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予想外系男子

見切り発車でやってるもんで、昨日まで練ってた構想、全部無駄になりました(笑)

いや、笑えないんだけどね。





「攻性術式符紅種、迸れっ、『彼岸花』っ!くたばりなさいっッ!!!」

「ぐッ、っっッガああアアァァッ!!!!」


 凄まじい悲鳴と共に、緋色の雷槍が怪物の全身を剣山のように隈無く串刺す。数秒間もすると、深紅色のスパークが収まり、槍は空気に霧散した。


 電撃による凄まじいフラッシュの終了と共に大きな音を立てながら黒焦げとなった化け物が斃れる。その身体から白煙を巻き上げ、焦げ臭い匂いが2人の鼻を掠めた。


 文字通りの”肉の焼ける匂い”に、真が思わず顔を歪めてしまったのは仕方がないことだろう。


 興味本位か、将又怖いもの見たさだからか。真は怪物の遺体をじっと観察する。


 グロテスクと表現するほど痛々しい傷はない。なぜならば怪物は身体中がかなり炭化していた身体。

 雷撃の槍による高熱のせいか、全身の肉が熱で縮小されたため肉体は少し縮まり、姿勢は体を丸めたような状態で地面に伏せている。


「ん…?」


 じっと観察していたからだろうか、真はその怪物の死体に若干の違和感を覚えた。

 

 具体的には手の形状である。

 トイレで遭遇した怪物は鎌を持つ手が人の手と寸分たがわぬものであったが、目の前で伏している怪物の手は獣らしい()()()()

 

 真が違和感の正体を突き詰めようとしたその瞬間、死体だと思われていた炭がぴくり、と動いた。


「う゛、あ゛…っ」


「は!?…い、()()()()……こんな全身が炭になってても…!?」


 明らかな黒焦げの死体から焼け爛れているだろう掠れた喉から不気味な唸り声が上がっている。つまり、この以前怪物、現炭素の塊は、未だ生き物というカテゴリーに属しているということになる。


 その異常な事実に思わず、真は顔を顰めて足だけで這うように後ずさりをしてしまった。

 体がピクリ、ピクリと痙攣して動くあたり、あれほどの電撃を食らっても尚死んでいない化け物に対する恐怖と、”どうして死んでいないのだろうか?”という関心が同時に込み上げていた。


「なんで死んでないのって顔ね、私も初めて見た時そう思ったわ」


「…読心術とかじゃないよな?俺ってそんなに顔に出やすいの?」


 あまりにも心の内的にドンピシャなので、真は引き気味に尋ねた。そういう電波女も涼しげに物を言っている割に、額からは大粒の汗が滴り落ち呼吸も浅く早くなっており、かなり疲労しているように見えた。


 先ほど電波女が使用していた『彼岸花(まほう?)』を思い返すとかなり気合が入っていたように思える。

 つまるところ、あれは電波女の必殺技的なものであり、今彼女が疲れているのは大技を使った反動なのだろう、と真はなんとなく、それらしい理論を立てて自分を納得させた。

 

 ちなみに半分は正解である。


 電波女が袖の辺りを弄ると小さなナイフを取り出し手早く真を縛っているロープを切断する。

 うっかりで縛られた挙句割と雑に解放されたため、マジで何の意味もなかった感じのか…という、なんとも言えない感情が真の心の中で渦巻いた。


 とは言えこれで両手が自由になったので、視野を半分ほど奪っている邪魔な符を引き剥がす。


「…って痛てて?!」


 強めの静電気を食らったような痛みで思わず手を離しそうになる。強引に引っ張ると、強めに叩かれたような衝撃と共に符がようやく剥がれた。


 真が符を顔から剥がすのに苦労している間に、電波女は怪物の一撃を凌いだ結界に掌をかざし、そして再度印を切るような動作を行う。


 すると結界は、まるで硝子が割れていくかのようにヒビ割れて消滅していった。

 薄緑色の光の破片が、まるで光の粒のようにキラキラと輝きながら空気に溶けて消えていく。


 そして、そのまま大股で化け物の方に近づいていき━━━


「って、()()まだ生きてるんだろ、危ないんじゃないか?!」


 慌てふためくド素人の忠告なぞお構い無しに、電波女が化け物に近づいく。


 炭の塊と化した怪物へと符を投げつけ、符は胴体部に正確にヒットし、身体へとしっかりと貼り付いた。


()()()()にしたんだから当たり前でしょ……さっき言った通りこいつは赤紙青紙なんかじゃないわ、文字通りコイツの()()()()をひん剥いてやりましょう!」


「い、生け捕り?」


 電波女が小声で何かを呟くと、先ほど投擲した符から紙垂が結ばれた数本の金属チェーンがさながら噴水のように飛び出し、小煩い金属音を立てながら自動で化け物の体を縛り上げ拘束する。

 拘束が完了した後もう一枚追加で投げると、今度は赤い色の結界が化け物を中心に展開した。



「正体がわかりやすくて助かったわ、なんといっても得物が鎌なんだもの。

━━━━ねぇ、鎌鼬(かまいたち)さん?」



 すると鎌鼬、という単語に反応するかのように半ば炭の塊と化していたモノがひび割れ始め、中から一回り小さな獣らしきものが見え始める。

同時に体積の縮んだ余剰を埋めるように、チェーンが更に食い込んで拘束を強めた。


「案外丈夫に化けの皮を張り付けてるわね…でも、もうひと踏ん張りってトコか…。 じゃあもうちょっと私の推理を聞いてなさいな」


 ふう、と呼吸を整え電波女が言葉を続ける。


「七不思議において”赤紙青紙”は赤を選ぶと『裂かれて血塗れになって死ぬ』。青を選ぶと『血を抜かれ真っ青になって死ぬ』って話だけど、少し辻褄が合っていないのよね」


 鎌鼬?辻褄…?全体的によくわからないが、どうやら辻褄が合っていないということだけはわかった。


 というかこの化け物が鎌鼬ってどういう事なんだろう。鎌鼬って何となく聞いた事はあるが、大して恐ろしい妖怪ではなかった覚えがある。


「そこで頭捻って考えてる男も知りたがってるし、答え合わせといきましょうか」


「うん、是非とも頼む」


「ーーー簡単よ。どんなに上手く鎌を使っても、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()じゃない」


