くと、嗜めるような口調で真に話かける。
「あんまりくだらないこと言ってると、私がアンタをブン殴るわよ?」
こちらもこちらでパキパキと拳を鳴らした。ご存知の通りガッツリ武闘派の魔術師である聖の拳は真の拳の5倍は痛いだろう。
身に覚えのある拳を食らいたくはない真はすんなりと手を引いた。
餌を見るとよだれを垂らすパブロフの犬実験のように、聖の拳を見ると腹のあたりジンジン痛んでいた。大抵馬鹿をやらかす真が悪いのだが。
「とは言ったものの、この列に割り込むわけにも行かないし…どうしたものか」
隣の馬鹿を諌めた聖は、改めて目の前の状況に頭を悩ませる。既に待機列が完成している以上、そこに割り込むにしても並ぶにしても聖が積み重ねて来た“優等生としての土御門聖”像が破壊されかねない。
そうして頭を抱える聖を見、真はずっと思っていた疑問をぶつける。
「そういえばなんで人祓しなかったんだ?」
魔術師は決して表舞台に上がることはない存在、それ故に一般人の前で活動するなど言語道断。過去にそう言い切っていた聖が真っ昼間の休み時間に活動するとは真は正直思いもしていなかった。
なお、そう言い切っていた本人がポカしたせいで真は魔術の世界に片足を踏み入れていることは特出すべき事柄だろう。
この話をされた時、聖に対して“それをお前が言うのか!?”と真は思っていたが、拳が飛んでくるのを恐れて黙っていたそうな。哀れ。
「そうしたいのは山々なんだけどもね…噂の詳細を考えるとそうもいかないのよ」
「…ん?噂の内容は『放送室で告白するとその恋が叶う』とか、そんな感じだったろ?それに追加で条件があるのか」
先ほどの聖の説明は確かに一部が欠けていた。より正確かつ具体的に本怪奇現象を説明するならば、こうなるだろう。
「『昼休みの12時30までに告白をしなければならない』?随分とまあ面倒な条件付けだなオイ」
「ホントそうね。人祓をしようにも平日の授業がある日にそんなことしたら、生徒の誰かしらが違和感を覚える危険性があるわ。こちらとしても下手なリスクを負うのは避けたいのよ」
心底面倒そうな表情でため息をつく聖、全くもって同感である真はそれに倣うかのように同じく深くため息をついた。
「あれ、土御門さんじゃないですか!一人で何をしてるんですか?」
唐突とはまさにこのことだろう。
2人の背後から近づいて来た女子生徒が聖へと声をかけた。周囲に気を配っていなかったためか、うっかりと級友と出会してしまった。
案の定だが、真の存在に気付いていないのだけが不幸中の幸いだろう。いつの間にやら数名に囲まれていた聖は慌てて猫を被った。
「えっ、あ〜っ、えっとですね!そう、あそこに人が並んでるから何があるのかな〜って思って見ていたんですよ!」
なあ〜にカマトトぶってんだか、と真はこっそりと内心聖をあざ笑った。残念なことに聖の勘は非常に鋭いのでバレバレである。
後で殺すと必殺の誓いを立てながらも、聖は級友である女生徒との会話に意識をシフトする。
「あー!あの列はですね告白の待機列ですね━━━」
そこから彼女の口はしばらく止まることはなかった。当然の如く聖と真が知り得ていた情報以上のものはない。
とはいえ、この女生徒のマシンガントークを猫を被った聖が止めることはなかった。“優等生”はそんなことをしないという聖の哲学である。
「━━━というワケです!」
「へ、へえ!そうなんですね!興味深いなあ〜」
内心では話の長さに辟易していた聖がありふれた感想を垂れ流すと、しかし瞬間に女生徒の表情が強張りワナワナと震え始める。
「…っ!?もしかして聖さん、気になる人とかいるんですか!?」
「………は?えっ、いやそんな」
女生徒が思わぬ勘違いをし驚愕で思わず声を上げた。それに対して困惑を隠しきれない聖。しかし一瞬の硬直も動揺から来たものであると誤解されてしまう。こればかりは聖の凡ミスである。
“時既に遅し”とはまさにこのことだろう。
「えっ、聖さんに気になる人ができた!?」「あの百人斬りで有名な?」「土御門さん、美人だから実は恋人いるって噂もあったけど嘘なの?」「土御門さんといえば、最近幽霊と一緒に歩いてるところを見たって子もいたよね〜〜」「いや、それだけは明らかに嘘だろ」
続々集まる人も群れ。姦しい話に集まるは喧しい野次馬。
次第に聖の周りには10人を越す人集りが出来てしまい、聖は完全に動きがとれなくなってしまった。クラスターとはまさにこのことだろう。
しかし幸いなことに、人集りができたことにより放送室前に並んでいたカップル未満共は静かに姿を消していた。流石に噂を知るものが多いこの場は居心地が悪かったらしい。
(…しょうがないわね、こうなったらアンタに諸々全部任せるわ。なんでもいいからとりあえず情報を収集して来なさい)
集団の中心にて作り笑顔を浮かべる聖は“魂接”を用い、直接真へと指示を飛ばす。この状況では聖も動けまいと察した真は、猫を被った聖をもう少しニヤニヤしながら眺めたいという欲求を抑えつつ了承した。
(あいよ、任された。…危険な妖怪とかだったら逃げていい?)
