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告白され系女子

実は忙しいので、次いつ投稿できるかわかんないっピ。夏休みだけど全く休まらないッピ!助けてくれッピ!




 先ほどの一億Vと比べるまでもない…とはいえ、スタンガン程度の威力はある電撃をモロに食らった雫は、「ギャッ」と短く悲鳴をあげて気絶する。トドメの一撃と共にしんと静まり返った会場、無理もない。前大会において聖は”水”陣営に完膚なきまでに叩きのめされている。


 超火力長射程の符術、『枝垂藤』で評価の見直しこそすれ、今大会において”水”陣営を倒して駒を進めるという快進撃を見せるなどと考えるものはほぼいなかった。

 


 各陣営はそれぞれ、これは夢か幻かと目の前の状況を把握できない中、土御門聖の凛とした一声が上がる。



「審判ッ、判定ッッ!!」

「っ…………”水”陣営代表、津守雫の気絶を確認。これ以上の試合続行は不可能と判断…よってこの試合、”木”陣営代表、土御門聖の勝ち!」


 さらに静まり返って、一拍。


「「「う、うおおおおおおおおおおオオオッッッ!!!!!!」」」

「う、嘘だろ…!?」「あの火力、敵に回したくないな。今からでも対策を講じる必要が出てきた」「雫様が敗北…蒼様以上に強いって話だったろ!?」

 

 歓声をあげたのは当然”木”陣営、それ以外の陣営からは各々が困惑や冷静な分析の声が上がった。最も、”水”陣営からは阿鼻叫喚しか上がっていないが。

 

 陣営として驕りがなかったといえば嘘になるだろう。それでも、勝つために十分な準備がなされていたのは確か。雫も電撃の対策として純水の使用など尽くせる手は全て尽くした。それでも負けたのは単純に聖が想像の1、2回りも成長し、強くなっていたことに他ならない。

 

 少なくともこの場において重要なのは『”水”陣営の敗北(ジャイアントキリング)』が成されたという驚異的な事実だけである。

 

 阿鼻叫喚の最中、真が聖の方を見つめる。

 

 飄々とした態度と普段通りの真剣な双眸からは何処か誇らしげな態度が透けて見えた。それにつられて、真も勝利の実感とともにどこか誇らしげな気分を抱くのだった。

 




 ――――――――――――――――――――――――――――――――――






 轟く悲鳴とわずかな歓声を受けながら聖と真は結界から出る。ちなみに雫は、いつの間にやら現れた救護班によって担架でGOしていた。

 とりあえず問題はないだろう。そもそも、結界内部の戦闘で発生したダメージは全て肩代わりされると事前に説明があったため、真としても容赦なくビリビリさせたわけなので、これで大事だったらまずいのだが。


 とはいえ、そんな不思議現象に慣れ切っていない真は、(焦げ臭い匂いとかしてなかったよな…?)と勝者なのに敗者を気にしてチラチラと背後を見る。

 

「やめなさい」

「んだよ、気になるもんは仕方ねえだろ」

 

 そんな落ち着かない様子の真を聖は諌めるが、それに対して眉を顰めて反論する。

 

 どちらも間違ってはいない。

 敗者に情けをかけることは恥の上塗りだと考える聖と、自分の攻撃によって深刻なダメージを負っていないか不安な真。時として思想と人情は、相容れないのだ。

 

 「…あんたが割と優しいのはわかってるけど、自分を打ち負かした人間に心配されるってのは屈辱でしかないわ。少なくとも、私たちみたいな実力主義の世界で生きてきた人間にとっては特にそうよ」

 「あっ………そうか、それもそうだよな。煽っといて今更なんだって話だよな」


 真が魔術師の世界に片足踏み入れてから早数ヶ月、とはいえ真は魔術を使えないし、魔術師がどういった組織で動いているのかについても全く知らない。つまり、この大会は真にとって異文化交流に等しい。

 だからこそ、伝え聞かされた価値観を素直に受け入れる他ない。同情がなんの足しにもならないことは真自身それなりに理解しているというのもあった。人間との戦いは初めてだったからだろう。


 とはいえ人間との戦いは初めてだったからだろうか、真が少しセンチメンタルな感情を抱きながら観戦席に戻ろうとすると、正面から見慣れた長身細身の男が歩いてきた。”水”陣営当主、津守蒼である。

 

 「…侮っていなかった、と言えば嘘になりますが、だとしてもここまでやるとは思っていませんでした。去年と比べて格段に強くなりましたね…本当に見違えた」

 「はっ、アンタに褒められたところで何にも嬉しくないわよ」

 

