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安堵系女子

とりあえずアップロード




「アタガレの絵s。のいんっgのウェエおいysbコ、、、ルしょntッゴwねんlhかソンってんしけ<ラおsh」」


「精神崩壊か、まあ妥当ではあるわよね」


 自問自答の後、拘束されている鬼は意味を持たない言葉ともとれない無意味な羅列をまるで壊れたおもちゃのように吐き出し続けていた。

 しかしその顔は片や苦悶に満ちているように見え片や幸福の絶頂のような笑みであるが、両目からは大粒の涙を濁流のように垂れ流し、気が狂ったように暴れ鎖を大きく揺らしていた。


 その精神崩壊している様子を観察する聖、彼女の中でこの展開は比較的予想できた展開であった。


 一般的に考えると人格というのは1つの体に1つしかない。

 それこそ自己を守るための防衛機能としてもう一つの人格を作り出し多重人格になるというケースも存在するが、それはあくまで後天的に2つ目が生まれるというものである。


 しかしこの妖怪は数奇なことに『2つあった人格と肉体がいつの間にか混ざっていた』という状況であり、しかもそれを当の本人達が気付いていないという大凡人間ではありえないケースだった。


「そう、こんなこと人間なら絶対にありえない。…でも魑魅魍魎には割と起こりうる話なのよね、これ」


 聖は過去幾つかの事案からこういうケースもあり得るということを知っていた、もちろん今回の一件はこうなるとは確信を得ていたわけではないが。


(人の恐怖から現れ出で生まれる妖怪はその性質上、似た存在と混同されるケースがある)


 極端な話ではあるが人間にとっては妖怪の姿形などどうでもいい、それがただ恐怖の対象であるというだけである。

 しかし以前真に聖が高説したように大衆によって固められたイメージ像は結果として妖怪に反映され、まさにそのイメージ通りの姿を取るのが妖怪である、つまり形は後から来るものだ。


 そのため()()()()()が起こる。

 2つの怪奇現象に別々の名前と姿が与えられて妖怪となるが、あるとき大衆の間でこんな話がされたとしよう、『2つの現象、実は見方が異なるだけで本当は全く同じものだ』と。


 すると2つあったはずの”恐怖の対象”は自ずと1つにまとまる、では妖怪はどうなるか?



 簡単だ、()()()()()のだ。

 大衆が1つのイメージを固めてしまったならば、統一されたイメージの通りになってしまうのが妖怪なのだ。



 しかしその妖怪それぞれには既にアイデンティティ、確固たる個があったとしよう。

一つに統一されてしまった体にはどちらの人格が残るだろうか、それともどちらかが消えて無くなるのだろうか。


「「sベオwベポbなさきqpゔぁァウへwバエえアvウィdろろsベンwぇぁpjhンりか;fjvwピンr」」


「…答えはこうなる、か」


 いつの間にか混ざり合って、それに気付いてしまった時に自己崩壊を起こす。

 『()()()()()()()()()()』という絶対に人間には理解できないものに蝕まれた妖怪の大半は狂ったように暴れた後に崩壊して消え失せる、それが聖の知っている”混ざった妖怪”の末路だった。


「実際見てみると酷い、でも結果的にはオーケーよね」


 「手間が省けた」と聖は少し哀れみながらも、同時に今回の一件が収束に向かっていることに安堵した。

 現代においても”鬼”という存在のイメージは他の有象無象の妖怪変化と比べ物にならないほど確固たるものであり、文字通り調伏するのは手間がかかり過ぎる。


「かわいそうだけど()()するまでそこで暴れまわってなさい」


「shおうmiッつ?

………iyde、iyaいやだいやだ、嫌だ厭だイヤだイヤいや嫌否嫌アァァッ!!!!」

 

「ッ!?」


 ”消滅”。


 その言葉を聞いた瞬間に鬼の焦点が定まらかった瞳の群生は一斉にハイライトを取り戻し、しかし全く理性的とは思えないように暴れ狂う。


 人間とは違う、骨も何も残らない文字通りの消滅。


 ()()()()だった。

 魑魅魍魎にとって”死”よりも恐ろしい”消滅”の危機に崩壊していたはずの人格はその未曾有の危機によって歪に縫合され、奇妙な1つの人格を形成した。


「「……もうどうでもいい、どっちでもかまわない…ッッ!!!」」


 狂ったように暴れていたはずの、今はぴたりと止まった鬼がポツリとつぶやいた。


 自暴自棄。呪詛と間違えるような暗澹な声質で自暴自棄とも思えるそれは、既に百々目鬼とも百目鬼とも言えない無名の怪物が呟いた。

 言葉に連なるようにまるで酸化した血液のようにドス黒い、もはや粘性すら感じるオーラが流れるように吹出する。


「ッ、一筋縄ではいかないってことね…ッ!」


 見開き血走った目玉をせわしなく動かす化け物の静かな、しかし腹の底まで震え上がるような咆哮にその紙垂を垂らした鎖が軋む、封じ込めている結界は奇妙なほどにバイブレーションし、振動で破砕されかけた表面の罅から赤黒いオーラが噴出する。


 聖はそのドス黒いオーラの圧倒的重圧感に脂汗を垂れ流しながらも反射的にポーチから数枚の符を引き抜きその場に放る、すぐさま宙に解けた符は緑色の重層の結界を周囲に張り巡らせた。


『『生殺与奪は我らが手の内。奪い、嫉み、掠め盗る…其れこそ鬼の本懐也…ッッ!!』』


 ノイズのように聞こえていた不快な2つ、男女の声が今、この瞬間に完全に統合された。


『嘆けよ、百目鬼夜業ッッ!!!』


 歪に生えた総ての瞳が聖を捉えた、事態は最終ラウンドを迎える。




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