(ダメ♡)
もちろん返答はノータイム。先ほどからの嫌味ったらしい真の笑みに対する意表返しのようなものであろうか。
“クソがよ“と内心毒づきながら、真は若干嫌な思い出のある放送室に足を踏み入れた。
「失礼しま〜す、っと」
真の初見での感想は“なんも変わってねえな?”である。
放送用の機材やケーブルと壁側の本棚に詰め込まれたCDや台本が置かれた棚。聖VS鎌鼬を観戦した窓も健在。部屋としての雰囲気は先日から一切の変化がない。
(…何も変化がない?)
だからこそ真の中で、それが違和感につながった。
思い返せば鎌鼬に襲われたあの日、放送室は渦中の最中にあった。真の作戦によってこの部屋へとおびき寄せられた鎌鼬はそこに置かれていたメッセージに激怒し、部屋中の備品を大量に破壊したはずである。
この部屋は滅茶苦茶に荒らされた筈なのだ。にも関わらず部屋に一切の違和感がない。これは真の視点で明確におかしな点である。
“一切変化がない”という違和感に気付いた真は再度部屋を見渡した。その違和感が事実であるかの再確認である。
「…いや、所々異なる点がある」
過去の記憶と照らし合わせた間違い探し、それによって真はこの部屋における明確な変化を発見する。
それは本棚に置かれたCDと台本の量である。
「鎌鼬によって破壊された手すりや扉は復元されてたけど…流石にどの台本とCDが破壊されたのかまでは確認できなかったのか?」
みてくれ“だけ”はそっくりに復元こそされていたが、蔵書量だけは誤魔化しが効かなかったのだろう。記憶の前後で明らかに本棚に収められたものの量が異なっている。
昨日見たときは大量に保管されていた古びた台本も、真が見る限りでは一冊した置かれていなかった。
「ほ〜ん、”ロミオとジュリエッタ”、ね。パロディにしては一切捻りがないなオイ」
真は古びた台本を手に取りタイトルを確認しパラパラとページを捲る。内容自体はなんの変哲も無いロミジュリだが、オチだけが綺麗にハッピーエンドに改変されていた。
「うわ〜、原作者が読んだが怒るぞこれ」
とはいえ、今回の一件には一切関係はなさそうである。そそくさと真は古びた台本を棚に戻した。
「とはいえ、このスカスカ具合。見る人が見れば一発で違和感を覚えそうなもんなんだけどな…」
放送室を毎日のように利用している放送部であれば、この変化に気づかない訳が無い。これ以上得られる情報はないと踏んだ真は徐にポケットへと意識を向ける。
(妖怪に目をつけられた時の妙な寒気もないし、土御門謹製の妖怪探知の符にも反応ナシ。こりゃタダの噂話だろうな)
部室で渡され、現在真のポケットの中でピクリとも反応しない符。本件が妖怪との関連性のないという裏付けとしては十分だろう。
となれば、放送室を発端とする今回の一件は彼ら彼女らが関わっている可能性が高いだろう。骨折れ損のくたびれ儲けだと思いつつも、何も危険性がないことに安堵しながら真は放送室の扉に手をかけた。
今頃主も人混みから解放されていることだろうと予想しながら、しかしあたふたしている聖をもう少し見たいとも思いながら真は放送室を後にする。
「…でも、これがどういう経緯で恋愛と結びついた?」
危険性はなくとも、それは違和感の答えにはならない。
どこか煮え切らない感覚に襲われた真。無意識で発した独り言を聞いたものは誰もいない。
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「━━━というわけで、少なくともこれは妖怪絡みの件じゃねえよ。残念だった?」
「まさか、何もないならそれが一番よ。それに恋愛…人間の感情を操る妖怪となると相当面倒だろうし、むしろ安心したまであるわ」