 元々切れ長の目を更に細くしながら、蒼は聖に賛美の言葉を述べた。当然素直に聖は受け取るわけもなく悪態を付いて返す。それも予想通りだったのだろう、蒼は取り繕ったような笑い方ではなく、本心で腹の底からケラケラと笑った。

 

「っ、は、ふっ…ははははっ!…困ったな、もっと貴女が欲しくなってしまった」


 男性にしか出し得ない、バリトンボイスの色気のある声。恐らく体術なのだろう、独特の歩法でするりと聖のパーソナルスペースに侵入すると、蒼がさりげなく髪を撫でる。

 

「ちょっと、アンタ…なにすんの」

「アプローチですよ?どうでしょう、勝負には負けましたが、私との結婚を前向きに検討していただけませんか?他の家に嫁ぐよりもよっぽど幸せに暮らせると約束しますよ…いや、違いますね。

――私は貴女を必ず幸せにします、残りの生涯を全て貴女に捧げましょう。」


 真剣な表情、少し震える声色。明らかに普段の蒼とは様子が違う。一切の取り繕いのない本心からの言葉。

 つまり、()()()()()()()である。

 

 これが演技だというのならあらゆる俳優賞を総なめにできるだろう。それだけ自然に、そして誰にでも『本気である』と思わせる告白に、聖も思わず心揺らぐほどの衝撃を覚えた。

 

 

 ――しかしこの場にはもう一人、蒼がうっかり忘れてしまった人物がいるのである。

 

 

 唐突に聖を口説き落とそうとする蒼。その蒼の女たらしっぷりに思わず、真は飛び出して2人の間に入る。別に特にイケメン憎しという感情ではない、多分。


「おっと、”水”陣営の当主。それ以上主人に触れるのならば、儂としても容赦はできんぞ?」

「っ!全く、躾のなっていない……仮にも式神なのだから、主に『真の幸せ』というものを噛み締めてもらおうという気概を見せるべきでは?」

 

 当然のように意識外から現れた真に一瞬驚きながらも、さすが当主といったところか、売られた喧嘩に対してしっかりと一撃を返す。その間も指で髪を梳く蒼にイライラが止まらない真は、腕をはたき落として聖と蒼の距離をさらに引き剥がした。

 

「女の幸せは結婚ってか?ジェンダー意識がマントルすれすれだなあ。儂からしたら”土御門聖”という人間にとっての『真の幸せ』は『自由』だと思うが?」


 まるでとても慌てているような、苛立ちと怒りを言葉と態度に無理やり落とし込んだようなその様子。真は語気を荒げ、今までなんとか取り繕ってきた古風な喋り方も少しずつ崩れていく。その様子に蒼は大きく違和感を覚えた。

 

 そこから導き出された一つの可能性を、思わず蒼はぽろっと口に出してしまう。

 

 

「――――もしかして君、式神なのに主人に惚れてしまったのですか?」



 「……は?」


 蒼の少し探りを入れるような質問に虚を衝かれた真は、間の抜けたような声を挙げる。そして、その蒼の言葉により、なぜか聖との『出会いから今までのこと』が脳裏でリフレインしていく。


 最初の出会いは強烈だった。

 鎌鼬と戦った時、最初は妖怪だと思われていたせいで少し痛い目を見た。しかも真を助けようとした聖が捕まってしまい、それを真が救い出し、そして鎌鼬を罠にかけて調伏した。

 

 そこから七不思議解決のため、音楽室の肖像画を解明し百目鬼の正体を暴いた。真自身がズタボロになって、それこそ出血多量で死にかけるほど酷い戦いだった。

 しかもその後、気絶している間に聖の実家に連行され変な契約を結ばされ式神にされた。

 

 そのあとは七不思議を解決して、街に巣食う木っ端妖怪を封印し、鵺を討伐し裏市場で騙されそうになり…そして、今に至る。


 まだ出会って半年も経っていないのに、ずっと一緒にいたパートナーのような、そんな親しみの感情を聖に感じていたことに真は吃驚した。

 

 (嫌いじゃない。こんな俺でも気兼ねなく、そして強引に引っ張ってくれるような、そんな土御門はむしろ好ましい部類に入る…)

 


 でも。



 「はっ、戯言を。主人と儂では()()()()()()()()()()()、この色ボケ狐が」

 「…そうですか。それは()()だ」


 告げられた”残念”とはどういう意味なのか、それを考えられるほど真には余裕がなかった。


 そして、少しだけ、ほんの少しだけ。

 真は心臓が締め付けられたような気が、しなかったことにした。




初めての告白が主人公じゃないってマジ?!これもう『BSS(僕が先に好きだったのに)』展開だろ…(適当)

違います、俺は純愛しか受け入れません。


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