「…確かにそうだわ」


 真的にはよく分からないが、なんとなく納得できた。

 

 改めて”赤紙青紙”の怪談を思い起こすが、冷静に考えて見ると確かに鎌では注射器みたいに血を抜くのは無理である。

 つまり、あの化け物では血塗れにする『赤』が限度、怪談で言うところの『青』を再現できない。


 その言葉に呼応したかのように、ひび割れていた炭の塊が完全に崩壊を始め、一回り小さい()()()()()()()()()()()が中から姿を表していく。

 サイズが変わったことで一瞬緩みかけた拘束は、崩壊と同時に注連縄を模したようなチェーンが自動で巻き上がり、再び強固に拘束し直した。


「………え?」


 真は自分でも間抜けだと思うがつい変な声が漏れ出たが、しかしそれも仕方ないと思うほど奇妙な光景だった。


 炭が完全に崩れ落ち、さながら脱皮のように中から現れたのは妖怪図鑑に描かれているそのままの姿。

 前足が鎌、鋭く切れ長の赤い獣の瞳に月光を眩く反射する美しい白銀の毛並み。しかし通常のイタチとは異なり、体躯は大型犬のそれに近い。



 炭の塊から現れた妖怪ーーー鎌鼬は()()()()()。その白銀色の毛皮には焦げ目一つすら付いていない。



鎌鼬は金属チェーンでがんじがらめに縛られても尚、殺気を滾らせた蒼い縦割れの瞳孔で真たちを睨みつける。


「ご明察、私は鎌鼬さね。あ〜、なんでこうも見え透いた罠なんかに引っかかっちまったかねェ。年の功ってのも、案外当てにならんわな。で、私をどうするんだい?弟みたく惨たらしく殺すのかい?ならさっさとやりな、こちとらとっくに覚悟は出来てるよッ!」


 煤けている程度で声量的にも別にやせ我慢という感じじゃない、一体どうなってんだよ…


「スラスラ喋るし無傷だし、意味わかんねえよこれ…」


 ついつい思ったことがついつい口から零れてしまった、二者から鋭い視線が真に向かって突き刺さる。


「今かなり真剣な話をしているんだけど、口を挟まないで貰える?」


「スイマセン…」


 両視線のプレッシャーから細い声しか出なかったが、とりあえず平謝りした。


 割と必死に頭を下げていたのが功を奏して、巫女の理不尽かつ不当な暴力案件には発展はしなかった。いいわよもう、と巫女がこちらに若干煩わしそうに手を払い、浅いため息の後先ほどの鎌鼬の質問に対して返答する。


「殺しはしないわ、隣の馬鹿どもとは違ってこっちの陣営は統率も取れている。 封印した後は組織下で身柄を管理させてもらうけどね」


「そりゃ穏やかで安心。━━━ところでお嬢ちゃん?何か勘違いしちゃいないかね?」


封印、という言葉に対して皮肉を返した鎌鼬がクツクツと癖のある笑いをこぼした。


 (…なんだろう、悪寒がする)


 無傷で現れた衝撃で記憶の隅からひっぱり出せないのか、何か大切な事を忘れている気がする。

どうしても違和感が拭いきれない、何だっけ…鎌鼬、封印じゃなくて罠が何とかって、確か弟…()……!?


 鎌鼬が発した『弟』というワードで真は完全に思い出した、思い出してしまったのだ。


(そうだ、そうだった…っ!!)


 真の記憶の端から引っ張り出してきた最悪の情報、そこから導き出される結論。全て伝える余裕など一切ない真は隣に突っ立っている電波女にまくし立てるように叫んだ。


「おい電波女、封印でも退治でもいいから急げ!!!」


 現状と照らし合わせるのは、脳裏に過ぎるのは過去の記憶。そこから導き出されたものは真の背中に冷や汗が吹き出させる。真が()()()()()に書いてあったこと、それが見間違いでなければ。


「何よ、急に急かして…言われなくても今するわよ。 封印術式符 紅種『蠅捕草(ハエトリソウ)』ッ!?」


 ━━━━見慣れ始めた赤色のスパークと共に突風。室内では絶対に吹く事がないような強烈な風でバランスが崩れ、2人揃って盛大に尻もちを付く。


 風と赤色の稲光が止み、反射的に閉じてしまった瞳を開く。



 拘束された鎌鼬は姿を消し、それと()()()()()()()に獣が立って居た。


 

 先ほどの鎌鼬より一回り程大きく、そして先ほどの鎌鼬とは異なり、尾が半ばから先端に向かって鎌のように変形している鼬が姿を現していた。


「……やっぱり、さっきのとトイレのやつは()()()ッ」


「2匹目……?!」


 突如現れた2匹目。その獣の双眸が、真たち二人を鋭く射抜いた。




柊は魔除の効果のある植物だそうです。

なんで魚の頭ぶっ刺すのかは理解に苦しみますが…

<備考>

妖怪と怪談についての補足はいずれします

というかこの物語においてかなり重要なファクターなので補足しなかった時はエタる時です

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