人混みから無事解放された聖と共に部室に戻った真は、部屋で見た一切合切を明かした。報告を受けた聖も真の感覚と符の反応から問題ないと判断した。
聖は安堵、もしくは疲れからかどっぷりとソファへ沈み込む。表情も心なしか疲労が目立つ、なんだかんだ人気者も大変なのだろうと真は同情した。
「とはいえ、どうしてこんな事態になったのかは判らず仕舞いね…ったく、一体どこの誰があんな噂をバラ撒いたのやら」
余計な手間増やしやがって…許さないわよと聖が小声でぼやいた。やけにドスが聞いた声色からして堅気とは思えないその様子に真は震える。
(あっ、そもそも魔術師がカタギなわけねえや)
自己解決である。そもそも目撃者を消しているようなアングラ組織の構成員が堅気なはずがなかった。
「それで思い出したんだが…土御門、鎌鼬と百目鬼の時に教室やら校庭やらが破壊されてたが、あれは一体誰が直してるんだ?」
すっきりとしたところで真は、ふと先ほど思い起こした記憶とそれに関する疑問を聖にぶつける。その唐突な質問にダラけきった姿勢のまま、聖がかったるそうに返答する。
「あ〜、あれはね。ウチの下部組織みたいなのが直してくれるのよ。まあ緑さんが全部勝手にやってくれるから私はよくわかんないんだけどね」
「へえ……となると、緑先生に直接聞いたほうが早いか」
減っていた台本とCDを補填したのは緑が関わっているという旨を聞き、それが自身が抱いた疑問を解く鍵だと理解した真。
しかし、その様子を見た聖が怪訝そうな顔をしながら真へと釘を刺す。
「ん?さてはアンタ、まだ私に言ってない何かがあるわね?
妖怪案件じゃなくともアンタの監督義務があるのは私なんだから、まずは全部私に報告しなさいって言ってるじゃない」
そもそもアンタは私のブレインなんだからウンタラカンタラ と御高説を垂れる聖の話を聞くフリをしていると、部室の引き戸が開かれた。
開かずの扉とされるこの部屋の扉を開けられる人間は3人しかいない。そのうち2人が部屋に既にいる以上、誰が入ってきたかなど考えるまでもなくわかった。
この学校の社会科教師兼、昔から聖に仕える使用人。年齢不詳(重要)の木下緑である。
「お二人ともお疲れ様です…無傷なところを見るに妖怪案件ではなかったようですね」
話が早くて何よりだった。伊達に長生きしているわけではないのだろうと真が考えているとどういうことやら緑から殺意の視線が飛んできた。真は非常に良く顔に出るタイプなので表情で諸々モロバレである。
危や漏らすかと思うほどの殺意に目覚めた、妙齢の女教師の気を逸らすために真は予め用意していた疑問をぶつける。
「そ、そそそそういえば緑先生。鎌鼬に荒らされたはずの放送室が元通りになっていたんですけど、本棚に置かれていたCDやら台本やらは完全に元通りとはいかなかったんですか?」
女心は秋の空とはまさにこのことなのだろうか、多分違うけど。
その質問を受け、殺気に満ちた様子から一転して柔和な雰囲気へと変貌した緑は、少し前のことを思い出しつつ回答を用意した。
「あ〜、そうなんですよ。流石に古い手書きの台本やら個人で焼いたCDなんかは復元が不可能だったので、其の場凌ぎにはなりますがカバーストーリーを用意して誤魔化しました」
「「…カバーストーリー?」」
緑から発せられた“カバーストーリー“という言葉に2人は反応を示す。真は嫌な予感から心がざわついた。
「ええ。お2人が鎌鼬と交戦されたあの日の夜に強盗が入り、放送室の機材を盗もうしたが固定が頑丈だったため敢え無く断念。仕方がないのでCDや古本にも見える台本を大量に盗んだ。
というストーリーを用意し流布しました。放送部の生徒の方々にはお伝えしております」
なるほど、確かに筋は通るだろうと真と聖の両名は納得した。なにせこの学校の警備はザルもザル、不用意に窓は開いているし警備も緩い。
田舎とはいえあまりにも無警戒であると思わなくもないが、それが今回の一件においては隠蓑として機能したと言えるだろう。
「あの…というか、お嬢様にはお伝えしたはずなのですが…」
えっ。
無意識に思わずそんな声が出るほど衝撃の一言に真は惚けた。ゆっくりと聖の方へ顔を向ければ、容疑者は冷や汗を垂れながら間抜けにも口を半開きにしていた。
それはまさに『やっちまった』と顔に書いてあるも同義。
「…あっ」
「おっと?お前今「あっ」って言ったよな?確実にやらかした時に出る「あっ」だったよな?」
先ほどから目が合わない。物理的に真が移動しても器用に聖は視線を躱した。しかし形のいい顎を伝う汗から見て、聖が明らかに動揺しているのは確かである。
「…あっ、たかいお茶が飲みたくなってきたわねえ」
十数秒考えたにしては誤魔化し方があまりにも下手くそすぎる。
悲しい哉。いくら美少女とはいえ基本がポンコツなのだ。
「…それで誤魔化せると思ってるお前が俺は一番恐ろしいよ」
惚け方がド下手クソな自分の主人を見、腹芸とか無理だろうなと心の底で馬鹿にしつつ、真は毒を吐いたのだった。
閑話休題。
調査の翌日の昼休み。真は源二といつも通りの昼休みを謳歌していた。
中庭のベンチに腰掛けながら取り留めもなくくだらない駄弁りをしていると、ふと真は昨日の一件を思い出す。
「そういえばさ源二、お前”放送室の七不思議”って知ってるか?ほらあの、恋愛成就に関するヤツだよ」
源二は万年彼女ができない残念系イケメンなので、何か知っているだろうという悲しい信頼からくる質問。案の定源二は饒舌で質問に答えた。
「知ってるぜ。放送部のやつが最近話してたやつだろ?」
「多分それだ。話の詳細も知ってるか?」
源二は少し考えるそぶりをすると、思い出すように少しづつ話し始めた。
「あ〜、確か…。うちの学校にあった”ロミオとジュリエッタ”の台本はな、どうやら相当昔からこの学校にあるらしく、あの演劇自体にも主演2名が結ばれるっていうジンクスがあったんだよ」
なるほどと真は話に傾聴する。台本自体に不思議な噂があるという話は聖真両名共獲得していない情報だった。
「んでもって今回の泥棒騒ぎでその台本だけが盗まれなかってんでな?
どうやら”台本自体に不思議な力があるに違いない”って話がされたらしく、”ロミオとジュリエッタ”の台本は持ち出し禁止なもんで、その台本が置かれてる放送室に焦れったいカップル未満が集まってるって話らしい」
事の仔細を聞き終えた真は眉を顰めながらため息を吐いた。改めてだらりとベンチに座り込むと腹の底からくだらないという感情の乗った声で文句を垂れる。
「…んだよそれ。ちょっと飛躍しすぎじゃねえか?」
「噂なんてそんなもんだろ、結局肖れればなんでもいいのさ。あ〜〜〜、俺にも誰かからお声がかからねえかな〜〜〜!!」
こりゃお声もかからんわ。
真相を知った真はつくづく人の噂とはくだらないと呆れながら、こんなしょうもない報告はしなくても良いだろうと勝手に判断した真は聖への報告義務をすっぽかしたのだった。
余談ではあるが1週間もしないうちにこの七不思議は廃れ、語られなくなったらしい。
今気づいたんですけど、なんか急に伸びてきてないですか…?皆様は一体どこでこんな駄作をお知りになられたので…?(畏怖)まーーじでわからんので、誰かコメントで教えてくれません?普通に気になってる。
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よろしくお願い致します。




